田舎暮らしの冬に欠かせないアイテム、薪ストーブ。実際に田舎で薪ストーブを取り入れて暮らす「さきの山暮らし」さんにお話を伺うと、火を囲む時間の心地よさや、薪の調達から日常の工夫まで、薪ストーブを中心に回る暮らしのリアルが見えてきました。
掲載:2025年11月号
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■教えてくれた人
「さきの山暮らし」Instagram:@saki_no_yamagurasi
フリーランスで働くさきさん(30歳)と会社員のご主人(39歳)。2020年から山暮らしを始め、その魅力をインスタグラム「さきの山暮らし」で発信。広い敷地を活かし、養鶏や養蜂にも取り組んでいる。
土地に合う暖房として薪ストーブを選択

2025年春に旅立ったネコのILYさんも、薪ストーブが大好きだった。冬の朝はストーブの前にちょこんと座り、「つけて」とおねだりするのが日課だった。
冬の朝、まだ外が暗いうちに起き出して、さきさんはリビングの薪ストーブに火を入れる。前夜の熾火(おきび)のおかげで室内は朝もほんのり暖かく、寝る前にスライスしてストーブ脇に干しておいたリンゴは、セミドライの甘いおやつに仕上がっている。ストーブトップに水を張った鍋を置くと、その湯気で室内の湿度がほどよく保たれる。沸いた湯は、仕事の合間にコーヒーをいれるのに大活躍だ。

朝や夜のひとこまを切り取った山暮らしの投稿が人気。インスタグラムのフォロワーは現在3.4万人。
フリーランスとして自宅で仕事をするさきさんにとって、冬の暮らしはいつもこのストーブを中心に回っている。
ここは宮城県の山間地域。さきさんとご主人は2020年に約3000坪の山を購入し、家を建てた。東北地方の新築と聞くと、最初から薪ストーブを想定していたように思えるが、じつはそうではなかった。

購入した山には古家が立っていたので、「水道管などのライフラインが整っていたのが幸運でした」

「ニワトリを飼い始めてはまりました」と話すさきさん。孵化にも挑戦して見事成功した。
「夫と、その土地に合った暮らしをしたいねって話していたんです。たまたま見つけた土地が山林に囲まれていたから、薪ストーブは理にかなっていると思って導入しました。もし別の土地だったら、ほかの暖房機器にしていたかも」
SNSで日々の山暮らしを発信するさきさんは、そう語る。

養蜂も行うご夫妻。自家製の蜂蜜は小分けにして贈り物に、蜜蝋はワックスにして無垢の床に活用。
薪ストーブについて詳しくなかったので、工務店と薪ストーブ専門店に候補を挙げてもらい、その中からバーモントキャスティングス社の「アンコール」を選んだ。
「人気モデルの赤もかわいかったけれど、目立つ色だと生活がストーブに引っ張られてしまう気がして、スタンダードな黒にしました。薪ストーブは、あくまで生活を楽しくするためのアイテム。暮らしを薪ストーブに合わせるということをしたくなかったんです」

薪ストーブの前でごろごろするILYさん。その姿を眺めるのが、二人にとってのささやかな楽しみだった。
最初の冬には、薪ストーブ料理にも挑戦した。SNSで見たピザをまねてみたものの、すぐに焦げたり焼きむらができたりして、思うようにはいかない。「料理は初年度でいったん挫折しました(笑)。ほかにも、それほど寒くない日に一気に燃やして汗ばんだりして、使いこなせてなかったんです。だからまずは、部屋を快適な温度にすることから始めようと」
薪の種類や太さ、投入するタイミングを変えながら、なるべく手間をかけずに心地よい室温を保つ方法を探った。さきさんはそれを「夏休みの自由研究みたいだった(笑)」と振り返る。二人で楽しみながら試行錯誤を重ね、少しずつ薪ストーブとの付き合い方を学んだ。快適な室温を保てるようになったころ、料理にも再び挑戦。今度は思い通りの焼き加減になった。
「やっと、『薪ストーブ料理は簡単でおいしい!』と言えるようになりました。温度調節ができるようになるまでに二冬かかったけれど、心地よく使うためには必要な時間だったのかも」
薪にまつわる作業をできるだけ楽しく

「焦るといいことないから(笑)」と、自分たちの快適さを探りながら、ゆっくり周辺を整えている。
さきさん夫妻の土地は、ほとんどが山林だ。薪の調達も基本的には家の周辺で賄う。
「本当は広葉樹がいいのですが、うちはいわゆるスギ山なので、薪は針葉樹が多くなっちゃいます」
主にご主人が山に入って木を倒し、その場で玉切りにする。時間があるときには斧で割り、さきさんが一輪車で家の近くまで運び、積み上げていく。
「木を倒すのは本当は水分が抜けている冬がベストだし、切ったらすぐに処理するのが理想。でも、仕事の都合でそうできないこともあります。自分たちは『薪をノルマにしない』ことを大事にしているので、無理をせず、余裕のあるときにやるようにしています」(ご主人)
そんなご夫妻に、薪ストーブのある暮らしのよさを伺った。「共通の話題を話せる場がひとつ増えたのは、とてもよかったと思います」(ご主人)
火を囲むことで自然と会話が生まれること。そして、薪ストーブそのものが尽きない話題を提供してくれること。二人にとって、そのどちらもが大きな喜びだ。
「5年経ってある程度慣れましたが、焼き芋のおいしい状態とか、今でも試行錯誤を繰り返しています。新しい発見があって、それを報告し合うのが楽しいんです」(さきさん)
導入してみると楽なことばかりではない薪ストーブだが、「薪にまつわることを苦にしない」と決めている二人だからこそ、暮らしに軽やかさがある。
「薪を割ったり運んだりは、確かに大変です。でも一緒にやれば作業も楽しみに変わるし、それを共有できるのは悪くないですよ」(ご主人)

広い敷地にDIYでニワトリ小屋を建築。プロ顔負けの腕前だが独学で調べながら建てた。

「二人暮らしだから、買うより育てるほうがいいんです。残りはニワトリが食べてくれます」と、さきさん。

あまり手をかけ過ぎず、ほぼほったらかし栽培。それでも収穫にテンションが上がる。
さきさんオススメの薪ストーブ料理
焼き芋~どんなイモでもまるで高級スイーツ
「下部の灰受けトレイはオーブンにもなる」と聞き、ホイルで包んだサツマイモを置いてみたところ、ホクホクで甘い仕上がりに。「高級なサツマイモじゃなくても、ねっとりした食感の、とてもおいしい焼き芋になります」。トレイの大きさも普通サイズのサツマイモにぴったりフィットするので、ここは焼き芋専用に。
ドライフルーツ~濃縮された風味は止まらなくなるおいしさ
青森の実家から届いたリンゴを、薪ストーブの脇で干したらおい しかったので、ほかの果物でも実験。一番のお気に入りはスライ スしたキウイと、薄皮を半分だけむいて焼いたミカン。逆にイマイ チだったのはバナナ。
「キウイやミカンなど水分の多い果物 はドライにすると、グミみたいな食感になるんです」と、さきさん
おでん~ダイコンの下ゆで不要時短でしみしみに
冬の定番といえばおでん。無印良品の土鍋に材料をすべて入れ、あとは薪ストーブの上に載せて煮えるまでお任せ。「ダイコンも下ゆでせずに生のまま入れちゃっています。でも、ちゃんと味が染みて、とてもおいしいんです」。おでん具材のダイコンは家庭菜園から、卵はニワトリたちから。感謝とともに食卓へ。
ホットサンド~高温のストーブトップで素早くできる
ホットサンドメーカーでつくるアツアツ のサンドイッチも、二人の大好物。「例 えばバゲットにハムとチーズ、野菜をた っぷり挟んで焼くと、外側はパリパリな のに中のチーズがとろっとして、本当に 幸せになります」。キッチンはI Hなので、 直火専用のホットサンドメーカーは薪ス トーブの季節だけのお楽しみ。
文/はっさく堂 写真提供/「さきの山暮らし」
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