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田舎暮らしの本 1月号

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田舎暮らしの本 1月号

12月3日(火)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

【予算200万円】DIY経験しかないスタッフが廃材で家を建ててみた【9】

家起こしが終わった和田邸である。次の作業はいよいよ屋根の施工だ。
今回もテキトー施主・和田が巻き起こす珍事件、それに加えて「ドケチぶり」が大爆発だ。

掲載:2017年1月号

野地板張りは楽しい。アレコレ考えずに仕事できるからだ。助っ人に来た近所の農家、大谷さん(右)と柴田さん(左)とともにビス打ち作業。

安物の材は作業が面倒

 本日から屋根作業と聞いていたので、覚悟を決めてやって来たんだが、やはり野地板(のじいた)を張るまでは怖くて上れない。そこで中山はしばらく「後方支援」に徹することに。

 それでは垂木(たるき)打ちを始めよう。中山が垂木を運び上げ、和田と助っ人・柴田さんが母屋(もや)に並べてビス留めしていく。留め方は、垂木と母屋が交わる箇所にビスを2本、斜め打ちして固定する2カ所打ちだ。
「1カ所でもいいんじゃね?」とも思うわけだが、2カ所と決まっている。
阪口「ところでアレはなんだ?」
 カメラを構える阪口が指さした。棟木の先っぽにくっついている「アレ」だ。
和田「あーアレね。長さが足りなかったから足したの」
 廃材の棟木が30㎝ほど短かったので、垂木を受けるために端材を継ぎ足したのだという。
中山「格好悪りー(笑)」
阪口「どうせならなんか意匠を凝らせばよかったのに」
水野「よく土蔵の妻壁(つまかべ)に『水』ってあるよね。火除けのおまじないなんでしょう?」
中山「じゃあ『肉』にしよう」
一同「それは『キン肉マン』だろ」
阪口「『新築』って書いとけばいいじゃん」
水野「わざわざ断るわけ?(笑)」
和田「それはない!」

継ぎ足しした棟木の先端。なぜこういうことになるのか意味がわからないのである。

 ところで和田邸の垂木には「継ぎ」がある。屋根が長大になると継ぐんだが、和田邸は棟木から軒先まで約5mある。一般的な木材の規格は4mまでなので、それ以上だと継がなくてはいけないのだ。
 さらに垂木をビスで留めはじめると、また面倒な指令が。
和田「垂木彫りの左に寄せて打って! でも、こことそことあっちは右寄せで打って!」
 垂木彫り(母屋に垂木を接合するために刻む溝)が寸法よりでかく欠いてあり、さらに垂木自体が安物で、曲がりやねじれがひどいので、修正しながら打ってくれという意味らしい。面倒だが仕方がない。そのように仕上げて、改めて下から見上げてみると……、ひどく蛇行しているのだ。
和田「なんでこんなに曲がってんの? ダメじゃん!」
一同「アンタの指示通りに打ったんだけど!?」
 この垂木の曲がりは、後の屋根の施工で「ビスの空打ち」という面倒な事態を頻発させることになる。

垂木を並べると、一気に家らしく見えてくる。

垂木彫りがでかすぎて「どっちかに寄せろ」と施主・和田からの指令が。

一番怖ろしい隅っこの垂木を打つ和田。見ているだけでお尻がムズムズしてくる。

一見キレイに並んでいるように見える垂木だが……、下から見ると上下左右に、かなり蛇行していることがわかる。「屋根だからいいか」ということで流す。

「面戸板(めんどいた)」は「面倒板」?

 垂木を打ち終わったら、次は野地板張り……、と思ってたら、阪口が余計なことを口走った。 阪口「面戸板は?」
和田「なに、面戸板って?」
阪口「桁(けた)と屋根のすき間に張るんだけど」
和田「そんなの張るんだ」
阪口「すき間は、どうするつもりだったの?」
和田「わかんない。あんまり考えてなかった」
中山「あとでいいよ。先進めよう」
 中山がそう言ったのには理由がある。面戸板は異常に面倒くさいのだ。なぜなら垂木と垂木の間隔が各々微妙に違うので、いちいち測って長さを出して調整しないといけない。別名「面倒板」とも呼ばれるくらいなのである。ここはスルーして、あとで和田が1人でやればいいやと思っていたら……。
和田「よし! じゃあ面戸板を付けよう!」
中山「えー、野地板張ろうよ」
和田「いいや! 面戸板張る!」
 結局、面戸板を張ることに……。
中山「まったく、オマエが余計なこと言うからだぞ」
阪口「だって先に付けといたほうが楽なんだもん」
和田「ホラホラ! ムダ口叩いていないで、働く働く!」
 しかしそこは「テキトー大王」、いちいち長さを出すなんて面倒なことはしない。テキトーな長さの(最大公約数で一番短いの)を大量に切り出して打っていった。ちなみに面戸板には、普通は垂木の端材を利用するんだが、ケチの和田だけに垂木の半端がほとんど出ず、厚さ12㎜の野地板を利用することに。これがまたじつに面倒くさい。ただでさえ薄い板をビスでタテに斜め打ちするので割れが生じる、なんかの拍子に足がかかって壊れる。しかも、高所作業……。まったくストレス満点の「面倒板」である。

「面戸板」を張る。野地板を流用したばっかりに、このように面倒な仕事になってしまった。

同じころ、地上で黙々と垂木を切断する中山。

慎重に屋根を伝う和田を地上から見上げる中山。このあと足が引っかかり面戸板が「バキッ」と割れたのはナイショである。

三拍子揃ったクズ野地板

「面倒板」を張り終わったら、ようやく野地板に取りかかる。地元の製材屋さんがトラックで大量に運んできたのを荷降ろし。そこで我われが見たものは……。おお。なんということか。ほとんど腐りかけた「汚板」なのであった。
和田「さっきの製材屋さん、小学校の同級生でさ。捨ててあった野地板を『タダ同然』でくれたんだよね」
「捨ててあった」というのが気になるところである。どこに、どういう状態で、何年間、捨ててあったのか……。この「クズ野地板」、どれくらいクズかというと、
・雨ざらしだったせいで木口が腐っている=汚い
・木食い虫が食い荒らしたせいで板自体がグズグズに=危険
・不気味な菌糸が血管状に這い回っている=気持ち悪い
「汚い・危険・気持ち悪い」
 三拍子揃ったクズ野地板なのである。唯一の利点は「タダ同然」ということだが、助っ人の我われにはなんのメリットもないことは言うまでもない。
中山「まさに3K」
阪口「しかしこれさ……、もはや新築って言えるのかな」
水野「建った時点で中古住宅、へたするとボロ屋!?」
 我われが建てているのは、もしかして「ボロ屋」なのか?
 とにかくクズ野地板を張っていこう。 野地板は垂木の上で継ぐのがセオリーである。垂木と垂木の間で突きつけにすると見苦しいのと、上を歩いたときに踏み抜く危険がある。さらに、クズ野地板の端っこは腐っているので、できるだけ使わないようにする。
 しかしこの垂木、細いのだ。垂木の寸法は屋根材によるが、一般的なトタンスレートやアスファルトシングルの場合、60㎜×45㎜が普通である。しかし和田邸の垂木は75㎜×35㎜。「せい」が高いぶん強度はあるが幅が狭い。幅が狭いとどうなるかというと、野地板を突きつけでビス留めするときに割れが生じやすいのだ。とはいえ野地板張りは楽しい作業である。進捗状況が一目でわかるからである。半日で全面に張り終えることができた。

大量の野地板が到着。全部で30坪1万円と超格安。これを屋根に運び上げ、垂木に打ち付けてから半端を丸ノコで切断するという作戦だ。

3人でやれば作業も早い。2時間ほどで屋根の半分が終わった。

こういうときに活躍するのが充電式丸ノコだ。電源から遠く離れた屋根の上でも楽々。

どうにか足場板に上がって野地板打ちに参加する中山と担当編集・水野。

野地板が張り終わったところでやっと屋根に上がれた。こうやって寝転ぶのが気持ちいいのだ。

トドメの棟換気(むねかんき)

 最後に問題になったのが「棟換気」である。棟換気というのは、棟にわざとすき間を設けて換気するというもの。この場合、専用の「棟包み」を用いる。また古い住宅などでは、切り妻のてっぺんに装飾を兼ねた換気口があるはずだ。これは「妻換気(つまかんき)」といい、いずれも天井付近に溜まった暖気を逃がすことで、結露が生じるのを防ぐ効果があるのだ。
阪口「これは重要ですよ。秩父にセルフビルドした拙宅はもちろん完璧ですが」(えっへん)
中山「で、どうするの? 野地板張っちゃったし」
阪口「この板をはずせばいいんじゃないの」
 そう言って野地板の1枚を軽く持ち上げた瞬間であった。
「パキッ」
 いとも簡単に割れてしまったではないか。その割れた木口を見てみれば、木食い虫の幼虫がいた。板の内部はスカスカで、木粉が溜まっている。これは危ないだろ……、と話していたら悲鳴が。破れた野地板に片足突っ込んだ担当編集・水野がアタフタしているではないか。あわや墜落の重大インシデントである。
水野「危機一髪でした(汗)」
阪口「こんなクズ野地板を踏み抜いて死んだら浮かばれないな」
中山「しかし担当編集者が入院したら、この連載はどうなるの?」
阪口「もちろん続きますよ。なにしろ人気連載だからね!」
編集長・柳「いえ即連載中止です。くれぐれもケガに気をつけてください」
和田「ひえー! 次から全員、ヘルメット着用義務づけで!」
阪口「その前にまともな建材買えよ」
水野「ケガは取り返しがつかない ですからね。気をつけましょう!」
 というわけで安全第一を改めて肝に銘じた一同であった。次回、建築士による「中間検査」の発表だ! 

文/中山茂大 写真/阪口 克 イラスト/和田義弥

第1回 基礎工事
第2回 墨付け、刻み
第3回 柱、梁、桁の刻み
第4回 棟上げ目前
第5回 棟上げ
第6回 棟上げ
第7回 棟上げ
第8回 足場組み、家起こし
第10回 屋根材張り&プロによる中間チェック

 

人力社

ライター中山とカメラマン阪口、 ライター和田の旅とDIYを得意とする3人組トリオ。「人力山荘」シリーズでは中山の母屋リフォーム、中山のアネックス新築DIY、和田の自宅新築DIYを連載。阪口も自宅をDIYで新築している。

人力社HP➡www.jinriki.net

阪口HP➡https://www.sakaguti.org

和田HP➡http://www.wadayoshi.com

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