焚き火は、ロマンあふれる理科実験。薪を自在に燃やすには、燃焼のメカニズムを理解し、燃焼の条件を整えてやればよいのだ。
焚き火をしようとしたものの、なかなか薪に火がつかず苦労をした経験は、きっと多くの人が持っているだろう。
そもそも薪などの可燃物は、その物質自体が燃えるわけではない。加熱されることで物質を構成する炭素や水素などが気化して可燃性ガスとなり、それが空気中の酸素と結合して燃えるのだ。すぐに火がつく紙などは、物質そのものに火がついて燃えているように錯覚するが、薪と同様に燃えているのは高温で気化した可燃性のガスだ。薪と違って紙が簡単に燃えるのは、小さな火でも可燃性のガスが発生しやすいから。そして一度火がつくと、その熱によって燃焼の連鎖反応が引き起こされて燃え続けるのだ。
ちなみに水を満たした紙コップは、焚き火に置いても燃えない。なぜなら水が100℃を超えて蒸発しない限り、紙が発火点の450℃に至らず、可燃性のガスが発生しないからだ。
薪が燃えにくいのも同様で、まずはその内部に含まれる水分を放出しないと燃焼は始まらないのだ。
ものが燃えるためには、燃料と酸素と熱の3要素が不可欠。そのどれか1つでも不足すると火はおきない。つまり、薪を燃え続けさせるためにはこの3要素が常に働き合いながら、連続的に化学反応が繰り返される状態を維持しなくてはいけないのだ。
焚き火がうまくできないという場合は、たいてい熱が足りない。太い薪に小さな火を近づけても燃えないのはそのためだ。熱は最初に木の水分を蒸発させる。熱はその過程で奪われる。
乾いた薪を使うのは焚き火の大原則。また、熱を逃がさないようにするために、燃焼している薪はなるべく近づけて燃やすといい。そのうえで空気の通り道もきちんと確保しておく。そうやって燃焼の3要素が維持できれば、薪はその成分の多くを占める炭素と水素が燃焼し続け、最後はわずかな不燃物が白い灰となって残るのだ。
【焚き火を成功に導く5つのヒント】
●乾いた薪を充分な量用意する。
●薪が湿っていたら焚き火の周りに置いて乾かす。
●熱を逃がさないように、薪はなるべく寄せて燃やす。
●焚き火の周りを石や太い薪で囲むと蓄熱に効果的。
●火床に空気が流れるように薪を組む。
文/和田義弥 イラスト/関上絵美
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