引き続き屋根の施工である。前号までに野地板が張り終わり、今回は仕上げの屋根材張り。
それが終わったところでプロのログビルダーさんによる中間チェック。さて、どんなダメ出しが出ることやら……。
掲載:2017年2月号
水切りはトタン板を自分で加工
1カ月ぶりに和田邸を訪れると、屋根にはちゃんとアスファルトルーフィング(屋根の下地に張るアスファルトを染み込ませた防水紙)が張ってあった。さすがに雨漏りするとマズイので、そこはきちんとやったらしい。
中山「へえ。ちゃんと水切りも取り付けたのね」
阪口「それがさ、自分でつくったらしいよ。買うと高いから(失笑)」
なんとトタン板を買ってきて自分で加工したらしいのだ。「水切り(みずきり)」というのは軒に取り付ける金物で、雨水による野地板の腐敗を防ぐほか、見た目も引き締まって見える。既製品だと、1間(1820㎜)で400円程度である。
和田「屋根全体に回すと約1万円! 高すぎる!」
一同「いやそれ普通だから」
和田「トタン板を加工すれば4000円ですむ」
屋根材はオンデュリン社の「オンデュビラⓇ」。波板トタンを高級にした感じである。材質はアスファルトで軽く、施工しやすいのでDIYでも扱いやすい。
「専用安全クギ」で打っていくが、クギの頭を隠すプラスチック製のキャップが付いていて、1つずつはめていく必要がある。これがけっこう面倒である。全部で約1500本もあるのだ。後の張り替えを考えると、クギよりビスのほうがよいだろうということで、市販のビスを打ち込むことにした。
ネットで施工方法を確認し、さっそく軒側から張っていこう。施工は超簡単。山1つ分、重ねてビス留めしていくだけだ。2時間程度で屋根の半分を張り終えた。
煙突設置に四苦八苦
さて、読者諸氏もお楽しみのトラブルが、そろそろ発生するころである。今回は何かというと「煙突の納め」だった。あらゆるものを安くするのがコンセプトの和田邸であるが、そのなかで唯一の例外が「薪ストーブ」である。
和田「これだけは譲れないね」
中山「そんなに重要なの? ただのストーブじゃん」
阪口「わかってないねえ。薪ストーブは田舎暮らしの醍醐味」
和田「冬の寒い日に薪ストーブの窓からチロチロ燃えるほだ火を眺める……。見飽きないよね」
ウットリと話す2人についていけない中山と水野であった。
じつは薪ストーブは、煙突が意外と高価なのである。「断熱二重煙突」という特殊なもので、1mで3万~5万円(!)もする。施工も面倒だ。低温発火などの危険があるので、壁や屋根との取り合いは慎重にやらないといけない。特に屋根の納めは雨漏りの恐れがあるので素人には難しい。
今回の助っ人は、あとから和田邸のチェックをしてもらう、群馬県嬬恋村(つまごいむら)のログビルダー熊谷慎さん。煙突の納めについても、アドバイスをもらったようだ。
水野「『ようだ』って何?」
中山「煙突工事つまんなくてさー、屋根が気持ちよくて寝てたんだよねー。起きたら完成してた」
一同「仕事しなさいよ!」
屋根材を全体に張り終えたら、最後に「棟納め」である。これも専用棟包みがあって上からビス留めするだけ。最後まで楽ちんな施工であったが……。
中山「ビスにキャップ付けるの面倒くせー! ライターなのになんでこんな雑用やらされるんだ!」
阪口「それを言うならオレだってカメラマンだし!」
水野「アタシ編集者だし!」
和田「私なんか『テキトー施主』とか書かれてるし!」
一同「それは本当だから!」
中間チェック!
プロのログビルダー熊谷 慎が
「テキトー大王」和田邸を徹底チェック
無事に屋根が完成したところで、プロの目からここまでの和田邸の出来映えをチェックしてもらった。ダメ出し必至の結果や、いかに!?
■基礎・土台
熊谷「よく自分でやりましたねー。でも布基礎なので湿気が気になりますね」
中山「庭に転がっていた石やコンクリートブロックのかけらを置いただけの、この沓石はどうなんですかね?」
熊谷「これはあり得ないですねー。将来的に動いちゃいますね」
水野「家の中の地面に雑草が生えてるんですけど」
熊谷「ヤバイですね。床束が土に埋もれているし、早いうちに腐ってきますね。材木も本来はヒノキですから(スギの廃材は論外!)」
阪口「この大引は長さが足りなくて受けをつくっているんですよ」
熊谷「これはコーチボルト(ねじ込み式のボルト)にするべきですね。ビスだと強度が足りないので、落ちてしまう可能性がありますね」
中山「てことは、まず床束が腐って、次に受けが外れて床が傾いてくるわけですか」
熊谷「そうなりますね」
■屋根まわり
阪口「まずは腐った野地板ですが」
熊谷「とりあえず、これ以上濡れなければ大丈夫でしょう。ただし屋根材のビスが効いてない可能性があるので、そこが不安ですね。それよりも垂木の固定が不充分なのが気になりますね。垂木と桁は『ひねり金物(垂木を母屋などに取り付けるための金物)』で固定しないと、台風で屋根ごと飛ばされる可能性があります」
和田「ビス1本だけで固定してるんですけど(汗)」
熊谷「もう2本くらい下から打ち込めばいいですよ」
中山「あとね、この家、玄関がないんですよ」
熊谷「玄関ないの!?(がく然) 初めて聞きました」
和田「あと断熱材の代わりにもみ殻を詰めようかと……」
熊谷「もみ殻ですか?(呆然) 虫が湧くかもしれませんよ。それに少しでもすき間ができると断熱効果がなくなりますから……。まあでも、いいんじゃないですか? 自分の家だし(笑)」
■柱・梁・桁
熊谷「梁のボルトがなかなかダイナミックですね。普通は見えるところには打たないんですけど」
和田「二重桁はどうですか?」
熊谷「これはポイント高いですね。二間飛ばしでも充分耐えられます」
阪口「でも梁が腐ってるんだよね?」
中山「そうそう。キノコが生えてるんですけど」
熊谷「菌が繁殖するには、温度、湿度、栄養、空気が必要なんです。このどれかを絶てばいいんですけどね」
和田「放っておくと、どうなるんですか?」
熊谷「家の中でキノコ狩りができます(笑)」(ウソです)
和田「開放感を持たせるために、できるだけ間仕切りを入れなかったんですけど」
熊谷「耐力壁が少ないですね。なるべく筋交いを入れたほうがいいですね」
中山「筋交いといえば、これ、このように板を噛ませてるんですけど、いいんですかね?」
熊谷「ビスが柱まで届いていればいいんですけど、いずれにしても筋交いを入れないよりはマシです」
阪口「火打ち梁が入っていないんですけど、大丈夫なんですかね?」
熊谷「入れたほうがいいですが、二重桁なのでこれから入れるのは難しいですね」
和田「柱がちょっと短くて、梁との間に木っ端を噛ませてるんですけど」
熊谷「自分なら目立たないように下に入れますね」
和田「飛び出している桁はどうでしょう?」
熊谷「あれは切ったほうがいいですね。雨が材木の割れ目に浸透して腐ってきますから」
※二間飛ばし…畳2枚分(3640㎜)柱がないこと。通常より太い梁が必要になる。
※火打ち梁…梁と桁が交差する角に、三角形を形づくるように入れる補強材。耐震性能がアップする。
文/中山茂大 写真/阪口 克 イラスト/和田義弥
過去記事はこちら!
第1回 基礎工事
第2回 墨付け、刻み
第3回 柱、梁、桁の刻み
第4回 棟上げ目前
第5回 棟上げ
第6回 棟上げ
第7回 棟上げ
第8回 足場組み、家起こし
第9回 屋根
人力社
ライター中山とカメラマン阪口、 ライター和田の旅とDIYを得意とする3人組トリオ。「人力山荘」シリーズでは中山の母屋リフォーム、中山のアネックス新築DIY、和田の自宅新築DIYを連載。阪口も自宅をDIYで新築している。
人力社HP➡www.jinriki.net
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