掲載:2021年12月号
完全移住と違い、二拠点生活(二拠点居住)の場合は移動がつきものだ。拠点間の距離が短過ぎると、わざわざ新たな拠点を構える意義が失われるし、長過ぎると面倒になって通わなくなる。あらかじめ、交通手段については、充分に検討しておくことが重要だ。
【交通手段、所要時間、頻度、費用をチェック!】
◎複数の交通手段で通える場所が理想的
車での移動が前提であっても、いざというときには公共交通機関でも通うことができる場所が望ましい。夫婦であっても、いつも一緒に移動できるとは限らない。また鉄道やバスなど公共交通機関で通う場合も、現地での生活は地方暮らしになるため、どのみち車が必要となるケースが多い。
結局、交通費と車両費がどちらも必要となる。しかし、どちらの交通手段でも通える場所は利便性が高く、住宅費がかさみやすい。3つの費用のバランスを考えるうえで、交通費の事前シミュレーションは必須なのだ。
◎往復の頻度が少なければ、飛行機の移動も選択肢に
交通費は距離や交通手段だけでなく、往復の頻度や人数にも大きく左右される。週1回ペースで往復する場合は、車や鉄道、バスがメインになるだろうが、月1回程度でいいのであれば、飛行機も充分に選択肢となる。2カ月に1回となればなおさらだ。北海道や九州、離島はリーズナブルな物件も多く、トータルで考えれば、安上がりに済む場合もあるだろう。
上のシミュレーション例は、車は高速道路、鉄道は新幹線、飛行機は大手航空会社(FSC、フルサービスキャリア)を前提としているが、下道走行や普通列車、格安航空会社(LCC)でも構わないのであれば、さらに出費を抑えることができる。以降、お得で快適に通える地域や交通手段を紹介しよう。
【車による移動】
◎新規に開通した高速道路と環状路線の沿線が狙い目!
車の利点は、なにより機動性があることだ。往復の道中で寄り道ができるし、現地でも自由に移動できる。複数人でも交通費が変わらないため、家族で拠点を移動するには最適の交通手段といえる。
物件を探す場合は、新たに開通した高速道路沿いが狙い目だ。周辺の開発が進んでいないため、自然が多く残っており、地価も安い。近隣に店などが少ないという短所もあるが、そこは車の機動力でカバーしたい。高速バスが近くを運行している路線を選択すれば、いざというときにも安心だ。
環状の高速道路沿線の地方都市もオススメ。外環道や名二環、近畿道は都市に近過ぎるため難しいが、さらに外周にあたる圏央道や東海環状道、京奈和道は、適度な田舎へスムーズに移動できる。長距離移動が苦にならないのであれば、さらに外側の北関東道や中部横断道、舞鶴若狭道の沿線もターゲットとなり得る。
「ハイスペック一般道」なら時間短縮&財布に優しい!
信号が少なくて片側2~3車線という、高速道路に準じる高規格バイパス「ハイスペック一般道」は、目的地までスムーズに到着できる無料の一般道で、おおむね30km以上にわたっている。地域は限られるが、時間と高速料金が節約できる、有効な道路だ。ただしあくまで一般道なので、朝夕などは一部区間で激しく渋滞することもある。夜間は大型車が多く通行するので、運転にも注意が必要だ。
【バスによる移動】
◎ターミナル駅への直行バスは、安くて快適で運行本数が多い
中距離のバス路線は、鉄道が通っておらず、高速道路でのアクセスが良好な場所に多く設定されている。千葉県の木更津金田バスターミナル、岐阜県の関シティターミナル、兵庫県の淡路ICなどは、多くの路線の結集点となっていて、利便性が高いポイントだ。料金は、鉄道の普通列車の運賃よりは高額だが、特急よりは安いという設定が多く、所要時間も同様だ。必ず座れるというメリットがあるが、急に路線廃止や減便されることがあるのが難点だ。
アウトレットは高速バスが集結する一大拠点
アウトレットモールのなかには、さまざまな場所へ直行バスが運行しているところがある。栃木県の佐野プレミアム・アウトレットは佐野新都市バスターミナルに隣接しており、東京駅や新宿駅のほか羽田・成田空港など各地へアクセス可能だ。静岡県の御殿場プレミアム・アウトレットも関東各地への直行バスが運行している。
【鉄道による移動】
◎ゆっくり座れて料金も安め!私鉄の特急列車を賢く使おう
公共交通機関の基本である鉄道移動だが、都市部の普通列車はロングシートが一般的で、長距離移動には向かない。しかしJR線で特急を利用すると価格が約2倍になってしまう。そこで注目したいのが、特急料金が割安な私鉄の沿線だ。
一般に私鉄は、JRよりも運賃と特急料金が割安だ。頻繁に利用するなら、鉄道会社の株を取得して優待券を活用したい。中京圏や関西圏では、並行しているJR線もお得なきっぷを設定していることも。比較してみよう。
※8:一部列車は座席指定車両を併結する形で運行。
JR沿線なら座れるライナーと普通列車グリーン車を活用
首都圏のJR線には、快適に座って移動できるグリーン車を併結してる普通列車がある。土・日・祝日は50kmまでなら580円、51km以上は800円(いずれも事前料金)と、特急列車を利用するよりも割安。中央・青梅線でも2023年に導入予定だ。中京圏では330円の乗車整理料金を支払うことで乗車可能なホームライナーを運行している。
【飛行機による移動】
◎料金が高く欠航リスクあり!土地や物件の安さは魅力的
遠方への移動に最適なのが飛行機。最も費用が高額だが、早期予約による割引や、MCC(中堅航空会社)・LCCを活用すれば、負担を緩和することは可能だ。周辺に土地や物件の安い地域も多い。一方で冬の降雪や夏の台風など、悪天候による欠航のリスクがあり、離島の場合は代替交通手段がない。FSC(大手航空会社)、MCC、LCCがすべて運航している路線なら選択肢が多く、路線廃止のリスクも軽減できる。
※9:FSC(フルサービスキャリア)は日本航空グループ・全日本空輸グループ(いずれもLCCを除く)、MCC(ミドルコストキャリア)はスカイマーク・AIRDO・ソラシドエア・スターフライヤー・フジドリームエアラインズ・アイベックスエアラインズ、LCC(ローコストキャリア)はPeach Aviation・ジェットスター・ジャパン・スプリング・ジャパンの路線を対象に集計。新型コロナウイルスの影響による休止便を含む。
北海道や日本海側にも冬の欠航が少ない空港が
冬季に降雪のある北海道や東北、北陸の空港は、欠航便や遅延便の確率が高いイメージがあるが、近年では計器の発達や除雪能力の向上で欠航が激減している。旭川空港や青森空港、大館能代空港の就航率(欠航の少なさ)はここ数年、99%を超えているとされる。新千歳空港も95%前後で、羽田空港の就航率よりも高いのが現状だ。
文/渡瀬基樹
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