掲載:2022年1月号
早春蒔きでじっくり育ち、初夏の菜園に香りを運ぶ
春先に種を蒔いて育苗したセロリは、畑に定植した後もじっくり育って、初夏の菜園にさわやかな香りを運びます。高温多湿に弱いうえ虫害にも遭いやすく、単独で育てるのは難しいですが、食用ホオズキなど相性のよいコンパニオンプランツとの混植で、ぐっと育ちやすくなります。水はけのよい畑を選び、草マルチで乾燥を防いで育てたら、外葉から欠き取って長く楽しみましょう。
水はけのよい畑を選び、混植で育ちやすくなる
セロリは古代ローマやギリシャで整腸や強壮などの万能薬として利用されていました。さわやかな香りで食欲を増進し、サラダのほか、スープや炒め物など洋風や中華料理で広く使われます。わが家では自家製ソースにも欠かせません。
湿地生まれのセリ科とはいえ、セロリは乾燥とともに高温多湿を嫌います。日本の気候では水はけのよい畑を選び、適期に栽培するなど気遣いが必要です。肥沃な畑で育ちますが、多肥は病虫害を増やすので、夏野菜がよく育つ畝が適します。
無農薬の家庭菜園では混植で栽培しましょう。単独ではアブラムシの被害に遭いやすいです。食用ホオズキなどの株間なら虫害が避けられるうえ、夏は半日陰で涼しく、よく育ちます。
自然菜園で育てるセロリは小ぶりですがスジが少なく香りが高く、少量でも重宝します。セロリの仲間で野性味が強く育てやすいのはスープセロリやイタリアンパセリで、セロリと同様に育てられます。
品種選びのアドバイス
茎の太い中間種のほか、スープセロリや近縁種も香りが高く育てやすい
日本でおなじみのセロリは中間種といわれる種類です。欧米ではほかにも、茎のしっかりしたものや、ミツバのようなやわらかなものなど、さまざまな品種が好まれています。種が手に入りやすく育てやすい品種を紹介します。
コーネル619(冒頭の写真参照)
よく見かける中間種のセロリ。やわらかく育てやすい品種です。
スープセロリ
別名をキンツァイ(芹菜)、東洋の在来種は中国セロリとも呼ばれます。野生種に近く、育てやすく栽培中の補いはいりません。セロリの香りが強いです。
イタリアンパセリ
姿はスープセロリに似て、葉に縮れはないですが、セリ科オランダゼリ属のパセリの仲間です。栽培法はセロリに倣いますが、補いは必要なく、セロリよりも手軽に育てられます。
セロリの主なコンパニオンプランツ
家庭菜園のセロリ栽培は、混植でお互いの虫害を避けるのがコツ
食用ホオズキ
効果
お互いの病虫害を避ける。セロリは食用ホオズキの株間の半日陰で暑さを避ける。
栽培のポイント
大きく育つので、株間を充分とり、しっかりとした支柱を立てて誘引する。
収穫のポイント
実を包むがくが薄茶色に変わり、実が完熟したら収穫。降霜前に一斉収穫する。
ジャガイモ
効果
ジャガイモの虫害を避け、生育を促進する。
栽培のポイント
ジャガイモの植え付け1カ月後、土寄せの時期にセロリを定植する。
収穫のポイント
ジャガイモの茂った葉の株間からセロリを収穫。ジャガイモは葉がすべて枯れてから掘り上げる。
キャベツ
効果
キャベツの虫害を避け、生育を促進する。
栽培のポイント
生育初期、外葉になる8~12枚目の葉を大きく育てるため、若苗を定植し、草マルチを重ね、雨がなければストチュウ水※を水やりする。
※酢・木酢液・焼酎を1:1:1で混ぜたストチュウ原液をペットボトルにつくり置き、300倍以上に薄めて使う。7Lのジョウロの水には、ペットボトルキャップ(約7mL)3杯分の原液を混ぜる
収穫のポイント
上から玉を押してかたく締まっていたら、大きさにかかわらず収穫する。
ニラ
効果
お互いの病虫害を避ける。
栽培のポイント
生育初期に草負けしやすいので、株元の草を刈って草マルチする。
収穫のポイント
種から育って2年目の春から、葉がやわらかいうちに株元を2~3㎝残して刈り、収穫する。
セロリ&コンパニオンプランツの配置例
株間は広めに風通しよく育てる
食用ホオズキは霜に弱いので遅霜の季節を過ぎてから定植。セロリとジャガイモの混植ではジャガイモの定植1カ月後にセロリを定植。春植えのジャガイモのほか、秋作のセロリと秋ジャガでもできる。混植でセロリを育てるときは風が通るよう、いずれも株間を広めにとる。
監修/竹内孝功
たけうち・あつのり●1977年生まれ。長野県を拠点に菜園教室「自然菜園スクール」などを開催。著書に『完全版 自給自足の自然菜園12カ月 野菜・米・卵のある暮らしのつくり方』(宝島社)、『これならできる!自然菜園』(農文協)など。2018~19年の本誌連載をまとめた新刊『自然菜園で育てる健康野菜』(宝島社)が好評発売中。
WEBサイト「@自給自足Life」https://39zzlife.jimdofree.com/
自然菜園スクール http://www.shizensaien.net/
文・写真/新田穂高 イラスト/関上絵美・晴香
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