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田舎暮らしの本 5月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 5月号

3月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

無店舗の半農半カレー屋で、背伸びせず楽しむ里山暮らし【香川県三豊市】

掲載:2022年2月号

ぜいたくはできなくとも楽しい毎日を求め、高コスト暮らしの東京からうどんの国の里山へ。身の丈に合った農業と、趣味の料理で培った技と味で、ストレスのない暮らしを獲得している家族を訪ねた。

香川県三豊市 みとよし
香川県西部に位置し、北は瀬戸内海、南は徳島県境にそびえる讃岐山脈と、多様な自然環境に恵まれている。商業地や里山、工業地がパッチワーク状に点在し、日常生活も自然体験もコンパクトな範囲で楽しめる。人口約6万1000人。大阪方面からJRで約2時間、高速道路利用で約3時間。

 

支出とストレスは大幅減、家族の時間は大幅増加

自宅の近くで愛犬のココと。とても静かな里山環境だが、四国有数の観光地・金刀比羅宮門前へは車で約15分。

永井博之さん●51歳、早苗さん●47歳、奏風さん●15歳、凛風さん●13歳
4人家族。博之さんも早苗さんも埼玉県出身。2016年に家族で東京都から移住。夫婦で農業とカレー屋「風凛堂(ふうりんどう)」を営む。

 

 春にはタケノコ、秋にはカキなど、四季折々の幸豊かな三豊市財田町。田畑を囲む低山の紅葉が盛りの里山を、永井さん夫妻と歩いた。

「ここの風景が、私が親しくしていた有機農家と似ている気がしたんです。これはいいなと、移住を決めました」

 まだ東京にいたころ、博之さんは都内の会計事務所に勤めながら、埼玉県の有機農業の学校で1年間学んだという。

 「そのとき研修で何軒か有機農家を訪ねたのですが、とてもひかれた農家があって」

 学校を修了したあとも、週1回ぐらいその農家でお手伝いをした。

「彼らは、ぜいたくはしていないけど楽しそう。自分で食べ物を育てて食べる、そんな生き方もいいなと思ったんです」

 東京での生計は安定していたが、なにせ住宅や教育関連の支出が大き過ぎる。このままでいいのか……そんなとき香川県の移住相談会を訪れ、三豊市のことを知る。農地も、行政からの手助けもありそうだ。そして下見に訪れたとき、ここの里山風景に出合ったのだった。

 移住先の住み処は、何度か財田町を下見したときに知り合ったゲストハウスオーナーの尽力もあり、農地と山林付きの家を購入できた。水田も3反借り、農機具も主に中古で揃えた。

永井さんが減農薬栽培しているお米。長粒種の「サリークイーン」も栽培し、カレーのライスにブレンドしている。

自給まではいかないが、自宅の畑でいろんな野菜を育てている。風凛堂のカレーには、何かしら自分で栽培した野菜を入れている。

 

 そして、ついに有機農法での稲作が始まるのだが、1年目にして「農業だけで自活するのは大変だ」と気づく。博之さんがスパイスカレーを地域の人に振る舞ったのがそのころだった。

 「そうしたら、おいしい、商売にしたらと言われて。昔から料理が好きでいろいろ試してきたし、なら『半農半カレー屋』だと」

 永井さんの店「風凛堂」は、実店舗を持たない週休3日制。週2日、注文を受けてカレー弁当を個人宅や役場に配達する。週末は近所の道の駅やイベントなどでも弁当として販売する。

 「キッチンカーはありません。普通の乗用車で配達します。注文はLINEで受けています」

 つまり、風凛堂のカレーを注文できるのは知人やその知人。配達はほぼ近所のみ。

 「生活できるの?ですよね(笑)。でも、生活できる分だけ稼げればよいというスタンスなんです。家のローンも、東京でかかるような諸経費もない。なんとかやっていけます。今後はカレーの通販も予定していますよ」

 このカレー事業もだが、永井さん夫妻が移住後に到達した境地は、あまり無理をしないこと。そして、人に頼るということ。

 「農機具を全部自分で所有せず、一部は借りるようになった。今年は稲刈りを人に頼んだり」

 そんな軽やかな生き方が伝播したのか、次女から、将来はお父さんみたいになりたいな、と言われたそうだ。

「だって自由だし、なんて言ってました。冗談でしょうけど」

 財田町に移住して6年目の永井さん夫妻。背伸びをしない田舎暮らしは順調のようだ。

宅配や道の駅などで提供している風凛堂のカレー。人気は風凛堂チキンカレー(600円)やビーフカレー(700 円)など。今後は通販も予定。( 写真提供/博之さん)

季節の農産物がいろいろあり、もらい物も多いから、トマトやウメなどいろいろと保存食を楽しんでいる。味噌は2年間寝かしたもの。

自宅の隣に小さなプレハブ小屋を設置して、風凛堂のカレー工房に。
風凛堂 
https://www.facebook.com/Fuurindo/ 
Instagram/@furindo_farm

永井さんが中古で購入した家。この地域の農家ではよくある和風建築だが、都内の家族向け標準的マンションの3倍以上の広さがある。

 

永井さん夫妻に聞く「移住して、ここが変わった!」

「食、家族、人、そして日常が豊かに」

博之さん「食については、あるものというか、季節のものを食べるようになりました。それから、風邪をひかなくなったなあ」

早苗さん「お父さんが出勤しないことですかね。娘たちにとっては、父親が家にずっといるというのが普通になってきました。それから、都会と比べて、こちらでは人とのつながりが増えました」

 

三豊市移住支援情報
空き家バンクが充実成約数もトップクラス!

 移住定住ポータルサイト「みとよ暮らし手帳」では、常時約90件の空き家情報を公開。空き家購入者にはリフォーム補助金(最大100万円)がある。新規住宅取得については40歳未満の世帯だと最大100万円の補助がある。オンライン移住相談は随時受け付け。

政策部地域戦略課 ☎0875-73-3011
「みとよ暮らし手帳」https://www.city.mitoyo.lg.jp/mitoyo_kurashitecho/

三豊平野の風景。

「日本のウユニ塩湖」と、SNSで話題の父母ケ浜(ちちぶがはま)。

「お気軽にご相談ください!」
地域戦略課 松岡虹介さん

 

文・写真/大村嘉正

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