黒メガネにキャップ、オーバーオール姿がトレードマークの五島さんは元テレビマン。東京から佐世保への移住を機に動画を使ったまちおこし事業に乗り出し、「よそ者視点」も生かしながら地域の魅力発信に汗を流す。
掲載:2022年3月号
不惑を前に感じたもやもやが、佐世保への移住で霧散
福岡県出身で、東京のテレビ番組制作会社で働いていた五島大督(ごとうだいすけ)さん(39歳)は、30代後半に入ってから人生の歩き方について考える機会が増えた。
責任あるディレクター職も任され、脂が乗ってきた。だが、何かもやもやする。東京で働き続けたい気はある。ただ九州にはいつか帰りたい。地方の魅力発信にも興味がある。別の仕事という選択肢はあるのか――。
大学時代の同級生、北村悠樹(きたむらゆうき)さん(37歳)に声をかけられたのは、そんなときだった。
「故郷の佐世保にUターンして、動画を活用したまちおこし会社を立ち上げるんだけど、一緒にやらない?」
本来、時間をかけて考えるべき提案。しかし10秒も経たずに「行く!」と即答していた。
「自分がやりたかったこと、自分が持っているスキル、すべてがかみ合った気がしたんです。もやもやが消えて……。運命を感じた瞬間でした」
2019年1月のことだった。
北村さんはこの年の5月、佐世保市を拠点とするまちおこし会社「えびす」を設立。五島さんは会社を辞め9月には佐世保に移住、えびすに合流した。
えびすは動画配信サイトYouTubeに「佐世保ベース」というチャンネルを開設。移住者目線で、まちの魅力発信を始めた。テーマは「佐世保バーガー」といったご当地グルメをはじめ、釣り、まち歩き、キャンプなどさまざま。おおむね週2回のペースで動画を投稿し、22年1月時点での総投稿数は約250本に上る。
役割分担は、五島さんが「ローカルタレント」としての演者と編集、北村さんは撮影などを担っている。
佐世保について、五島さんは「美しい海、山河、そして米軍基地と、狭いエリアにさまざまなカルチャーが詰まったユニークなところ」と魅力満載の地域であることを強調。
取材で懇意になった㈲佐世保バーガー社長の糸長真也さんは「移住者の目線も生かした情報発信がいいですね。心から応援しています」と激励する。
チャンネル開設当初は「移住体験バラエティー」と銘打っていたが、コロナ蔓延で「佐世保の魅力新発見、再発見」を掲げるように。背景には、コロナ禍で佐世保に帰省できなくなった人にふるさとの情報を届けたい、という思いがある。
そんなえびすに吉報が届いたのは21年冬のこと。YouTubeを運営するGoogleが「社会的・文化的・経済的に有意義な影響を与えた日本のユーチューブクリエーター」を選ぶキャンペーンの1団体に「佐世保ベース」が選出されたのだ。五島さんは「地道な活動が実ったかたち。佐世保の皆さんに『佐世保ベースに協力している』と胸を張ってもらえるよう、活動の幅を広げたい」と抱負を語る。
五島大督さんに聞く「移住して大きく変わったこと」
「なぜかわかりませんが、空をよく見るようになりました。東京にいたとき、こんなことはありませんでした。気持ちに余裕が生まれたからかもしれません」
佐世保市移住支援情報
引っ越しや住宅購入などに対し、豊富な助成金制度を用意
中心市街地は必要な機能が揃うコンパクトシティ。一方、車で15分ほどのエリアでは自然豊かな田舎暮らしも可能で、多様なライフスタイルが選べる。移住支援策は、引っ越し費用や住宅家賃、住宅の新築・購入・改修などの助成金制度が豊富なほか、子育て世帯には手厚い支援も展開中。
西九州させぼ移住サポートプラザ ☎︎0956-25-9251
https://www.city.sasebo.lg.jp/99life/
文・写真/竹内 章
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