笑いコンビ「フォーリンラブ」としてブレイクしたバービーさん。テレビやラジオでは、さまざまなジャンルの番組で活躍している一方で、5年ほど前から生まれ故郷である北海道栗山町(くりやまちょう)の町おこしにも、積極的にかかわっています。しかし、地元と関係性を深めていくなかで、課題や葛藤も生まれたそう。故郷の活性化への思いや、これから田舎でかなえたい夢についてお話を聞きました。
ドラマ出演と甥の誕生が地元を考えるきっかけに
出身地である、北海道栗山町の町おこしに取り組んでいるバービーさん。18歳で上京してからはずっと東京暮らしだったが、地元に目を向けるきっかけとなったのが、北海道で制作されたドラマだった。
「NHKが制作した北海道発の地域ドラマ『農業女子〝はらぺ娘(こ)〞』に出演したことで、農業はもっと評価されるべきだと感じたんです。同時期に甥(おい)が生まれたことで、地元の行く末や経済についても考えることが増えました」
小さいころは隣接する夕張市(ゆうばりし)とともに、炭鉱で栄えてにぎわっていた名残が商店街などに残っていた栗山町だが、徐々にシャッター街となっていった。過疎化が進み、鉄道が廃線となり、消滅可能性都市にもリストアップされるなか、はたして故郷は子どもたちが育つ環境として適しているのか、考えさせられたという。
「確かに田舎では、都会とは違った感性を育むことができます。デジタル技術が都会と地方の格差を埋めるツールとなり、オンライン授業なども普及していくのかもしれません。一方で田舎の子は、スマートフォンを触っているだけで大人に怒られるといった現実もあります。ICTに関心のある人が少ない環境で、東京など都市部と同じ知識を得ることができるのか、将来上京することがあった場合、対応できるのかと感じてしまうのです。本当は田舎と都会のいいとこ取りをして、育ってほしいんですけれども」
ポテンシャルはあるがブランド化できていない
そんな懸念を抱きつつも、バービーさんは、地元の魅力やポテンシャルについてよく理解している。
「栗山町は札幌から車で約1時間、新千歳空港からは約45分の距離で、広大な土地や美しい自然など、いかにも北海道といった田園風景が広がるまちです。夕張メロンのように知名度のある食べ物はありませんが、米やジャガイモ、トウモロコシなどおいしいものをいろいろつくっています。毎年9月に行われる栗山天満宮の例大祭『栗山秋まつり』は、300を超える露店が並ぶ、道内屈指の規模のお祭りです」
決して、町に特色がないわけではない。バービーさんが考えたのは、うまくブランディングすれば、もっと町を盛り上げられるのではないかということだった。
「じつはクリエイターが集まるまちでもあって、昔から陶芸やステンドグラス、家具などのもづくりが盛んなんです。町役場も、作品を出展できる『くりやまクリエイターズマーケット』を運営し、ものづくりを応援しているほか、飲食店を開業したい人が日替わりでランチを提供できるシェアレストランなど、サポートする体制をいろいろとつくっています」
町を変えるのではなく、変わりたい仲間と楽しむ
北海道民らしく、奥ゆかしくてシャイだが、優しくて気遣いをしてくれる人が栗山町には多い。一方で、ビジネスに関してガツガツしている人は少ない傾向があるという。
「5年ほど前から、役場の方や地元の同級生たちとさまざまな活動に取り組んできてわかったのは、田舎には『変わりたくない』『東京の価値観に合わせたくない』と考える人が一定数いるということ。みんなが一丸となって意識を共有し、新しい取り組みに挑戦するというのは理想ですが、現実的ではなく、外部の人間が考えた絵空事だと気づきました。それからは、町を変えるのではなく、変わりたい仲間たちと楽しむことを目的とするようになりました」
バービーさんは町のPR動画への出演やイベントの審査員など、栗山町が手がける地域活性化の取り組みにも協力しているが、仲間たちと独自の活動も行っている。「#栗山町ワクワクプロジェクト」と名づけ、自ら「わくわくクリエイター」と名乗り、名刺の肩書としても使用。楽しい町おこしのプランをみんなで考えている。
「私が連絡しやすい、会いやすい地元の仲間は、若い農家の人たちが多いんです。現在は閉鎖しましたが、農産物などを販売するECサイトを立ち上げるなど、実際にアクションも起こし始めています」
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