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田舎暮らしの本 1月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 1月号

12月3日(火)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

長年かけて気づいた天職。食を通して子育てをサポート【滋賀県彦根市】

弁当販売やビワの葉クリームづくりなどを通し、子育て中のお母さんをサポートする柳生麻里さん。活動を実践し、自身の子との時間も充実させるべく選んだ地が彦根市。「暮らすのにちょうどいい」という地で実感した、生活や子育てに対する価値観を伺った。

掲載:2022年12月号

柳生麻里さん/1977年、大阪府出身。10年ほど京都で1人暮らしをしながら、ショップ店員や飲食店の調理補助などさまざまな職種を経験する。米原市の友人宅で田植えなどを手伝ったことを機に、滋賀県での暮らしにひかれ、2011年に奥伊吹(米原)の地域おこし協力隊として滋賀に移住し、一大イベント「伊吹の天窓」の企画・立ち上げに尽力。現在は彦根市で自身も子育てをしながら、子育て中のお母さんをサポートする活動をする「あおいふき」を主宰。
写真は、長男・青くん(7歳)と自宅から車で約5分の琵琶湖畔にて。親子で過ごしたり、1人でボーッとしたりできる、お気に入りの場所。

 

自身の体験を通し子育て世帯をサポート

 滋賀県彦根市に拠点を置き、「あおいふき」という活動をしています。活動内容は、子育て中のお母さんをサポートすること。おもに、野菜をたっぷり使ったお弁当や総菜の販売を行っており、不定期でビワの葉を使ったクリームづくりのワークショップも開催しています。

 これまで出身地の大阪から京都、奈良でいくつもの仕事に就き、滋賀県米原市では地域おこし協力隊として活動しました。そんななか、「食」にかかわることが好きだと気づくのですが、食を通して自分が何をしたいのかわからない。周囲から「店をやってみたら?」と言われても、なんだか腑に落ちず、ずっとモヤモヤしていました。しかし、ここ彦根で「これが私のやるべきこと」と思える仕事がハッキリしてきたと実感しています。

 今に至るきっかけは2018年に生後74日の娘を病気で亡くしたことでした。娘を病院で看病している間は、食に興味があった私が「あの店でご飯を食べたい」「○○が食べたい」といった気持ちにまったくなれなかったことに驚きました。そして、何げない日常生活こそが本当に大切なことだと気づきました。

 娘を亡くしたあとも、子育て中のお母さんと接することが多かったのですが、みんなあまりに忙しくて、自分のことを後回しにしがち。そんな方たちの何げない日常のささやかなお手伝いがしたい。お父さんやお母さんが安心して子育てできるよう少しでも力になれればと思うようになりました。こうして19年に立ち上げたのが「あおいふき」です。屋号は、長男・青と、亡くなった娘・ふき、2人の名前を取ったもの。2人と一緒に歩んでいきたいという気持ちを込めています。

 

新たに拠点を移し長男との暮らしを大切に

 地域おこし協力隊を卒業したあとも暮らし続けた米原市は、自然が豊かで大好きな場所でした。しかし、長男が何か行動をしようとすると、親の送迎が必要な場所でもありました。そのため、長男が自分の足で動ける生活を送らせてあげたいと思うように。そして、別の地に移住するなら小学校に上がる前だと、長男の生活優先で考えていました。そんなとき、知り合いがかかわっている彦根市のコミュニティスペース「あしがるノイエ」にシェアキッチンが設置されることを知ります。これがちょうど長男が小学校に上がるタイミングだったのです。

 20年12月、彦根に引っ越し、21年8月にシェアキッチンが完成し、彦根市での活動が本格化。彦根市は自然が近くにあり、ほどよく便利。人との距離感もちょうどよくて、長男もすぐ環境になじんでくれました。今暮らしているのは、「あしがるノイエ」から歩いて行けるアパートです。でも、近々引っ越すつもりです。といっても今回は、「あしがるノイエ」のすぐ近く。たまたま空き家になった一軒家があり、借りられることになったのです。

 シェアキッチンは設備が整っていて居心地もいいのですが、「これからはこの仕事でやっていくんだ!」という覚悟ができたので、自分の拠点を持つ決心がつきました。一軒家は現在整備中で、この冬には拠点が完成する予定です。新たなキッチンを構えたら、これまで要望が多かった総菜配達にも力を入れていきたいですね。

「あしがるノイエ」のシェアキッチンで野菜を仕込む柳生さん。今後は新たに拠点を構え、総菜配達にも力を入れていく予定。

野菜たっぷりの弁当を販売するほか、自宅を訪問して総菜をつくることも。詳細はInstagram:@aoifukiで告知。

 

「あおいふき」を活用して家事を手抜きしませんか?

 じつを言うと、いまだに「あおいふき」の周知は十分できていない状態で、今も貯金がなくなるんじゃないかとヒヤヒヤしています。でも、友人から紹介してもらったお客さんから輪が広がっていくなど手応えは感じているからがんばれています。

 ここまで続けてきて「この仕事を始めてよかった」と思ったのは、とあるお母さんから「久々に栄養のあるものを食べたー!」と喜んでもらえたこと。自分のことを後回しにしているお母さんって、本当に多いんですよね。でも、家事を少しばかり手抜きして、自分と向き合う時間をつくってみたらどうでしょう? そして気持ちを切り替えたら、また、子育てに集中できると思うのです。

青くんとの時間を大切にすべく、仕事は朝9時ごろから始め、16時には終わらせるよう心がけている。

 

【滋賀県彦根市 ひこねし
琵琶湖と鈴鹿山系に囲まれた彦根市。彦根城や町家が並ぶ歴史ある町並みを残すなど、市内には魅力ある場所が点在する。JR彦根駅より新幹線米原駅経由で名古屋駅へ約30分、新大阪駅へ約40分。

 

【彦根市 移住支援情報】
普通の平日と特別な休日、どちらも選びたい人に最適な場所

 城下町の名残もあれば昭和の商店街の風景もあり、人が多く集まる新市街地や田んぼに囲まれた自然豊かな風景もある彦根市。湖岸を走れば琵琶湖も見え、ここにしかない風景を見ることができる。移住検討時は、移住コンシェルジュに相談を。そのほか、補助金制度などもあるので、詳しくはホームページをチェックしよう。

問い合わせ/彦根市企画課 ☎︎0749-30-6101
https://www.city.hikone.lg.jp/index.html

まちのシンボル的存在でもある彦根城。秋の天守は特に美しい。

移住コンシェルジュが希望に添ったプランを提案し、彦根市内を案内してくれる。

 

文/横澤寛子 写真/谷口 哲 写真提供/柳生麻里さん

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