DIY歴8年という「微妙な」実績の人力社がお手伝いし、和田邸建てる「出張! 人力山荘」。廃材利用で200万円で完成すると豪語する和田だが、どうなることやら。
中山「『田舎暮らしの本』をご愛読の皆さま、人力社の中山です」
阪口「カメラマン阪口です」
水野「担当編集の水野です」
和田「人力社の隠れキャラの和田です」
水野「さて、『出張人力山荘』ですが、どういうものでしょう?」
阪口「DIY歴8年と、それなりに技術が身についてきた人力社がセルフビルドの助っ人として出張します。今回は本誌ライターとしても活躍する和田君のお宅に出張いたします」
中山「最初は読者の皆さまから公募しようかと思ったんだけど、いきなり他人さまのお宅も、いかがなものかってことで」
和田「それ何? ウチなら失敗しても許されるってこと? ねえ、そうなの?」
一同「平たく言うとそうです」
和田「ガビーン!」(←化石ギャグ)
水野「人力山荘も、本誌連載開始から8年になりますからね。技術もそれなりに……」
中山「いえ、たいして上達していません!」(←キッパリ!)
阪口「いえ、着実に上達しているのを日々感じています!」(←自宅をセルフビルドで建築!)
水野「編集長はもちろん大失敗を期待していますよね?」
編集長・柳「もちろんです!」
玄関が、ない!?
水野「さて、それでは和田邸の説明をお願いします」
和田「うちは茨城県石岡市にありまして、敷地300坪。すでに築75年余りの古民家が建っているんですが、新たに別宅を建てます。建坪18坪の平屋で2LDK。もちろん風呂トイレ完備です。完成予想図と平面図は下のとおり」
中山「……あれ? 玄関は?」
和田「玄関はない」
一同「ないの? 玄関!?」
和田「つくらない。だって縁側から出入りすればいいじゃん」
阪口「いやまあ、そうだけどさ……。いいのかな」
水野「ほかに特徴は?」
和田「風呂トイレ以外、仕切りが一切ない。天井もなし。吹き抜け」
中山「オープンスペースっていうんですか?」
阪口「……寒くね?」
和田「大丈夫! 薪ストーブ入れるし。それと、廃材利用で最大限安く仕上げます。ご予算200万円」
中山「足りないだろ。人力山荘のアネックスでさえ80万円かかったんだから。しかも建坪半分以下で」
和田「大丈夫! 廃材と間伐材の丸太で最大限安く仕上げます。設備関係(風呂、キッチン、トイレ、温熱機など)もできる限り自作する予定だし」
阪口「200万円のうち、薪ストーブが半分近くを占めるのではないかと」
一同「うーむ。ますます心配だ」
阪口「あと気になるのは壁が少ないことだね。耐震的に大丈夫なのか?」
和田「しかも真壁にするので、筋交い(すじかい)は入れずに貫(ぬき)にしようかと」
水野「ちなみに『筋交い』は壁に対して斜めに入る耐震補強材のことで、『貫』は水平に入る補強材のことです」
阪口「伝統工法だと貫だよね。しかしなぜ施工が面倒な真壁に?」
和田「柱は基本的に丸太なので、必然的に柱が『現し(あらわし)』になっちゃう。梁も桁も丸太。そもそも既製の木材より古材とか丸太のほうが好きなんだよね。まっすぐより曲がっているほうがいい」
中山「なんか、和田家の教育方針を聞いているみたいだな」
和田「本当は小舞(こまい)で囲って土壁漆喰仕上げにしたかったんだけど」
一同「それはやめて正解だよ」(←面倒な作業はしたくない)
水野「ではここで、奥さんのワカメちゃんの希望も聞いてみましょうか」
ワカメ「今の家で不便だったところがいくつかあるので、それを改善してもらいたいですね」
阪口「例えば?」
ワカメ「キッチンの水切り籠を置くスペースが右にあるんです。普通左ですよね?」
一同(少し考えて)「確かに!」
ワカメ「あと洗面台の蛇口がすごく邪魔なんです」(下の写真)
一同「確かに!(爆笑)」
ほかにも家が傾いている、すきま風がすごい、縁側の板の合わせ目から雑草が室内に伸びてくるなどなど、あれこれあるようだ。
和田「ぐ……、もちろん考慮しますとも!」
水野「というわけで『出張! 人力山荘』、スタートです!」
段取りは完璧
まずは恒例の基礎コンクリ打ちである。建物の基礎となるコンクリートの打設工事が、さしあたっての大工事なんだが、これに先立って、やらなければならないのが「遣(や)り方」。遣り方とは杭と貫、水糸で、建物の位置を正確に割り出すこと。基礎コンクリを打つ前の重要な仕事である。そしたらなんと……、我われが来る前に和田がキッチリ仕上げているではないか。
阪口「さすが段取りがいいねー。奥多摩のどっかの家とは大違い」
中山「ぐ……。ここはホラ、道路付きがいいから」
水野「理由になってませんね」
位置決めをしたら次の作業は、これも恒例の土木工事である。人力山荘では当然のようにスコップとツルハシだったが、和田邸では新機軸が登場である。それは地響きを立てながら我われの前に姿を現した。
一同「うおー。油圧ショベルだあっ!」
和田「近所の中古重機屋から30万円で買ったのだよ! これがあれば百人力! わっはっは!」
小型油圧ショベルで登場した和田は、基礎の下地をガンガン掘り進める。50㎝ほどの深さに掘ったら、今度は砂利を敷き詰めて突き固めるんだが、ここでも油圧ショベルが大活躍。文字どおり「百人力」だ。
和田「もうね。人力でなんてやってられないね。時代は機械ですよ、機械!」
阪口「これはもはや、『人力社』とは言えないなあ」
中山「いっそのこと『動力社』に社名変更するか」
一同「なんか強くなった感じ!」
中山「次回からタイトルも変更しちゃって『出張! 動力山荘』ってことで……」
水野「はいはい。お話を進めましょうね」
タコツキで砂利を突き固めたら、コンクリの型枠と鉄筋を組んでいく。これも人力山荘ではテキトーだったが、和田邸では鉄筋同士を番線でキッチリ結束していく。型枠もセパレーターでしっかり固定されて本格的だ。
阪口「うーむ。プロっぽい仕上がりだなあ」
和田「近所に左官職人を引退したおっちゃんがいて、いろいろ教えてくれるんだよね」
阪口「やはり持つべきものはプロの友達ですな」
中山「人力山荘は、ほぼ徒手空拳でやってたからね」
あとはミキサー車の到着を待つだけである。まさに段取りは完璧……、のはずであった和田だが、順風満帆もここまでであった。
ミキサー車が来ると「てんやわんや」である。和田の指示に従ってネコ車で生コンを運び、流し込んでいくんだが、足場板が不安定でネコ車をひっくり返しそうになるわ、型枠からあふれるわ、締め固め役がいないわ……、そして最後には、
和田「やばい……。コンクリが足りない」
阪口「ええーっ! 余るならまだしも足りないとは!」
和田「仕方ないから残りは手練りってことで……」
中山「えー! 面倒くせー!」
阪口「あんたんとこで、どんだけ練ったと思ってんだよ!」
中山「だって、さっき機械の時代って言ってたじゃんよ」
和田「文句言わない! コンクリ手練りしてコテで天端をならす!」
中山・阪口「はーい……」
こうして第 1回の出張作業が終わった。
遅刻・欠勤は原稿料徴収!
約 1カ月半後……。和田に呼ばれて阪口と水野が行ってみると、なんと前回にも増して立派な型枠ができあがっているではないか。これもご近所の元左官職人、大塚さんに型枠と単管パイプを貸してもらったおかげ。心強い助っ人の登場だ。
阪口「道具がいいと違いますな」
和田「型枠が弱いとコンクリの重量に負けてグニャグニャになっちゃうんだよね」
阪口「うちの玄関です(泣)」
この日は基礎の立ち上がり部分の型枠にコンクリを流し込む日だ。前回は人力社3名だけでてんてこ舞いだったので、今回はご近所の移住者、柴田さんと大谷さんを助っ人に呼んだ。大塚さんの指導もあって段取りはバッチリ。バイブレーターでコンクリに振動を与え つつ、順調に流し込んでいく。
阪口「あとはコンクリが固まってから、モルタルで天端ならしをして水平を出せばOKだな」
和田「ところで中山さん、いつ来るの?」
水野「遊びに出かけててお休みだそうです」
阪口・和田「なにー!?」
水野「今度から遅刻・欠勤は原稿料没収にしましょうね」
中山「ガビーン!」
文/中山茂大 写真/阪口 克 イラスト/和田義弥
第2回 墨付け、刻み
第3回 柱、梁、桁の刻み
第4回 棟上げ目前
第5回 棟上げ
第6回 棟上げ
第7回 棟上げ
第8回 足場組み、家起こし
第9回 屋根
第10回 屋根材張り&プロによる中間チェック
人力社
ライター中山とカメラマン阪口、 ライター和田の旅とDIYを得意とする3人組トリオ。「人力山荘」シリーズでは中山の母屋リフォーム、中山のアネックス新築DIY、和田の自宅新築DIYを連載。阪口も自宅をDIYで新築している。
人力社HP➡www.jinriki.net
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