掲載:2023年1月号
「海外を相手に、仕事で活躍したい」と人生を見直した、岡山県出身の坂井さんが移住したのは愛媛県今治市。コロナ禍をきっかけにアウトドアの楽しさに目覚め、終の棲家として見晴らしのいい古民家を購入した。補助金を使いつつ、只今絶賛リフォーム中!
「今治の人は、スーパーのレジでも目を合わせて会話してくれる。気温だけでなく心も温かいですね」と感激して語ってくれた坂井巳予さんとパートナーの石岡辰雄さん。伯方島の「伯方ビーチ」にて。
愛媛県の北東部に位置する、造船とタオルのまち。市街地もありつつ、島しょ部では柑橘栽培も盛ん。松山空港からリムジンバスで86分。西瀬戸自動車道(瀬戸内しまなみ海道)西瀬戸尾道I Cから今治北ICまで約50分。
200万円の家は築60年補助金を使って大改修
東京でテレビ業界に就職したものの、理想とのギャップを感じて一度故郷の岡山に戻った坂井巳予(さかいみよ)さん(37歳)。
「世界を相手にバリバリ働きたい!」と人生を見つめ直した2019年。縁あって転職したのが、海外でも活躍している今治市の企業だった。
「まちの伝統産業である今治タオルのメーカーさんなどに向けて、洗剤や柔軟剤などを製造し、提供しています。その技術をもとに、海外とも取引があるんですよ」
と、坂井さんははつらつとした笑顔を見せる。転職と同時に市内に居を移した坂井さんだが、この地に根を張ることを決意したのはつい1年ほど前だという。
「最初は都心と比べて、田舎で仕事を充実させられるというイメージが湧きませんでした。しかし、コロナ禍で近所を散策していた時期に、温暖な気候で自然を愛でる喜びやアウトドアにも目覚めて、こんなところで老後まで過ごしたいと考えが変わりました。市内の伯方島(はかたじま)にある『ドルフィンファーム オートキャンプ場』では、真冬でもテントでの宿泊やバーベキューも楽しめるんですよ」
それまでは賃貸のアパートで生活していたが、2022年の2月末から家の購入を検討。パートナーの石岡辰雄(いしおかたつお)さん(44 歳)も同居予定だ。
「愛媛県の空き家バンクで見つけた物件の立地に、一目ぼれしました。4月に下見に来たところ、畑越しに咲き誇るサクラや菜の花がきれいで――。この景色を眺めながら2人でお酒を酌み交わしたいと、夢が膨らみました。それに、築60年の家と聞き、40年後に100歳のお祝いもしてあげたくて」
将来的に景観が維持できるのか土地を調べたところ、周辺は市街化調整区域で、新たな住宅や商業施設は建たないことが判明。200万円で購入した物件は劣化が著しかったが、どうしてもここに住みたいと、1400万円の費用を投じての大改修に踏み切った。補助金は、市の「空き家リフォーム補助金」の200万円を利用した。
新居の完成は2023年1月。今後はプライベートも充実し、仕事面でもさらなる飛躍が待っていることだろう。
右側奥が改修前の家。手前には広々とした畑とサクラ、集落の奥には来島海峡と造船所のドックが。
年輪を感じる天井の梁を生かし、古民家風にリフォーム。壁の漆喰は、友人たちとDIYで塗る予定。
「新居の西側には、畑やサクラの景色が見られるように大きな窓が入ります」と、完成を心待ちにする2人。
現在のアパートは、新居から車で15分の場所。新居では、同居する3匹の猫専用のスペースも設けた。
ふわふわで肌触りのよい今治タオルへの愛が深過ぎて、いつでも知人にあげられるように車に積んでいるそう。
現在の会社では、営業担当。「上司や先輩のみなさんに、とても大切にしてもらっています」(坂井さん)
「道の駅 伯方S・Cパーク マリンオアシスはかた」にて。レモン風味のスナックやおつまみに興味津々。
近隣のスーパーでは、新鮮な旬の魚が安値で手に入る。10月末は、ブリの若魚「ヤズ」の刺身を堪能!
行きつけの居酒屋さんにて。鉄道が通っている今治なら、駅の近くに住めば飲み歩きも気軽に楽しめる。
「今治に来て船の迫力に圧倒された」という坂井さん。新居から車で10分ほどの波止浜港で目の保養。
3年前の冬に伯方島で体験した、「ドルフィンファームしまなみ」でのイルカとのふれあい。背びれにつかまって、ドキドキの遊泳!
坂井さんに聞く!今治市の海辺での楽しみ
移住前に利用した「ドルフィンファームオートキャンプ場」。電源付きで、アウトドア初心者でも挑戦しやすかったそう。
橋で渡れる島に気軽にドライブ!
「市内にある『星の浦海浜公園』からは、大型の船が浮かぶ手前に、漁師のおじいちゃんが魚を手繰り寄せていたりするのが見え、地元の人の営みを感じます。持参したドリンクなどを片手にその光景を眺めるのが大好きです。橋で渡れる島が多いので、思い立ったときに車で気軽に出かけられるのもいいですね」(坂井さん)
文・写真/吉野かぁこ
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