大分のお酒といえば、焼酎を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。実は、大分には江戸時代に幕府に日本酒を献上するなど、名酒の産地として全国的な知名度を誇ってきた歴史がある。今では、焼酎と日本酒を兼業で製造する酒蔵も数多くあり、歴史ある酒蔵で数多くの美味しい日本酒が製造されている。
今回は、東京・有楽町にある大分県のレストラン型アンテナショップ「坐来大分(ざらい おおいた)」で行われた、日本酒と地元料理のペアリングを楽しむイベントの様子をレポート形式で紹介する。
イベント当日は、大分県を代表する郷土料理を、より美味しく食すため、人気蔵元がおすすめの銘柄を用意し、食を最大限に楽しむための究極のペアリングを披露した。参加したのは、萱島(かやしま)酒造、中野酒造、小松酒造場、クンチョウ酒造、八鹿(やつしか)酒造の計5社。各蔵が準備した2種の自慢のお酒と、相性のいい料理を紹介しよう。
【前菜】九重町・八鹿酒造のスパークリング日本酒で乾杯!
「八鹿スパークリングNiji」× 佐伯 グリーンアスパラ浸し
「佐伯 グリーンアスパラ浸し」(写真中央)には、県西部に蔵を構える八鹿酒造の「八鹿スパークリングNiji」(写真左)を合わせていただく。八鹿酒造では、お酒の名前に“色”を使っているのだとか。乾杯の一杯としていただいたこちらも、まさに“Niji(虹)”のように鮮やかで、きめ細かな泡立ちとすっきりとした味わいが、アスパラや鰹節の繊細な風味とも相性抜群だ。
【世界で絶賛される新感覚の日本酒】
八鹿スパークリングNiji
(八鹿酒造)
アルコール度数:8度
日本酒度:非公開
酸度:非公開
米の種類:非公開
精米歩合:非公開
特徴:特別な日の乾杯シーンを華やかに演出。瓶内二次発酵による、力強くきめ細やかな泡立ちが特徴の新しいスタイルの日本酒。
「KUNCHO NEXT 純米吟醸 Nouveau 無濾過無加水 おりがらみ」× 大分 根三つ葉浸し おおいた冠地どり笹身叩き
また、「大分 根三つ葉浸し おおいた冠地どり笹身叩き」(写真下)には、クンチョウ酒造の「KUNCHO NEXT 純米吟醸 Nouveau 無濾過無加水 おりがらみ」(写真右)をペアリング。柔らかいささみと、歯ごたえのある根三つ葉の組み合わせが絶妙で、さらに、日本酒の華やかな香りとピリッとしたガス感により、軽く炙られたささみの旨みが引き立てられていた。
【華やかさが特徴の吟醸酒】
KUNCHO NEXT 純米吟醸 Nouveau 無濾過無加水 おりがらみ
(クンチョウ酒造)
アルコール度数:17度
日本酒度:非公開
酸度:非公開
米の種類:非公開
精米歩合:非公開
特徴:おりがらみによって生まれるピリッとしたガス感が特徴の薫長の新時代の新種。
【向付】魚介には国東市・萱島酒造の手造り純米酒が相性抜群
向付には、「郷味 りゅうきゅう 豊の活ぶり」(写真右下)と「関たい薄造り 桜塩 ぽん酢」(写真左下)の2種の魚料理が登場。
「西の関 手造り純米酒」× 郷味 りゅうきゅう 豊の活ぶり
地元でとれた新鮮な魚を、醤油、酒、みりん、ごま、しょうがでつくるタレと和えた、大分県の代表的な郷土料理「りゅうきゅう」(写真右下)と合わせていただくのは、国東市(くにさきし)にある萱島酒造の「西の関 手造り純米酒」(写真右上)だ。冷やからヌルめまで幅広く味わえ、温度の違いによって香りの変化が楽しめるのもこのお酒の特徴のひとつ。今回は冷やで飲んだが、やや濃い目のりゅうきゅうの味を程よく引き締めてくれ、自然と箸が進んだ。
【繊細さが魅力の日本酒】
西の関 手造り純米酒
(萱島酒造)
アルコール度数:15度
日本酒度:-1.5
酸度:1.4
米の種類:八反錦、ヒノヒカリ
精米歩合:63%
特徴:冷やからヌルめの燗まで、幅広く味わえる手造り純米酒・力強く繊細な、本来の心地よい旨みを堪能できる。
「KITSUKI BLANC CUVEE CHIEBIJIN 2023」× 関たい薄造り 桜塩 ぽん酢
「関たい薄造り 桜塩 ぽん酢」(写真右下)と一緒にいただく中野酒造の「KITSUKI BLANC CUVEE CHIEBIJIN 2023」(写真左上)は、精米歩合60%の生酒で、生魚との相性もよいとのこと。飲んでみると想像以上にさっぱりとしていて、日本酒を普段飲まない人でも美味しく楽しめそうな味わいだった。酒蔵がある杵築市(きつきし)では牡蠣(カキ)の養殖が盛んなため、牡蠣と合わせるコンセプトで作られているそう。ぜひこのペアリングも試してみたい。
【ワイングラスで楽しむ日本酒】
KITSUKI BLANC CUVEE CHIEBIJIN 2023
(中野酒造)
アルコール度数:13.5
日本酒度:-11
酸度:12.2
米の種類:山田錦・ヒノヒカリ
精米歩合:60%
特徴:杵築市は牡蠣の養殖が盛んで牡蠣街道があり11月~3月は旬の牡蠣が楽しめる。そんな牡蠣と合せるコンセプトでワイン酵母で醸したのがこのお酒。ワイングラスで牡蠣と一緒に楽しもう。
【酒肴】酒好きをうならせる杵築市・中野酒造の「ちえびじん」
酒肴としていただくのは、「国東 太刀魚 林檎鬼卸し」(写真右下)と「姫島 車海老 南蛮漬け」(写真左下)。
「ちえびじん 純米酒」× 国東 太刀魚 林檎鬼卸し
林檎の乗った太刀魚(写真右下)とペアリングする中野酒造の「ちえびじん 純米酒」(写真左上)は、精米歩合70%と、お米をあまり磨かなくとも綺麗で旨みとキレのある純米酒を目指した、蔵元こだわりの銘柄だ。まさに酒好きにはたまらない味わいで、お酒からも林檎のような香りがするため、お料理の風味をさらに引き立てる。キレの中に感じる優しい甘みを、チーズと一緒に味わうのもおすすめなのだとか。
【人気ブランド「ちえびじん」の代表酒】
ちえびじん 純米酒
(中野酒造)
アルコール度数:15度
日本酒度:+-0
酸度:1.6
米の種類:山田錦・ヒノヒカリ
精米歩合:70%
特徴:日常の乾杯に感動を! 精米歩合70%、米をあまり磨かなくても綺麗で旨みがありキレのある純米酒。
「西の関 純米大吟醸 はんなり」× 姫島 車海老 南蛮漬け
大分県北東部の国東半島沖に浮かぶ姫島名産の車海老(写真左下)と合わせていただくのは、優しい香りとお米の繊細な旨みが特徴の、萱島酒造の「西の関 純米大吟醸 はんなり」(写真右上)。コクのある料理との組み合わせがおすすめとだけあって、濃厚な車海老とのペアリングも最高だった。
【ふくよかで穏やかさが魅力の日本酒】
西の関 純米大吟醸 はんなり
(萱島酒造)
アルコール度数:16度
日本酒度:+1
酸度:1.45
米の種類:山田錦
精米歩合:35%
特徴:穏やかで優しい吟醸酒と、お米の繊細な旨みがなめらかでふくよかな味わいを奏でる、旨口タイプの純米大吟醸酒。
【主鉢】宇佐市・小松酒造場のおりがらみには地元名物の唐揚げを
主鉢は「おおいた冠地どり 宇佐唐揚げ 柚子出汁ぽん酢」(写真右下)と「安心院(あじむ) すっぽん 唐揚げ 柚子ぽん酢」(写真左下)。
「豊潤 おりがらみ」× おおいた冠地どり 宇佐唐揚げ 柚子出汁ぽん酢
大分県北部の宇佐市(うさし)は“唐揚げ専門店発祥の地”として知られ、「宇佐唐揚げ」(写真右下)は地元の名物として長年愛されている。これと合わせるのは、同じ宇佐市に蔵を構える小松酒造場の「豊潤 おりがらみ」(写真右上)だ。口の中をすっきり洗い流し、次の料理を楽しむような爽やかな日本酒がコンセプトとのことで、酸度が高くすっきりした味わいが、唐揚げのような揚げ物とペアリングしても油っぽさを感じることなくいただくことができた。
【この時季にぴったりの日本酒】
豊潤 おりがらみ
(小松酒造場)
アルコール度数:16.4度
日本酒度:-3
酸度:2.3
米の種類:宇佐産 吟のさと
精米歩合:60%
特徴:リンゴ酢による甘酸っぱい味わいと、瓶内二次発酵による爽やかな口当たりで、春にぴったりの口当たり。
「豊潤 大分三井」× 安心院 すっぽん 唐揚げ 柚子ぽん酢
すっぽんの唐揚げ(写真左下)と一緒に味わう小松酒造場の「豊潤 大分三井」(写真左上)は、大分県の酒米“大分三井”を使用することによって生まれる、さっぱりとキレのいい後味が特徴だ。淡白で歯応えがあり、噛めば噛むほど旨みが出てくるすっぽんの繊細な風味をさらに引き立ててくれた。
【さっぱりとキレのある味わいに虜になる日本酒】
豊潤 大分三井
(小松酒造場)
アルコール度数:13度
日本酒度:-9
酸度:3.0
米の種類:宇佐産 大分三井
精米歩合:60%
特徴:白麹による甘酸っぱい柑橘系の酸味と、全量、大分県固有米「大分三井」を使用することで、お米のコクとさっぱり感、さらにキレのよい味わいが楽しめる。
【締め】美しい水が特徴の日田市・クンチョウ酒造の純米吟醸と鰻の組み合わせに感服!
締めの逸品としていただくのは「日田 鰻 飯蒸し」(写真左下)と「玖珠(くす) もち麦リゾット 九重 椎茸」(写真右下)。
「KUNCHO NEXT 純米吟醸 雄町」× 日田 鰻 飯蒸し
鰻(写真左下)とともに楽しむのは、料理を邪魔しないほのかな香りで、雄町米(おまちまい)を使用した超辛口が特徴のクンチョウ酒造の「KUNCHO NEXT 純米吟醸 雄町」(写真左上)。大分県の北西部に位置し、福岡県、熊本県と県境を接する日田市(ひたし)は、江戸時代には天皇直轄の領地“天領”として栄えた地域。そこに蔵を構えるクンチョウ酒造もまた、天領・日田の美味しい水を使い、300年以上の歴史を持つ酒蔵だ。「KUNCHO NEXT 純米吟醸 雄町」は、飲み飽きない食中酒をコンセプトにしているだけあり、鰻のふっくらとした味わいを引き立てるような味わいだった。
【絶妙な後味がやみつきになる日本酒】
KUNCHO NEXT 純米吟醸 雄町
(クンチョウ酒造)
アルコール度数:17度
日本酒度:+9
酸度:1.6
米の種類:雄町
精米歩合:60%
特徴:雄町米を100%使用した超辛口の純米吟醸酒。「うまさ」と「辛さ」が絶妙の骨太さとキレのいい後味が特徴。
「八鹿吟醸 桃」玖珠 もち麦リゾット 九重 椎茸
もち麦リゾット(写真右下)と合わせていただくのは、八鹿酒造の「八鹿吟醸 桃」(写真右上)。『九州S‐1グランプリ in東京』で優勝した逸品だ。新鮮な果実を思わせるほんのり甘く華やかな香りが特徴だが、甘ったるさはなく、飲んだ後キレがあるため飲み飽きないお酒となっており、グランプリでの優勝も納得の味である。
【飲み飽きないフレッシュな味わい】
八鹿吟醸 桃
(八鹿酒造)
アルコール度数:14度
日本酒度:+2
酸度:1.3
米の種類:山田錦
精米歩合:60%
特徴:新鮮な果実を思わせるほんのり甘くはなやかな香と、綺麗な余韻。九重連山の伏流水で仕込んだすっきりと軽やかな飲み口の吟醸酒。
肉や魚、野菜など、大分の食材の豊富さはもちろん、大分の日本酒のバリエーションの豊富さは食通にはたまらない。それぞれのお酒が食材の魅力をより引き出すような味わいになっており、大分の食の魅力を存分に堪能することができた。普段のちょっとした贅沢に、ぜひ大分の日本酒を取り入れてみてほしい。
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