掲載:2017年3月号
前回まで屋根作業をしていた和田邸。ようやく雨仕舞いも完成し、天気の心配なく作業できるようになったが……、今度は和田のドケチぶりがさらにパワーアップ。「テキトー大王」に加えて「ドケチ大王」の称号も間近だぞ!
単なるドケチ⁉ それともリサイクル⁉
今回から作業は「壁の施工」に入るが、ここで初心に帰り、広辞苑で「壁」を調べてみよう。
かべ【壁】①家の四方を囲い、または室と室の隔てとするもの
まさにその通りなんだが、現代ではこれ以外にも重要な要素がある。それはいわゆる「耐力壁(たいりょくへき)」といわれるもの。その代表的な建材が「構造用合板」だ。これにより壁自体が耐震性を発揮する。囲いや隔て以外にも重要な意味が付加されているのだ。
水野「なんか今回、真面目よね」
中山「いえね。最近、思うんですけどね。どうも俺、みなさんに『和田の下請けライター』と思われているような気がしてですね」
助っ人さん一同「ええっ? 違うんですか?」
中山「……やっぱり(泣)」
阪口「お前は助っ人さんにどういう説明してるんだよ」
和田「いや別に(汗)」
水野「なるほど。それで前回ふて寝していたわけね!(笑)」
中山「いえ、いいんですよ……。下請けライターで」
阪口「あーあ。すねて原稿書かなくなったらどうすんだよ」
水野「『著者がいじけたため休載』って前代未聞!(笑)」
いじけていても仕方がないので原稿を書こう。
「耐力壁」で始めてみた今回の原稿だが、和田家では当然、
和田「ウチはそんなの使わないから!」
阪口「始まった! 和田家名物『ドケチ』!」
和田「違うの! 土にかえらない素材はなるべく使いたくないの」
中山「そんな高邁(こうまい)なことを考えてたんだね」
水野「単なるケチだと思ってた」
和田「みんなゴミゴミ言うけどね! これはれっきとしたリ・サ・イ・ク・ルなの!」
阪口「区切って言わなくていいから」
というわけで和田家では合板などのケミカル系建材はなるべく使用しない主義なのだ。ではどうするのか。
和田「もちろん自然素材ですよ!」
和田が取り出したのは……。そう、担当・水野が踏み抜いて危うく墜落し損ねた、例の腐れ野地板(のじいた)であった(下の写真)。
中山「まだそれを使う気なのか」
和田「いいじゃん、どうせ下地だし」
阪口「ビスが利かないと下地にもならないと思うんだけど」
阪口の鋭いツッコミは当然、無視された。
X筋交いの間柱に中山が苦戦!
野地板を打つ前に間柱(まばしら)を入れなくてはならない。間柱は柱と柱の間に、おおむね455㎜間隔で入れる。間柱の幅がそのまま壁の厚みとなるが、面倒なのは筋交(すじか)いとの取り合いで、筋交いにはめ込むナナメの切り欠きを入れねばならない。特に和田邸では「X筋交い」が2カ所あり、これに間柱を入れるのが、けっこう難題であった(下図参照)。
中山「これはもう有名中学の入試レベルだな。うーむ」
一同「いやいや、もっと簡単だし」
中山「筋交いが前後に交錯しているから、欠き込みは、ええと……」
悩んだ末に仕上げた間柱をはめ込んでみる。見事に左右を間違っていた。
中山「すみません。間柱1本弁償します」
和田「次やったら切腹だから!」
壁の厚みを考えてないし、場所で厚みが違う
ところで和田邸は「真壁(しんかべ)」である。真壁とは柱が見える壁のことで、「和」の雰囲気が強調される仕上がりとなる。
和田「和田家の『和』だね!」
一同「関係ないし!」
真壁は施工に手間がかかり、壁材の「受け」を取り付けないといけない、柱と壁にすき間ができやすいなどの問題がある。これに対して柱ごと隠してしまう「大壁」は、施工が楽ちん、かつ断熱にも優れているのが特長だ。現在の一般住宅は大概「大壁」である。
では和田が和風建築にコダワリがあったのかといえば、そうでもないらしい。和田邸は丸太柱を多用しているので、大壁にできなかったのだ。
阪口「壁の厚みは?」
和田「考えてない!」
阪口「考えとけよ」
中山「面倒だから筋交いの厚みでいいよ」
和田「そうだね。OK!」
単に手間がはぶけるという理由だけの中山の案が通ってしまった。しかしそうなると壁の厚みはたった4.5㎝。寒くないのか?
中山「まあいいか。他人の家だし」
和田「ちょっとちょっと! 自分の家だと思わないと!」
水野「というか、さっきのX筋交いの壁は? 4.5㎝×2=9㎝になっちゃうけど」
和田「9㎝! OK!」
一同「ええーっ!」
壁によって厚みが違うってアリなのか……ま、いいか。他人の家だし。
やはり廃材の窓サッシ。これでいいのか
こうして壁の下地ができていく一方で、気合が入ったのが窓サッシだ。施工は簡単だが、仕上がると達成感に浸れるのが窓サッシである。新品を買うとけっこう高くて、掃き出し窓サイズだと安くても通常5万円を超える。こんな高級品を和田が買うわけがない。どこかの解体現場からもらってくるのである。
和田「ホラ! こんなにいっぱいもらっちゃった!」
そこには産業廃棄物処理場に捨ててあるような泥だらけのサッシ窓と、ヘニョヘニョにゆがんだサッシ枠が山になっている。その汚さに呆然とする一同であった。
阪口「想像をはるかに超える汚さだな」
中山「まあ、洗えばきれいになるよ。洗うんでしょ?」
和田「……え?」
水野「洗わないのね」
和田「別に、考えてないけど」
一同「洗えよ!」
中山「しかも、廃材利用だけに、1つひとつの仕様がバラバラ!」
阪口「いったい何カ所の解体現場を回ったんだ……」
水野「統一感ゼロですね」
サッシ窓の施工は、窓枠を正確につくることに尽きる。垂直と水平をきっちり正確に出すことである。寸法はピッタリではなく、左右合わせて5㎜ほどのアソビを持たせるのがコツだ(たぶん)。ただし多少ゆがんでもなんとかはなる。サッシ窓自体で調整が利くからである。
まず30×40㎜の野縁材(のぶちざい)などで上下左右に枠を設ける。取り付ける材が化粧材(完成時に露出する材)の場合、前もってサンダーをかけ、塗装するなどしておく。ビス止めするときは、なるべくドライバドリルを使うほうがいい。インパクトだとトルクが強すぎてサッシを壊す恐れがある。
期せずして3人それぞれが施工した窓3つが同じ壁に並ぶことになり、完成したサッシ窓を互いに自慢する3名であった。
中山「一番出来がいいのはオレだ」
阪口「なんの。オレのが一番でかいぞ」
和田「私なんか、ゆがんでて鍵かかんないから、サッシの調整ネジを回しちゃったもんね!」(←最下位決定)
文/中山茂大 写真/阪口 克 イラスト/和田義弥
過去記事はこちら!
第1回 基礎工事
第2回 墨付け、刻み
第3回 柱、梁、桁の刻み
第4回 棟上げ目前
第5回 棟上げ
第6回 棟上げ
第7回 棟上げ
第8回 足場組み、家起こし
第9回 屋根
第10回 屋根材張り&プロによる中間チェック
人力社
ライター中山とカメラマン阪口、 ライター和田の旅とDIYを得意とする3人組トリオ。「人力山荘」シリーズでは中山の母屋リフォーム、中山のアネックス新築DIY、和田の自宅新築DIYを連載。阪口も自宅をDIYで新築している。
人力社HP➡www.jinriki.net
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