地域の課題を解決し、新たな魅力を生み出すことに情熱を注ぎ、地域の活性化を目指して奮闘する「地域おこし協力隊」。地方の衰退や過疎化に悩む地域を支援するために活動する若者たちです。この記事では、インドネシア出身で、鹿児島県肝付町で活躍する地域おこし協力隊の活動内容についてクローズアップ。若者たちが地方の未来を切り拓くために取り組む姿勢やアイデアに触れながら、地域おこしの魅力に迫ってみましょう。
――まずは、自己紹介をお願いします
「肝付町地域おこし協力隊のユディカ エルギヤントです。2021年から協力隊に着任しています。出身はインドネシアです。来日して今年で9年目になります」
――肝付町で働く前は何をやっていたんですか
「肝付町に来る前に宮崎県都城市に1年間ぐらい住んでいました。その前には奈良県生駒市に住んでいました。こちらに来る前までは技術者として働いてきました。
技術者をしていた時代から、私は田舎暮らしをしたいと思っており、さまざまな挑戦を行ってきました。田舎暮らしのきっかけは、『ゼロ・ウェイスト・ホーム ―ごみを出さないシンプルな暮らし』(アノニマ・スタジオ)というゴミを最小限にしようという本です。その本をもとに、一年間、いろいろな実践をしてみました。
たとえば、野菜の包装袋を減らすために、家庭菜園をしたり、直売店では“袋なし”で購入しています。そして、卵と肉も、直接養鶏場または肉屋で自分で容器を持って行って買い物をしたりしています。
家庭菜園では、インドネシアの野菜を栽培しました。当時から交流を深めているインドネシアの方々におすそ分けをしました。みなさんから嬉しいと言ってもらえたり、インドネシアの野菜が手に入ることにお礼をいただいています」
――農家のような生活をされていたんですね
「はい。海外ボランティアの受け入れもやり始めて、海外からの旅人たちと一緒に家庭菜園栽培などの交流をしました。そのときに自給自足生活がしたいという思いがあり、田舎暮らしへの思いがどんどん強くなっていきました。実際に私は田舎生活をしたことがなかったので、最初は不安がありました。何から始めていいのかがわからず、移住フェアや農業フェアにも積極的に参加しました。実際に旅に出て、見て回ったりもしました。
――なぜ肝付町で地域おこし協力隊に参加したのですか
「旅先として鹿児島に行ったときに、実家と似たような感じがしましたので、鹿児島に移住を希望しました。実際に鹿児島に馴染めるか不安でしたので、お試し移住体験住宅にも行って、しっかりチェックもしました。そこが、肝付町の『里山の音(ね)』でした。
私の移住目的は『自給自足プラスアルファ(アジアン野菜を栽培から食品加工まで実践)』です。ちょうどそのときに肝付町の地域おこし協力隊募集があったので、応募をしました」
――実際にどんな活動をされていますか
「私の地域おこし協力隊のテーマは、
1. インドネシア野菜を自然農法・有機栽培で育て、食品開発へ
2. インドネシア人労働者の生活サポートや日本語支援を実行
3. 地域のポテンシャルを国内外に紹介
この3つです。1.に関しては、任期が終わった後に自給自足を目指して、インドネシア料理店を開きたいとも思っています」
――ミッションを簡単にまとめてもらいました
JICA国内研修講師を務めるユディカ エルギヤントさん
1. インドネシア野菜を自然農法・有機栽培で育て、食品開発へ
「肝付町で住み始めてみて、農業の知識が浅いことを痛感しました。現在は、自給自足に向けて野菜栽培の知識を増やすため、町内の農家の方々に協力していただき農業見習いをしています。栽培時期から農機具の使い方まで、丁寧に教えていただいています。
たとえば米栽培については、栽培方法が異なる陸稲と⽔稲を学んでいます。⽔を使わずに栽培できる陸稲は⽇本のうるち⽶とインディカ⽶(タイ⽶)を、⽔稲はインディカ⽶とジャバニカ⽶(インドネシア⽶)を栽培しました。米栽培だけではなくトマト、大豆栽培なども教えていただいております」
田植え機見習い実習中のユディカ エルギヤントさん
2. インドネシア人労働者の生活サポートや日本語支援
「現在町内にある漁業会社には、インドネシアから10人ほど技能実習生が来ています。言葉、生活習慣は母国と違いますが、楽しく働きながら生活されています。何か困ったことや助けが必要なときは、私のできる範囲で支援をしています。言葉については、日本語教室を開催したことで、彼らは日本語能力試験で、めでたく合格することができました。また、彼らに日本の文化を紹介したくて、2022年12月31日に町内で日本人と外国人の方々と一緒に餅つき大会(計35人参加)を行いました」
地域交流(餅つき体験)を企画したユディカ エルギヤントさん
3. 地域のポテンシャルを国内外に紹介
「肝付町にはいろいろな自然環境があり、海と山は近くにあります。岸良浜ではアウトドアキャンプ体験ができます。
特産品は辺塚だいだい、ポンカンとタンカンがあります。昨年県内の学生を受け入れ、農業体験のときにミカン収穫体験をしました。
このような肝付町の魅力を海外の方々へ紹介しています。個人的に海外ボランティア受け入れをし、自分の自然農法・有機農法を支援いただき、地域の観光地や行事と活動などをインスタグラム(@yudika_ergiyanto)で発信をしています」
ユディカ エルギヤントさんのInstagram(@yudika_ergiyanto)
最後に、ユディカ エルギヤントさんからコメントをいただきました。
「地域おこし協力隊の任期が終わったあと、インドネシア料理店の開業準備に向けて頑張りたいと思います。
地域の方々と一緒に支え合いながら楽しく田舎暮らしをしています。
田舎暮らしに憧れる方は是非一度体験をしてみてください。肝付町でお待ちしております!!」
決して流暢な日本語とは言えないユディカ エルギヤントさん。ただ、その一生懸命な姿勢に日本人以上の日本への愛を感じることができ、日本の田舎で暮らすことの素晴らしさを再認識させられました。
取材・文/田舎暮らしの本 Web編集部
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田舎暮らしの本編集部
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