掲載:2020年10月号
古民家は、古きよき趣が楽しめる日本の宝。一方で、経年劣化が激しかったり、住みづらかったり、何らかの手を加えたほうが望ましいものがほとんど。そこで古民家改修の要点を、古民家物件のプロにアドバイスしてもらった。
物件選びの段階から改修の内容を意識しよう
改修費を大きく抑えるには、基礎、雨漏り、立地、周辺環境が大切
「格安で売られている古民家物件も見られますが、実際は数百万円あるいは1000万円以上かけて改修しないと住めないものがほとんどです」
価格優先の安易な物件選びに注意を促すのは、白野産業の白野貴久さん。同社では欠陥があれば直してから売るため、物件価格は上がるものの、あとから高額の出費が発生するリスクはないという。
改修費を抑えるための物件選びのポイントについては、次のように話す。
「まず大切なのは基礎部分です。大きな傾きは論外ですが、床が沈み込むなら要注意。構造材が腐っているか、シロアリ被害があるのかもしれません。もう1つが雨漏りの有無。特に屋根の改修はお金がかかるので、破損が広域におよぶ物件は避けるのが賢明でしょう」
立地や周辺環境も事前に確認しておくべきだと言う。
「里山の場合、近くの山からの水が家の床下に流れ込むようだと湿気がたまり、カビ発生や家の傷みにつながります。下水道がない地域でのトイレの水洗化には浄化槽を設置しますが、排水先となる水路が遠いと配管に多額の費用がかかります」
構造や環境に大きな問題がない古民家なら、適切に改修を施せば気持ちよく暮らせる。
その一例が、今回取材した京都府中部の南丹市(なんたんし)郊外に位置する、築100年以上の元庄屋の住宅だ。菜園や竹林を含む1000坪近い敷地に3棟の土蔵が並び、約70坪の平屋の母屋がゆったりとたたずむ。
特徴は、1尺以上あるケヤキの大黒柱や極太の梁など、しっかりとした構造。長さ約17mの土間も印象的で、台所部分を含めて既存のまま残している。
「伝統的な日本家屋を探している方も多いですから。現代的に暮らすなら、床を上げて板張りにしてもいいでしょう」
一方で、雨漏りがあった屋根や天井、シロアリ被害があった床下は補修。和室のうち5室は畳を新調し、もう1室はフローリングに。これらを含めて母屋で約514万円、長屋門を合わせて総額約720万円におよぶ改修を実施済みだ。価格は1880万円。
「古民家ならではのよさを残しつつ、生活に支障がある部分に最低限の手を加えました」
と、白野さん。市街化調整区域のため店舗などとしての利用はできないが、好みやライフスタイルに応じて、アレンジを楽しむ余地はまだまだ多い。
よくある6つの古民家リフォームのポイント
【屋根】屋根の葺き替え工事は高コストになりがち
「改修工事で一番費用がかかるのは屋根。この物件くらいの規模になると、仮にすべての瓦を葺き替えれば800万円以上になります」と白野さん。通常は破損した瓦の交換だけを行うが、トタン屋根の場合、さび落としと塗り替え程度なら30坪程度で40万円ほど。
【外壁】外壁の「浮き」や「ひずみ」は要補修のサイン
【サッシ】「趣よりも快適性」ならアルミサッシに交換
【台所】かまどとシステムキッチンの併用もあり
【床】和室ばかりの空間にフローリングでメリハリ
【土間】広々とした土間は風情と不自由が背中合わせ
【畳】新しい畳を入れて部屋の印象をリフレッシュ
【天井】シミは雨漏り跡とは限らない
【壁】補修だけでなく、好みに応じて色の変更も
そのほかの古民家リフォームのポイント
【風呂】
【トイレ】
【給湯・浄化槽】
【土台】
文・写真/笹木博幸
この記事のタグ
田舎暮らしの記事をシェアする