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田舎暮らしの本 12月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 12月号

11月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

【茨城県石岡市】イベントや農体験を通して都市と農村をつなぐ共同農場

2021年5月号掲載

かつて八郷(やさと)といわれた茨城県石岡市西部の農村地帯。そこに今から半世紀ほど前に設立され、多くの移住者の足掛かりになった共同農場がある。農場の名前は「暮らしの実験室」。本当に豊かな暮らしを実験と実践でつくり出し、人、もの、ことをつなぐ場所。

石岡市は、茨城県のほぼ中央に位置し、西に筑波山、東に霞ヶ浦を有する。人口約7万3000人。都心からの距離はおよそ70㎞で、常磐自動車道のICと常磐線の駅があり、首都圏からのアクセスのよさも魅力。市の西部には田園地帯が広がり、果樹、野菜、米など多くの農産物が生産されている。

「暮らしの実験室 やさと農場」のスタッフ。左から、動物担当の茨木さん、耕作放棄地を再生している羽田さん、事務・企画担当の姜さん、畑担当の舟田さん。

体験やイベントが
暮らしを考えるきっかけに

 筑波山の麓に広がる茨城県石岡市は、有機農業が盛んな地域だ。その発端になったのが、1974年に都市に暮らす人たちが安心安全な作物を自分たちでつくって食べるために立ち上げた共同農場「たまごの会」。当時は高度経済成長のひずみで、公害や化学物質による健康被害が問題視されており、農業も化学肥料や薬剤の使用に懸念が持たれていた時代。そんな背景もあって設立された農場は、地域に有機農業を根付かせると同時に、都市と農村をつなぐ場としての役割も果たすようになった。実際、この農場を通して石岡に移住してきた人は少なくない。現在、農場は「暮らしの実験室 やさと農場」と名前を変え、4人のスタッフによって運営されているが、全員移住者である。

 兵庫県出身の茨木貴泰(いばらき・やすたか)さん(39歳)は、学生時代に農業研修に来て、卒業後スタッフになった。

「研修には来たものの、じつは就農するつもりはなかったんです。農場ではさまざまなイベントやワークショップもやっているんですが、企画を提案するとけっこう好きなようにやらせてもらえたんですよ。そういう何でも挑戦できる自由な雰囲気がよかったんですよね」

 家族で農場に暮らす羽田知洋(はだ・ともひろ)さん(37歳)は、茨木さんの大学時代の友人で、やはり研修生を経てスタッフになった。岡山県出身で、東京で働いていた姜咲知子(かん・さちこ)さん(45歳)は、ここでのイベントが都会での暮らしを見つめ直すきっかけになり、その後スタッフに。

 神奈川県出身の舟田靖章(ふなだ・やすあき)さん(38歳)は、WWOOF(ウーフ:お金のやりとりなしで農作業と宿泊・食事を交換する仕組み)をしながら日本各地を旅していたが、この農場に来て足が止まった。

「ここはビジネスとしての農業じゃなくて、農場の名前にもあるように、いろいろなことを試しながら、暮らし方そのものを考えていくというか、いい意味で遊びがあるんですよ」

ニワトリ約400羽を平飼いし、野菜と併せて卵を会員に届けている。産卵率が落ちたニワトリは肉にする。

自家繁殖させた約20頭のブタを飼育し、肉も販売している。フンは発酵させて畑の肥料にする。

最大20人程度の宿泊が可能(相部屋含む)。共同のキッチンとリビングがあり、シェアハウスのような雰囲気。

スタッフの舟田さんは、じつは日本人で初めてアメリカ三大トレイルを走破したちょっとすごいハイカー。

 いずれにしても、この場に小さな関係を持つことから興味を膨らませ、結果的にそれが移住につながっている。みんなが口をそろえて言うのは、それまで石岡という地域については何も知らなかったということだ。大切なのは場所ではない。そこで自分は何がしたいか、何ができるのかということなのだ。

 短期でも長期でも農場に住むことができて、食事の心配がないのも地域との関係を築くにはうってつけ。茨木さんも舟田さんも、結婚するまで農場に暮らしていたという。ちなみにおふたりの奥さまとの出会いも農場のイベントである。

 半世紀近くにわたり、都市と農村をつないできた共同農場。時代と世代は変わってもここで育まれる農と暮らしには、訪れる人にそれまでの生き方をちょっと考えさせてくれる何かがある。それはずっと変わらない。

暮らしの実験室 やさと農場

畑3反、田んぼ1町を耕作し、無農薬無化学肥料で作物を栽培。HPから野菜セットのお試し購入も可能。

「興味がある人、見学や体験いつでもどうぞ」(姜咲知子さん)

ブタやニワトリを飼育し、それによって得られる肥料を使った循環型の有機農業を実践する農場。特定の代表や所有者がいるわけではなく、現在は4人のスタッフで運営されている。収穫物は会員に届けられ(シェアされ)、その料金はみんなの農場を持続的に運営していくための維持費となる。農だけではなく、暮らしに関係するさまざまなものをつくり出す場であり、遊びの場であり、人と人とをつなぐ場でもある。事前連絡のうえで見学可能。農体験、WWOOF、イベント、ワークショップなどの詳しい情報はHP、Facebookを参照。

茨城県石岡市柿岡1297-1

☎0299-43-6769

http://kurashilabo.net

https://www.facebook.com/yasato.farm

 

石岡市移住支援情報

石岡を知ることができる移住ツアー

石岡市への移住を検討している人に向けて、市の魅力を体感できる移住ツアーを定期的に実施。先輩移住者に直接話を聞くことができ、暮らし方のヒントが見つかる。また、農業が盛んな地域でもあることから、新規就農をサポートする研修制度も充実。有機農業で独立を目指す研修生の受け入れ、相談も受け付けている。そのほか、移住に関する情報は石岡市移住定住支援ポータルサイト「MIPPE(みっぺ)」を参照。

政策企画課 ☎0299-23-1111

MIPPE

https://www.city.ishioka.lg.jp/page/dir005559.html

古くは国府が置かれていたまち。市内には関東大震災後に建てられた看板建築と呼ばれる古い建物が軒を連ねている。

石岡市は日本有数のスカイスポーツエリア。晴れた日はハンググライダーやパラグライダーが大空を舞う。

茨城県移住支援情報

茨城県移住相談・セミナー情報

「暮らし」「就職」の専門相談員によるオンラインでの移住セミナーや個別相談会を開催するほか、市町村担当者がオンライン相談を随時受け付けるなど、親身にサポートしている。 また、県の移住定住ポータルサイト「Re:BARAKI」では、先輩移住者のインタビューや各市町村の支援制度、セミナーやイベントの情報などを発信している。

政策企画部計画推進課移住推進グループ

☎029-301-2536

Re:BARAKI

https://iju-ibaraki.jp/

県北部、大子町の名瀑、月待の滝。四季折々美しい姿を見せるパワースポット。

ひたち海浜公園で4月~5月に見ごろを迎えるネモフィラ。丘が青一色に染まる。

文/和田義弥 写真/三枝直路

 

 

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