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田舎暮らしの本 5月号

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田舎暮らしの本 5月号

3月3日(火)
990円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

ニワトリ先生/自給自足を夢見て脱サラ農家37年(53)【千葉県八街市】

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 5月4日「老人の介護をし、若者の回復を喜ぶ」。

 すばらしい朝である。たぶん年寄りの嫌味になってしまうだろうが、テレビで見る有名観光地のあのにぎわい。若い頃、通勤に使った山手線と同じくらいの混雑ではないか。袖すり合うも他生の縁・・・まさに袖と袖がくっつきあうほどの混雑だ。あれでホントに楽しいかなあ?  いや、人の心はさまざまだ。人気(ひとけ)のない荒涼とした風景を独り歩くよりも、山手線みたいな人混みを歩く方が楽しい・・・そういう人も少なくはないのであろうが、僕はダメだな。騒がしい音楽が嫌い。人混みが嫌い・・・そんな僕にとって、旺盛な新緑で目の前がふさがれ、ほぼ視界不良となったいま、耳に届くのはウグイスの鳴き声、「ちょっと来い」のコジュケイの鳴き声だけ。これぞまさしくゴールデンウィークなのである。この下の写真はブルーベリーとラズベリーの庭。さらにその下が満開となったレモンの花。温暖な地域の人にはレモン栽培なんてなんでもないことだろうが、マイナス5度が日常の1月から2月、僕は毎夕、毛布をスッポリかぶせて防寒してやるのだ。

 気温は28度ほど。熱中症対策を、こまめな水分補給を、テレビはそう連呼しているが、28度なんて序の口ではないか。僕にはすこぶる快適な温度だ。ハウスに入り、トマトの脇芽つみ、ピーマンの土寄せ。そしていつもの荷造りをすませた後は、ピーナツとナスのポットまき。

 やることいっぱいいの畑仕事の合間にも、ニワトリの世話は忘れない。上の写真は、かつて群れのボスだった、今はすっかり老齢のくろちゃんだ。前回書いたように、生後2年という若いオスにボスの座を奪われた。それ自体は常にある世代交代だが、その若いボスはどうにも意地が悪い。血が出るまでくろちゃんを攻撃する。悲鳴を聴くたび僕は畑から駆け付けるのだが、現場到着が間に合わないこともある。それで、遠くの畑に向かう時はくろちゃんをパソコン部屋に閉じ込めておくことにした。牛乳を飲ませ、ごはんを盛った皿を近くに置いておく。かなり視力が落ちているので小さい皿ではダメなのだ。空振りしてしまうのだ。でもって大きな皿のどこをつついてもハズレないようにしてやる。イジメに遭うと狭いところに頭から入って恐怖にふるえるくろちゃんだが、僕がそばに行って「くろちゃん・・・」と声をかけるとホツとした表情を見せる。目はかなり悪いが耳は衰えていないようだ。僕の呼びかけにパッと顔を上げ、まばたきをする。そのくろちゃんがいま僕の椅子につかまってくつろいでいる。ちょっとばかり糞を落としてしまうこともあるけれど、愛を伴う老々介護だもの、そんなことは気にならない。

 一方、こちらは喜ばしい若者たちの姿である。写真の左。覚えておられる方もいるかな。ハヤブサに襲われ、数十メートルの距離をくわえられ、うめき声とともに空を飛び去ったちびちゃん。地団太踏んで悔しがった僕だが、奇跡が起こったのだ。ゴッソリ羽をかじり取られ血だらけの姿で畑の坂道をヨタヨタ登り、僕と再会したのだ。1週間の治療の甲斐あり、深手を負った羽はもう元に戻った。仕事で行き来するたび、僕は庭で遊ぶちびちゃんに声をかける。クククッ、コココッ、すると小さく返事する。そのまま通り過ぎるつもりだったが心変わりする。抱き上げる。話しかける。虫はいたかい、いっぱい食べたかい・・・僕の言葉をじっと聞いている。

この記事を書いた人

中村顕治

中村顕治

【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。

Website:https://ameblo.jp/inakagurasi31nen/

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