これから移住する人に向けて、田舎暮らしで気になることをランキング形式で紹介。今回は、「現地体験ツアーの回数が多い自治体」と「現地案内数が多い自治体」をクローズアップします。現地へ誘導してくれる自治体にはどういう傾向があるのか、本誌ライターが分析・解説します。
弊誌「田舎暮らしの本」の人気企画『住みたい田舎ベストランキング』では、回答いただいたアンケートをもとに、さまざまな角度からユニークな取り組みをしている自治体をランキング化。読者の移住地選びの参考になるデータを提供しています。
【集計方法】
対象者:全国の自治体
調査方法:『田舎暮らしの本』からのアンケート
(アンケート送付は、「道府県庁経由でのメール」および「各自治体へ編集部から直接メール」の2ルート)
回答数:587自治体
アンケート実施:2023年10月末 ~ 11月下旬
※各項目の算出方法は表の下に別途記載しています。
掲載:田舎暮らしの本 2024年2月号
その地域のいいところは、現地を見てみなければわからないもの。都会で開催するセミナーや相談会も情報収集にはいい機会になりますが、もう一歩先へ進むには現地体験ツアーや現地案内を頻繁に実施している自治体をマークして、実際に現地へ足を運ぶプロセスが重要になってきます。
【移住体験ツアーの回数が多い自治体ランキング】
※算出方法:2023年度に開催した(2023年4月1日から10月末時点、開催予定も含む)現地体験ツアーの回数。
上の表は2023年度に開催した現地体験ツアーの回数が多い自治体をランキングしたもの。上位2市がダントツで多いことがわかりますが、全国各地で開かれているようです。
第1位:福島県南相馬市(みなみそうまし)
アンケート回答では、現地案内回数が99回(2023年4月~10月末)と目立って多い福島県南相馬市。東日本大震災による原子力災害で市南部の小高地区が避難指示区域に指定された自治体ですが、2016年に大部分が避難解除され復興へ向けて動き出しています。
現地体験ツアーも9割は小高地区の「遊ぶ広報」と呼ばれる催しです。内容は、参加者と地域をつなぐ現地ガイドによるアテンド付きのオーダーメイド型ツアー。体験したことをSNSで発信すると、滞在費の補助も受けられます。ツアーの参加者からは、「地域のことをまったく知らないのに楽しみながらまちの人、こと、場所、雰囲気を知ることができ、とてもよい体験ができました」といった声が聞かれました。
また、市外に住んでいる南相馬市に関心がある方や移住を検討されている方が無料で登録できる「南相馬市サポーター」に向けた南相馬市サポーターツアーも行っています。地域の人との交流などを通じて、観光ツアーとはひと味違った南相馬の魅力を体験できます。体験プログラムでは南相馬市での仕事や暮らしを通じて、自然、文化、食、人との交流ができます。数種類のプログラムの中から自分に合うものを選び、普段の生活では気付かない「何か」を見つけてもらいます。自分の興味や関心に合わせて選べる現地体験ツアーはもちろん、現地での暮らしを体験できる「お試しハウス」の提供、移住検討時の市内でのタクシー・レンタカーの利用料金の補助など、現地へ来るための支援制度も充実しています。
南相馬市移住定住サイト/南相馬市公式ウェブサイト -Minamisoma City-
子育て支援に力を入れていて、幼児教育・保育の無償化、家庭保育への支援金、18歳以下の医療費無料化などで切れ目なくサポートしています。
【現地案内数が多い自治体ランキング】
※算出方法:2023年度(2023年4月1日から10月末時点)に行った移住希望者への現地案内数。
上の表は2023年度に行った移住希望者の現地案内数をランキングしたもの。やや西日本に偏っていますが、100回を超える自治体が10以上もあります。
第1位:大分県臼杵市(うすきし)
大分県臼杵市は空き家バンクの問い合わせが多く、現地案内のほとんどが物件見学。空き家バンクは物件によって20人ほど見学待ちのものもあります。見学の際には市内も案内しています。「おためしハウス」を用意しているので、そちらで宿泊して市内見学という方法もあります。
また、臼杵市は有機農業が盛んなことから、農業体験や農家見学の希望も多いとのこと。ほかにも「うすき移住オーダーメイドツアー」を開催。こちらは2024年度も行う予定で各種体験料、宿泊費、片道分の交通費など1泊2日分を臼杵市が負担します。
暮らす | うすき暮らしナビ (usuki-job.com)
大分県臼杵市で行われている現地案内の様子です。空き家バンクの物件見学のほか、市内案内もしています。
現地での催しや案内数が多い自治体は、移住支援にも熱心なところが多いです。回数が多いということは、移住希望者にとって入り口のハードルが低いのが特徴。ネットで盛んに情報発信しているので、それを見逃さないようにしたいものです。
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この記事を書いた人
山本一典
田舎暮らしライター/1959年、北海道北見市生まれ。神奈川大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、85年からフリーライター。『毎日グラフ』『月刊ミリオン』で連載を執筆。87年の『田舎暮らしの本』創刊から取材スタッフとして活動。2001年に一家で福島県田村市都路町に移住。著書に『田舎不動産の見方・買い方』(宝島社)、『失敗しない田舎暮らし入門』『夫婦いっしょに田舎暮らしを実現する本』『お金がなくても田舎暮らしを成功させる100カ条』『福島で生きる!』(いずれも洋泉社)など。
Website:https://miyakozi81.blog.fc2.com/
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