大阪でカフェや靴工房を営んでいた3人が、開業の地として選んだのは滋賀県長浜市。店の場所は長浜駅から車で15~20分。田園風景や伊吹山が見える静かなエリアでその雰囲気にひかれる客も多い。2周年を迎え、充実した日々を送る3人の店を訪ねた。
掲載:2024年12月号
滋賀県長浜市 (ながはまし)
滋賀県の東北部に位置する長浜市は、琵琶湖や伊吹山に抱かれ、豊かな自然に恵まれたエリア。中心地のJR長浜駅周辺は古いまち並みが広がり、観光地としてにぎわいを見せる。写真は木之本町大見の風景。新幹線または特急利用の場合、長浜駅より名古屋へ約49分、大阪へ約1時間16分。
築90年の空き家を3人で折半し購入、改築
赤尾さん(左)と清水さん(中央)は兵庫県出身で美容学校勤務時代の同僚。東さん(右)は長崎県出身で、福岡県でカフェを営んでいた際、2人と知り合いに。その後、東さんは清水さんと一緒にカフェを経営することになり、3人は長い友人関係が続いている。
大阪で10年以上にわたり店を営んできた3人が、築90年の古民家で一緒に店をオープンさせたのは2022年9月のこと。母屋では清水すがたさん(51歳)、東 祥平(ひがししょうへい)へいさん(50歳)がカフェと雑貨「一心茶房+一點の蒸しぱん」を、離れでは手づくり靴「Ippo ippo(イッポ イッポ)」を赤尾恵利子さん(49歳)が営む。それぞれの得意分野を活かした店は評判を呼び、遠方から訪れるファンも少なくない。
3人がここに至るまでにはさまざまな経緯があった。清水さん、東さんが路地裏で隠れ家的に営んできたカフェは、コロナ禍に周辺の環境が変化した。さらに赤尾さんの靴工房が入っていたビルが、耐震基準の関係で取り壊しが決定したのだ。
「3人とも自然のなかで店を営みたいという思いがあったので、この機会に移住して、1つの場所で3人の店をやろうと古民家探しを始めました」(清水さん)
清水さん、東さんとも調理を担当し、会計や接客は臨機応変に対応。売上は担当するメニューで振り分けている。
写真左側が母屋の「一心茶房+一點の蒸しぱん」、右側が離れにある「Ippo ippo」。
東さん担当の蒸しパンは黒糖クリームチーズ、きなこチョコなど種類豊富。テイクアウトや、スープと蒸し野菜が付いたランチセットも提供。
清水さんは定食とカレーを担当。野菜たっぷりの小鉢、具だくさん味噌汁、雑穀米がセットの一心定食は1320円、気まぐれカレーは1210円。
窓から田園風景が見えるカフェスペースには薪ストーブもある。テーブル席は2人用もあり、最大8組まで収容できる。土間などでは雑貨も販売。客単価は2000円で、集客人数は日により異なる。
カフェと雑貨「一心茶房+一點の蒸しぱん」
住所/滋賀県長浜市東上坂町1380 ☎080-6118-1138 営 11時〜16時 定休日/ 不定休(予約、定休日についてはInstagramを参照) Instagram/@issinchabo.itten
淡路島なども候補地にしたものの、最終的に長浜市の空き家バンクを通して現在の物件を見つけた。物件には客用の駐車スペースがあり、離れもある。25年間空き家だったが、所有者が管理をていねいにしてきたため、状態もよかった。物件見学の際、近隣住人が気さくに話しかけてくれたことも決め手で、22年2月に購入を決意。改築期間は約3カ月。床をフローリングに変えるなど補修した箇所もあるが、家屋の基礎、天井や柱はそのまま活かすことができた。寒がりの赤尾さんたっての希望で薪ストーブや断熱材も導入。
「想像以上に冬は寒いですが、赤尾さんのおかげで長浜の冬が好きになりました」(東さん)
笑顔の3人だが、金銭面についてはしっかりと取り決めを行っている。売上はそれぞれの担当分を収入に。物件の購入費、その後発生する修繕費、共同購入した車など、3人で共有するものはすべて3等分で支払う。また、2階にはそれぞれの個室があり、住居として活用しているが、日常生活は干渉し合わないよう心がけているという。とはいえ、誰かの具合が悪くなれば気遣うなど、3人で支え合う生活は心強いと口を揃える。
移住して2年。想像していたよりも忙しい日々は続くが、窓から田園や伊吹山が見える今の暮らしは気に入っているという。今後は、土に触れ、畑で野菜を育てることが目標だが、すでに赤尾さんは少しずつ畑を耕し始めた。3人の夢はそう遠くないのかもしれない。
離れで手づくり靴の工房とお店「Ippo ippo」を営む赤尾さん。
手づくり靴「Ippo ippo 」
住所/滋賀県長浜市東上坂町1380 ☎090-9612-8905 ※来店時は要問い合わせ https://ippoippo23.exblog.jp
革の質感が感じられ、コロンとしたフォルムが特徴の靴。価格は4万円前後~6万円弱で、現在、完成まで1年待ち。
工房に来店したうえでサイズ決定や足の悩み、デザインの希望などを相談できる。イベント出店でも同様に注文できる。出店情報はブログを参照。
開業へのアドバイス
車が必要な場所なら、お客さま用駐車場は必須。お客さまに路上駐車をさせないなど、地域に迷惑をかけないことが第一です(清水さん)。移住前に経営の経験を積んでおくことも大切です。何か起きても対処できるはず(東さん)。複数人で経営するなら、誰か1人でも納得できないことは無理して進めないこと。全員が納得できれば自然と話が転がり始めます(赤尾さん)。
「地域に迷惑をかけないことが大 切!」
長浜市の移住の問い合わせ
「長浜暮らし」へいざなう移住コンシェルジュが在籍
琵琶湖とほぼ同じ大きさの面積を誇る広大な長浜市は、京阪神、東海、北陸の交通結節点として栄えた要衝の都市。自然環境に恵まれ、長浜城や小谷城跡をはじめとする「戦国の聖地」としても有名。長浜市移住定住促進協議会では移住コンシェルジュが移住相談などをサポートしている。
問い合わせ/移住定住促進協議会
☎︎050-1751-2780
https://www.nagahama-capital.net
移住・田舎暮らし支援サイト「ナガハマキャピタル」では、空き家情報や移住者のインタビュー記事などを掲載。
田舎暮らし体験住宅「さきち」は最大7日間利用可能(要事前予約)。
「長浜暮らし」をサポートします。気軽にご相談ください!(移住コンシェルジュ 左から久保田さん・矢島さん)
文・写真/横澤寛子 写真提供/一心茶房+一點の蒸しぱん、長浜市
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