しょう油と砂糖の甘辛い味でいただく日本独特の料理「すき焼き」。年末年始に家族や親せきが集まった際、みんなですき焼きをいただく家も多いだろう。ところですき焼きのつくり方は関西風と関東風で異なり、またメインの具材も牛肉、豚肉、鶏肉、魚など地域によりさまざま。その違いを、すき焼きの歴史とともにひもといてみよう。
掲載:2025年1月号
薄切り肉を「焼く」のが関西風。甘辛タレで「煮る」のが関東風
牛肉などのメイン食材を、ネギ、豆腐、しらたきなどと一緒に調理して、しょう油と砂糖の甘辛い味付けでいただくすき焼き。もともとは、江戸時代、農作業の合間に農機具の鋤すきの金属部分で魚や野菜を焼いて食べたことから「鋤焼き」といわれるようになったとされる。
今のように牛肉を使うようになったのは、肉を食べる文化が入ってきた明治時代以降。すき焼きの発祥とされる京都では、鉄鍋に牛脂を引き、肉を先に焼いてから野菜を加え、味付けして食べた。これが今の「関西風すき焼き」。
一方、関東では、割りしたというタレを煮立て、そこに肉と野菜を入れて煮る「牛鍋」の店が横浜にでき、大流行となった。その後、関東大震災で東京の牛鍋屋の多くは被害を受けて閉店したため、関西風の割りしたを使わないすき焼きが関東に伝わり、すき焼きの名前が一般化していった。
家庭では、肉を少し焼いたあとに、ほかの食材と割りしたや市販のすき焼きのたれを入れて煮る、関東風と関西風のいいとこどりな調理法もあるようだ。わが家でもこれ。ちなみに、近畿地方や四国では、最初に肉を焼く「関西風」が主流だという。
牛肉以外にも、豚肉や鶏肉、魚をすき焼きにする地域も存在!
すき焼きの定番食材といえば、牛肉に長ネギ、焼き豆腐、しらたき、シイタケ、ハクサイ、春菊など。じつはメインの食材は牛肉に限らない。北海道や北陸、北関東では豚肉を使うこともあるし、東海、近畿、中国などでは鶏肉を使うこともあるようだ。
愛知県では、「かしわのひきずり」という郷土料理があり、「かしわ」は鶏肉、「ひきずり」とはすき焼きのことだ。
島根県では、「へか焼き」という、魚を使ったすき焼きがある。「へか」とは農機具のことだ。大田市では、近海で獲れた魚をその日の夕方に水揚げする「一日漁」という漁があり、へか焼きには、一日漁で獲れたアマダイ、カレイ、ノドグロなどが使われる。
また群馬県は、上州牛や下仁田ねぎ、しらたき、ハクサイ、春菊、シイタケなどの農畜産物が豊かで、すき焼きの自給率100%を誇る。
ほかにも、滋賀県の「じゅんじゅん」や三重県の「じふ煮」など、バリエーションは多い。大勢で集まって食べるすき焼きはまた特別だ。たまにはひと味違う各地のすき焼きで正月を祝ってみてはいかがだろう。
愛知県の郷土料理「かしわのひきずり」。「ひきずり」は、あまりのおいしさに皿をひきずり合ったことに由来するという説もある。鶏肉は、肉のほか、メスからとれる玉みち(未成熟卵)も好んで入れる。(写真提供:愛知県)
すき焼き自給率100%の群馬県。全国で高い評価を受ける上州牛、日本の生産量の9割以上を占めるコンニャクイモ、伝統野菜の下仁田ねぎなど、農畜産物が豊富な群馬県では、すき焼きに使う食材が100%自給できる。(写真提供:観光ぐんま写真館)
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