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田舎暮らしの本 5月号

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田舎暮らしの本 5月号

3月3日(月)
890円(税込)

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人はどれほどの土地を必要とするか/自給自足を夢見て脱サラ農家40年(67)【千葉県八街市】

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雪の日の思索

人はどれほどの土地を必要とするか_田舎暮らしの本

1DKの限界

 心地よい光と暖かさで喜んだのも束の間、3月の関東は雪模様となった。東京でも数センチの積雪とテレビは興奮気味に伝えている。当地は雪ではなく雨。日中の気温2度。思い通りに動かぬ手でなんとか仕事をこなす。僕にはおかしな信念がある。きびしくキツイ環境の中でこそ人間の体は強さを増す……。

 さて1DK家賃10万円の話をもう少し書く。これから書くことは、ひょっとしたら“放送倫理規定”に引っ掛かるかもしれない。だが、根幹はあくまで生物学的見地からの考察。さまざまな動物を飼ってきた男の真摯な論述だと思っていただきたい。

 テレビで、もう1人子どもがほしいですが今の住居の狭さでは不可能です。30代初めの女性は苦笑しながらそう言った。当人も、その言葉を聴く人も、家族3人ですでに満杯の1DKにもう1人の子どもは無理……すなわち物理的空間の問題と捉えたことであろう。

 しかし、僕は別な視点から考えた。子どもが生まれるためにはセックスする必要がある。1DKの空間では、すでに3歳、4歳になっている子をそばにおいて夫婦が交わることは難しい。独立した夫婦の部屋あってこそ可能となる。少子化の原因は一概には言えない。僕の視点では夫婦が気兼ねなく交われるような空間がないことも大きな理由ではないか。

秘め事の文化

 男女の交わりを昔は「秘め事」と称した。人目に触れぬようになす二人だけの秘めたる行動。確かなことは分からないが、他人の目に触れぬよう夜の暗い空間で交わる、それはヒトという動物だけではあるまいか。

 これは僕が所蔵する写真の中でもとりわけ貴重な1枚である。オスが背後からしっかりメスを抱く。この場面を見ながら生物界における命の連鎖の確かさを想う。カブトムシの一生は短い。わずか1年という寿命のほとんどを幼虫として地中で過ごし、地上で生きるのは3か月と言われる。

人はどれほどの土地を必要とするか_田舎暮らしの本

社会規範と人間の本能

 人間世界におけるセックス、その究極は精神の解放ではないか……78歳という年齢に沿ったそれなりの経験をしてきた僕はそう考える。人間は社会の規範に縛られながら生きている。それはいわば化粧した顔。社会構造が発達し、第一次産業の従事者が減り、都市での生活者が主流となり、彼らが国の経済を牽引する高度な社会になればなるほど人間の行動を縛る規範は増えていく。男女の交わりとは、その社会の規範を捨てた、化粧を拭い取った、スッポンポンの精神、素の顔、それでなされるものだと言えよう。

 専業主婦という言葉も今や古臭くなったが、夫婦して外で働くことが一般的となった現在は、男女の秘め事にブレーキを掛ける一因となってはいまいか。夫もしくは妻のどちらかが今夜は秘め事をしたいと望む。が、もうこんな時刻だ、オレは明日は朝一番で取引先のX氏に会わねばならない。ワタシは部内の会議があるわ……そんなこんなの事情でもって一方の欲望を他方が受け容れられない。かようなことは少なくないのではあるまいか。

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この記事を書いた人

中村顕治

中村顕治

【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。

Website:https://ameblo.jp/inakagurasi31nen/

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