田舎で家庭菜園！畑付き空き家を見つけて自分らしい暮らしをはじめよう

教えて！ 移住プランナー仲西さん　vol.13

移住プランナー、移住専門ファイナンシャルプランナー、空き家相談士──。複数の専門資格を持ち、これまでに約2500組の移住相談に対応してきた仲西康至（なかにし・こうじ）さんが、地方移住に関する疑問に答える連載「教えて！移住プランナー仲西さん」。第14回のテーマは、「畑地付き空き家の探し方」！ 「田舎でDIYを楽しみながら暮らしたい」「家庭菜園で自給的な生活をしたい」といった理想を描く人は少なくありません。物件探しのポイントや農地取得の注意点、移住先選びのヒントなどを、仲西さんが丁寧にアドバイスします。

「田舎には放置された空き家が増えていると聞きます。私たち夫婦は、田舎の空き家を購入して、自分たちでDIYするのが夢です。また、畑地を購入して野菜作りも楽しみたいです。私たちの夢は叶えるにはどうしたら良いですか？（相談者A：神奈川県、30代夫婦）」

１．「畑地付き空き家」の見つけ方

皆さんこんにちは、移住プランナーの仲西です。

今回の相談者Aさんは、とても素敵な夢をお持ちですね！ 田舎で菜園を楽しめれば、本当に豊かな生活になるはずです。

田舎には、畑地付きの空き家はたくさんありますが、クリアしなければならない問題もあります。まずは、移住先がまだ決まっていないのであれば、エリアを絞り込むことから始めましょう。そして、ある程度、エリアが絞り込まれてくれば、各自治体が運営する「空き家バンク」を閲覧しては如何でしょうか。

もしも、移住先がすでに決まっているのならば、地元の不動産会社に問い合わせてみるのも良いでしょう。ネットには出ていない物件情報を持っていることもあります。また、現地に赴いて地域の人たちから直接情報を集めると効果的です。

移住体験住宅等を活用し、地域の人たちと関係を築くことで、良い物件にめぐり会えるかもしれません。
移住体験住宅を活用することは、地域の人たちとの交流が持ちやすくなるメリットがあるので、是非おススメいたしますね。

住まい選びのポイントは、「物件と地域のどちらを優先するのか？」について、事前に決めておくことです。そうすることで、悩むこともなくスムーズに進むかもしれません。また、住まいは一日で最も多くの時間を過ごし、心を癒やしてくれるスペースです。妥協はしないで、慎重に選ぶことが大切ですね。

農地の購入について

令和5年4月1日に農地法が改正され、農地取得の際に求められていた下限面積要件が廃止されました。これにより、個人が小規模な農地を取得しやすくなりました。ただし、農家以外の一般の方が農地を購入する際には、農業委員会に「農地法３条の規定による許可申請書」と「営農計画書」を提出する必要があります。

今回の相談者Aさんのように、家庭菜園を目的として農地の購入を希望する人は少なくありません。もちろん、農地を購入することは可能です。しかし、家庭菜園の規模によっては、それほど大きい農地は必要ないかもしれません。

例えば、田舎の空き家物件には、敷地内（宅地内）で家庭菜園が楽しめるものもあります。地目が「宅地」でも、小規模な菜園を作ることは基本的に可能です。農業初心者ならば、いきなり大きな農地を購入するのではなく、宅地内の小さな菜園から始めても良いかもしれません。

「畑地付き空き家」を探すときのポイント

今回の相談者Aさんは、畑地付き空き家を購入し、家庭菜園等を楽しむことを希望されています。そこで、畑地付き空き家を探すときのポイントについてお伝えしますね。

（１）資金計画を立てる

畑地付き空き家を購入するのであれば、通常よりは初期費用が高くなることが考えられます。空き家購入費は50万〜1000万円前後と幅が広く、建物の状態により大きく変動します。格安物件もあるでしょうが、リフォーム費用が高くなることも予想されます。

リフォーム費も100万〜1,000万円と幅が広く、特に水回りや耐震補強が高額になります。そのため、リフォームは優先順位をつけて、重要度の高いところから修繕・改修をすると良いでしょう。

また、自分たちでDIYする場合、ホームセンター等で材料を購入すると割高になり、予算がオーバーすることもあります。

さらに、農機具や菜園づくりの初期投資費用として、数万円〜100万円は見込んでおかなければなりません。

こうした費用については、国や市町村の補助金等の支援制度もありますので、上手に活用することも大切ですね。

そして、ホームセンターや農機具店等の所在も確認し、必要なものを効率よく揃えたいですね。一日に何度も往復することになると、体力もガソリンも奪われて、とても非効率になります。

（２）土地のリサーチを行う

菜園で育てたい野菜等があるのならば、移住先の気候条件、土壌の特性、育てたい作物の適合性等を調査することが必要です。空き家物件の内覧時に土壌を持ち帰り、専門機関に検査を依頼していた方もおられました。一般に、野菜作りに向いている土地には、次のようなポイントがあります。

① 日当たり・水はけの良い場所
②  動物（鹿・イノシシ）対策をあまり必要としない場所
③ 水道水以外の水を確保できる場所

初心者ならば、トマト、きゅうり、ハーブ類等、育てやすい作物からスタートすると良いでしょう。そして、水の確保はとても大切です。地下水、山の水、用水路等を良く調べないといけません。菜園の規模にもよりますが、水道水を使用していると高い料金を支払うことになりますね。

（３）農機具が残された物件

田舎の空き家を探していると、半数以上の物件に家財等の残置物があります。農家を営んでいた空き家ならば、農機具の残置物もたくさんみかけます。例えば、トラクターが残されていた物件もありましたね。こうした、農機具が残された物件を探し出すことで、初期費用を少しは抑えることができますね。「古く錆びた農機具だから」といって見捨てない気持ちが大切ですね。

農業が盛んな地域を選ぶ

田舎で農地付き空き家を購入するのならば、その地域性をよく確認しておく必要もあります。ここでの地域性とは次の2点を指します。

1点目は、「移住者に好意的な地域なのか」です。その地域に、他にも移住者が住んでいると安心ですね。とくに、素人が農業を始めると、周囲に迷惑を掛けることもあるので、地域の理解を得られるかは大きなポイントです。周囲に認められず、例えば「用水路の水を使用させてもらえない」といった、トラブルの話を聞くこともあります。

2点目は、「農業が盛んな地域なのか」です。地域の農家さんや菜園愛好家とつながることで、アドバイスをもらえたりします。田舎の人はとても親切です。何かとアドバイスをいただけますので、上手にお付き合いをすることで、素敵な菜園ライフを手に入れられるでしょう。

今回の相談者Aさんの夢はきっと叶えられます。ただし、リスクをしっかりと理解し、準備を進めてくださいね。田舎暮らしは「自然と暮らす喜び」だけでなく、「自分でなんでもやる大変さ」も伴いまが、丁寧に準備をすれば、とても豊かで心地よい生活が実現できます。

そして、田舎では成果を共有することが大切です。菜園の収穫物で料理を楽しんだり、近所や友人と分け合ったりと、素敵な田舎ライフにしてください。

これからの田舎での暮らしが実り豊かで、楽しいものになることを願っています！