農業に興味を持って農業高校から農林大学校と農業を学んだ梶幹弘さん。いったん地元を離れたもののUターンして農事組合法人に就職。現在は20棟のハウスの栽培管理を任されるなど、地域農業を支える担い手として活躍する。
掲載:2025年11月号
島根県松江市/梶 幹弘さん
島根県松江市出身、24歳。島根県立農林大学校を卒業後、松江市内の日本庭園に勤務した後、安来市特定地域づくり事業協同組合の「地域づくりパートナー」として米とアスパラを栽培する農事組合法人に派遣される。その後、いったん島根県を離れるがUターン。派遣されていた法人に社員として就職した。
アスパラガスのハウス20棟。忙しいけどやりがい充分
「今の職場では以前に2年ほど派遣されるかたちで働いていました。昨年は山梨県に転居しましたが仕事はトマト栽培。実家は非農家ですが、高校から農業を目指してきて、農業しかできませんから。それでもからだの使い方や、農業の基本は身についていると思うんです」
と話す梶幹弘さんは今年4月から安来市(やすぎし)内の農事組合法人で正社員として勤務している。
「農業に目を向けたころは独立したいと思っていました。とはいえ、それなりの投資が必要ですから踏み切るには度胸がいります。自分には雇用就農のほうが合っていると考えたんです」
法人では地域の水田約53ヘクタールの栽培を受託するほか、稲作からの転作としてアスパラガスの栽培にも取り組む。梶さんはいずれの作業にも携わり、なかでもアスパラガスはハウス20棟の栽培管理を任されている。
「露地でアスパラガスを育てていた地域のベテランの方から栽培の仕方を教わりました。難しいのは夏の暑さですね。高温では育ちが悪くて。今日も遮光カーテンについて打ち合わせをしていたところです」
アスパラガスの収穫は春から夏芽の8カ月間。収穫作業はシニアの女性たちが担い、梶さんはそれ以外の管理全般を引き受ける。「販路も少しずつ広げています。取引先からの紹介で新たな売り先を増やしたり、直売所では電話予約で注文を受けたり。最盛期は穫れる量が多いので以前は売り切れずに余っていましたが、ロスはかなり減りました」。
9月には稲刈りも始まって、忙しさはピークに。
「結構手いっぱいなので、規模拡大は人が入らない限り難しいです。農林大学校の卒業生の受け入れ先としても期待されているので、若い子に来てもらえるとありがたいですよ。後輩が来れば仕事の割り振りを考えたり、大変な面はありますけどね」
と言う梶さん。自分で考えて差配できる職場にやりがいを感じている。
「島根県にはIターンの新規就農者もいて、海や宍道湖(しんじこ)の自然に魅力を感じている方が多いです。そして何よりここは人が優しい。田舎ですけど、落ち着いて農業するにはいい場所です」
春に収穫した後、勢いのある茎を親茎に育てて、5月〜10月には新しく出てくる夏芽を収穫する。
根元のかたい部分を切り落として出荷。
アスパラガスは「島根県GAP認証(美味しまね認証)」認定済み。パッケージは地元の学生のオリジナルデザイン。
利用した制度
・U Iターンしまね産業体験事業
県外在住者が県内受け入れ先で農林水産業などの産業体験を行う場合に、滞在に要する経費の一部を助成。
https://www.kurashimanet.jp/sangyoutaiken
・安来市特定地域づくり事業協同組合
市内にある農業などの事業所について繁忙期・閑散期を組み合わせ、年間を通じて複数の仕事を提供。スキルアップとともに安定収入が確保できる。
https://www.yasugi-multi-work.com/
Advice
「地域とのコミュニケーションが大切です。ときには独自路線も必要ですが、周囲の声も聞きながら進めるとうまくいくと思います。島根県内では地域によって得意な産品があり、『ふるさと島根定住財団』では、就農や産業体験などの支援についても相談できます」(梶さん)
文/新田穂高 写真提供/梶 幹弘さん
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