田舎暮らしの本 Web

  • 田舎暮らしの本 公式Facebookはこちら
  • 田舎暮らしの本 メールマガジン 登録はこちらから
  • 田舎暮らしの本 公式Instagramはこちら
  • 田舎暮らしの本 公式X(Twitter)はこちら

田舎暮らしの本 5月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 5月号

3月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

3年がかりで妻を説得。世界遺産の集落で古民家ゲストハウスを開業 【富山県南砺市】

掲載:2021年8月号

「合掌(がっしょう)造り集落」のある観光エリアとして知られる富山県南砺市の五箇山(ごかやま)地区へ移住してきた多賀野さん夫妻。2018年にゲストハウスを開業し、2020年8月には長男も誕生した。家族3人の生活をスタートしたばかりの多賀野さんが手に入れた暮らし。その風景を少しだけのぞかせてもらった。

長男の汰一朗(たいちろう)君(10カ月)とともに、大好きな自宅裏にて。2階のゲストルームの窓からも、この絶景を望むことができる。

合掌造りの家が集まる「相倉集落」。

富山県南砺市五箇山地区 
 富山県南西部に位置する南砺市五箇山。40の小さな集落が集まり、そのうち合掌造りの家が現存する「相倉(あいのくら)」と「菅沼(すがぬま)」は世界文化遺産に登録されている。国内外から多くの観光客が訪れる。東京から新高岡駅まで北陸新幹線で約2時間40分、新高岡駅からは世界遺産バスで上梨(かみなし)・皆葎(かいむくら)まで約1時間15分。

東日本大震災をきっかけに安心できる暮らしを選択

 日本でも有数の豪雪地帯、南砺市五箇山地区。茅葺き屋根の家屋が点在するこの地区は小さな集落から成り立つ、静かな山里だ。千葉県出身の多賀野公太(たがのこうた)さん(39歳)・伽菜子(かなこ)さん(37歳)夫妻は、2011年に入籍し、6年前に五箇山に移住した。

「入籍して家を探しているときに、東日本大震災を経験しました。帰宅困難に陥ったことで、安心できる暮らしに重点を置きたいという考えになったんです。妻にプレゼンしまくって、3年がかりで納得してもらいました」と公太さんは笑う。

 千葉のアウトドアショップに勤務する公太さんと、都内の建築金物メーカーに勤務していた伽菜子さんの共通の趣味はアウトドア。全国のいろいろな地域を旅してきたこともあり、土地そのものを楽しむことには自信があった。特に山遊びが大好きな2人が移住先として絞ったのは、北陸、東北、北海道。そのなかでも伽菜子さんの知り合いが多くいた富山県に縁を感じ、直感的に決めたという。

「五箇山を選んだのも、なんとなくピンときたから。便利な街での暮らしも考えましたが、それだと千葉とあまり変わらない風景だなって。頭であまり考えず、直感で五箇山がいいってなりました」と伽菜子さん。

家の隣にある多賀野さんの畑。現在はエダマメやネギなどを育てている。「畑仕事が本当に楽しいんですよ!」と公太さん。

近所の人たちは、畑のことや山のことを教えてくれる先生でもある。汰一朗君を見るなり「また大きくなって」と話に花が咲く。

知り合いの紹介で仕事、家、ゲストハウスを入手

 移住後、まず1年限定という条件付きの古民家を借りて職探しを始めた公太さん。知り合いの紹介で、近所の宿泊施設に就職し、調理補助、接客、風呂掃除やベッドメイキングといったスキルを身につけた。

 ある日、伽菜子さんのアルバイト先の主人から空き家があると聞いて見に行ったのが、今の家。持ち主と何度も交渉し「しっかり冬が越せたら売ってあげるよ」と言われ、2年がかりで手に入れることができた。

「元は民宿だったから2人で住むには大きすぎて……。自宅を使って何かしたいと思っていたので、ゲストハウスを開業することにしました」(公太さん)

 改装は以前、公太さんが仕事を手伝っていた土建屋さんが引き受けてくれた。設計は伽菜子さんで、家族や仲間も参加。費用は借り入れと補助金を活用した。「一緒に壁塗りやタイル貼りをしたり、楽しかったです」。

 こうしてゲストハウス「タカズーリ喜多」をオープン。「人と情報が行き交う交差点のような場」を目指して運営し、今年で4年目を迎える。

「都市部の生活は何でもお金で買えたけど、今は、お金とは距離のある暮らし。食べ物は畑から穫れるし、ないものはつくればいい。冬場は不便もあるけれど、雪があるから作物もおいしいし、スキーも楽しめます。このまま流れに身を任せながら生きていきたいですね」

 2人は満ち足りた笑顔で顔を見合わせた。

「タカズーリ喜多」の名の由来は、地名の「高草嶺(たかそうれい)」がなまって「タカズーリ」、家の屋号「北」の漢字を変えて「喜多」だそう。
タカズーリ喜多 富山県南砺市猪谷1031 ☎︎0763-77-3325 http://www.takazurikita.com

2階「男女混合ベッド部屋」には、2段ベッドを4台設置。ベッドごとにカーテンで仕切られている。料金は、1人1泊3500円、朝食付きは4000円。冬場は暖房費1人1泊300円が加算。

1階のカフェスペースに飾られている絵画『心の中の山』は、夫妻の友人で日本画家の安原成美さんが描いたもの。

カフェスペースではイベントも開催(コロナ禍で現在は休止中)。人や情報が集まる交差点となっている。

ゲストハウスから散歩感覚の距離にある「羽馬家住宅(はばけじゅうたく)」は、国指定重要文化財にも登録されている江戸中期以前の合掌造り。

多賀野さんからアドバイス
コミュニティに参加して知り合いを増やすこと!

 青年団、消防団、婦人会、お祭りなど、地域のコミュニティにはなるべく参加するようにしています。知り合いがいることで助けられることが本当に多かったですね。生きる知恵を持っている地域の人たちに、リスペクトの心を持って接することが大切だと思います。

南砺市移住支援情報
住宅取得奨励金や新婚世帯への支援

 移住希望者への家の紹介、起業や就業する人への支援、子育て支援など、さまざまな支援を行っている。市外から転入して住宅を取得した人に奨励金を交付(新築住宅の場合100万円+家族加算、中古住宅の場合60万円+家族加算)。新婚世帯に対しては、婚姻に伴う新生活のスタートアップを支援する制度(住宅賃借費用、引っ越し事業者などへの支払い費用などへの支援で1世帯当たり上限30万円、付帯条件あり)がある。
問い合わせ:南砺で暮らしません課 ☎︎0763-23-2037
https://www.kurashi.city.nanto.toyama.jp

砺波(となみ)平野に多く見られる散居村(さんきょそん)の風景。

夏は桂湖(かつらこ)でボート体験も!

「豊かな自然がいっぱいの南砺市にぜひお越しください!」。なんと未来支援センター・林さん(左)、南砺で暮らしません課・岩木さん。

 

文/居場 梓 写真/利波由紀子

 

この記事のタグ

田舎暮らしの記事をシェアする

田舎暮らしの関連記事

この夏、日本の原風景で移住体験!【富山県南砺市】

ニットの名産地の老舗企業に転職。仕事でチャレンジ、オフも充実!【新潟県見附市】

【過去の結果】2021年版「住みたい田舎」ベストランキングを発表します!【東日本編】

定年後に菜園生活を実現! 食の宝庫で農家民宿を開く【広島県世羅町】

【物件情報】編集部注目!石川県七尾市の1円の家

「超複業」で田舎暮らし。シェアハウス、どぶろく製造、わな猟も! 【三重県熊野市】

海・山一望の大規模ニュータウン「伊豆下田オーシャンビュー蓮台寺高原」には素敵な物件がたくさん【静岡県下田市】

子育て移住にもオススメ! のどかな果樹園に囲まれ、教育環境も整った人気のエリア【広島県三次市】

移住者の本音満載の必読書『失敗しないための宮崎移住の実は…』/宮崎移住の「いいとこ」も「物足りないとこ」もわかるガイドブック