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田舎暮らしの本 2月号

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田舎暮らしの本 2月号

1月5日(月)
990円(税込)

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【毎熊克哉さんインタビュー】「〝世界の回転を変える〞ように、東京とは違う常識のところにまた住んでみたい」|映画『安楽死特区』

謎めいた色気をさらりと放って女性の心をつかんだ大河ドラマ『光る君へ』をはじめ、どんな世界観のどんな役も、ごく自然に身にまとってリアルに着地させる俳優の毎熊克哉さん。最新作となる主演映画『安楽死特区』で、若年性パーキンソン病を患うラッパーを演じました。映画のこと、田舎暮らしへの思い。毎熊さんに聞きました。

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掲載:2026年2月号

田舎暮らしの本のインタビューを受ける毎熊克哉さん
まいぐま・かつや●1987年、広島県出身。2016年に映画『ケンとカズ』で毎日映画コンクール、スポニチグランプリ新人賞などを受賞。主な映画出演作に『猫は逃げた』『冬薔薇』『世界の終わりから』『初級演技レッスン』『悪い夏』『「桐島です」』など。

難病とラップと安楽死を織り込んだ人間ドラマ!?

「オファーを頂いたのが、じつは『「桐島です」』と同時で。ベクトルの違う重みを持つ作品ですが、自分がやらせていただく以外ないなと。そこからは別の作品をやりながらもずっと、『次は安楽死だ、しかもラップか……。ラップだけでも早く音源が来ないかな』、と思っていました」

 49年間逃げ続けた連続企業爆破事件犯を演じた『「桐島です」』に続き、高橋伴明監督の映画『安楽死特区』に出演した毎熊克哉さん。俳優として活動を始めたばかりの21歳のころ、初めて参加したプロの映画撮影現場が高橋監督の『禅 ZEN』という縁もあった。

 新たな映画の舞台は、国会で安楽死法が可決された近未来の日本。毎熊さんは若年性パーキンソン病を患うラッパー、酒匂章太郎を演じた。

 「パーキンソン病について、知らないことのほうが多くて。安楽死にも考えを巡らせましたが、具体的に何をしたら? という感じで。ラップに関しては、いわゆるヒップホップのラップではありません。死がすぐそこにある男が言葉として思いを吐き出す、そんな感覚かと。ラップをかます!というより、朗読に近い。言葉を大事に、リズムの中でそれがどう揺れ動くか?でした」

 難病とラップ、それを安楽死という社会派なテーマの中に表現する。それ無理だろう!という課題を、毎熊さんはナチュラルにやり遂げる。これまで、人間社会に紛れる酒乱の赤鬼とか、全身黒ずくめの謎めいた演技講師とか、ムチャな設定の現実離れした存在でも、浮つくことなく現実に着地させてきた毎熊さんだからこそ。今回も当たり前みたいに、揺るぎなく章太郎として在る。

その人が確かに生きた、そのことを大切にする映画

 原作&製作総指揮は、医師の長尾和宏さん。急速に進むパーキンソン病の症状、安楽死にまつわる医療ケア。確かな裏付けがあるだろう描写が、現実の日本では空想の段階である安楽死にリアリティを与える。

 「監督は章太郎がただ歩いている、そんななんでもない瞬間を大事にされていました。シーンの流れ、心情としてどこへ向かう歩みかを。でも今回のような役で、100パーセント役になりきりました!とは言えません。噓になります。どんな役も、大事なのはどれだけ自分事にできるかで」

 章太郎とそのパートナー、ジャーナリストの藤岡歩は安楽死に反対。内部から実態を告発しようと、安楽死希望者が入居する施設に入居する。

 「どんな状況にあっても、生きたい気持ちと死にたい気持ちは0と100ではなくて。死にたいと思う役に近づくほど、自分は生きている!と実感したりします。そんな感覚が、この役でもありました。安楽死を扱いながらも、その人が確かに生きた、そのことを大切にする映画かなと」

 末期がん患者、認知症の元女漫才師と、入居者それぞれの生が人間関係の中に描かれる。

 「死を選びたい人の苦悩がわかっても、受け入れる側はしんどい。一度は嫌だ!と言わせてくれよ、という気持ちはありますよね。それって想像力の問題で。死はその人個人のものでしょうが、どうしても家族などの深い関係になると難しい」

 自分なら? 家族が望んだら? すぐそこにある可能性として、あれこれ考えてしまう。毎熊さん自身は何を思っただろう。

 「そんなに自分を観たくないというのがベースにあり、映画としてまだ冷静に観られません。本当は、ずっと目をつぶって観ておきたいくらいで」

 注目されるきっかけとなった映画『ケンとカズ』も、「数年前、久しぶりにスクリーンで観て、ようやく冷静に観ました」と。9年前の作品なのに!

 「それで今回は改めて、高橋伴明監督の軽快さを感じました。ひとつのシーンにベタッとウエイトを置かない。裏側にいろいろなものを残したままでサッ!と次に行く、そこが好きです。エンドロールとその先までの、あのテンポ感が潔いんですね」

 それは、表現者としての腕力ともいえそう。軽々しく扱えない題材を前に、まず原作者の経験や知識に基づいて強固な土台を構築。確かなエンタメへと昇華させる表現者としての力に、受け取る側はあれよあれよと乗せられてしまう。

 そうして章太郎がラップで叫ぶ、「世界の回転は時々変えてみよう」というリリックが響く。

 「もともといろんな国があり、それぞれ自分の軸で回っていたはず。それが混ざり合い、力関係が生まれて。本来、自分のものではない何かに合わせながら時代がどんどん過ぎていく……。そんな感覚が年々増しています。すべてがルール化され、回転が決められているよう。本当にその回転でいいんですか? それ合ってる? と、流されずに一度疑う。それでちょっと〝軌道〞を変えてみたら、よりよい空気感になるかもしれません」

田舎暮らしの本のインタビューを受ける毎熊克哉さん

地方の映画館へ出向き自らチラシ配りも!

 「もともと映画がやりたくてこの世界に入ってきた」と言う毎熊さん。映像製作ユニットに参加し、2023年に藤原季節さんを主演に迎えた初の長編映画『東京ランドマーク』が完成。昨年秋も別府ブルーバード劇場や新潟の高田世界館と、地方の映画館にも届けた。

 「監督という部署には、もうこだわっていません。脚本ができてから呼ばれて役者として参加するのがメインとしても、自分から動き出す、そういうことがあってもいいんじゃないかと。それで地方の映画館へ行き、その地域に触れて。劇場についたお客さんがいるのを知ると改めて、こうした人が観てくれないと映画って成立しないんだなと。それで〝あの映画館の××さんがチラシを配ってくださったのかな〞などと思うと、映画は基本、アナログだなって」

 銀幕スターの時代ではないから、映画を届ける方法をもっと考えていいのかも。生真面目な思いを軸にしつつ、「初めて北海道に行きます!となれば、それだけでもう楽しい」と笑う。

 「一回舞台挨拶をして終わり、ではなくて。土日があったら両方やり、それでも時間が余ったら……いかに遊ぶか。お店を教えてもらっておいしいものを食べたり、大した遊びではありません。でも街を歩くだけで楽しい。時間があったら、映画館の前でビラ配りもします。先日行った映画館でもビラを配ったのですが、人が歩いてなくて……。通り過ぎる車に向かって、チラシを掲げたりしました(笑)」

 そんなふうに映画を届けたり、映画やドラマの撮影をしたりして地方へ行くと、田舎暮らしに興味が湧かないだろうか。

 「今すぐ移住しようとは思いませんが、ず〜っと東京に住みたい!とも思わないんですよね。それこそ〝世界の回転を変える〞ように、東京とは違う常識のところにまた住んでみたいなって」

 出身は広島県福山市。下関にも4年ほど暮らしたそう。

 「実家は〝移動し続けている〞系なので、住んだことのない場所に興味があるんです。具体的には……高知に行きたい。広島から瀬戸大橋を渡ればすぐ香川県。四国は近いという感覚ですが、高知は行ったことがなくて。住みたい!とは別に、今行きたい。『東京ランドマーク』を利用して、高知の映画館に行くのもいいかもしれません」

 もし田舎暮らしをしたら、「畑をやってみたい」と毎熊さん。

 「植物が育つさまを見るのが好きで。ベランダで多肉植物をたくさん育てているのですが、もっと日当たりのいい庭でもあったらなって。その延長線上にメロンとかあるかもしれないなと。メロンか……、メロンが実ったらものすごく興奮するだろうな」

「ぬるっと始まった」俳優としての活動

 『ケンとカズ』のころの鋭利な焦燥感をまとう20代、真摯に役と向き合う物静かで(でもチラッとお茶目な)色気あるたたずまいの30代。毎熊さんの幼少期って、あまり想像がつかない。

 「勉強もスポーツも、取り柄のない子どもでした。小学生からサッカーをやりましたけど、下手過ぎて! もういいだろうと中学3年でやめました(笑)」

 ダンス講師だった母親がビデオで観ていたストリートダンスに惹かれ、高校時代はダンスにのめり込む。卒業後は映像の専門学校に入り、監督志望に。俳優も一度やってみようと、「ぬるっと始まった」と笑う。けれど俳優としての彼の存在は、確実に大きくなっている。

 「自主映画、自主映画と言わずとも低予算の作品、配信の作品。よその国へ行けば、また違うつくり方があるでしょう。それぞれ正解が違い、いろいろやってみて、苦悩して。ああ今回はダメだったな……なんて思いながらまあ、酒を飲むと(笑)」

 振り幅のある役を演じるだけではない。でもひたすら貪欲に。

 「どんな仕事もそうでしょうが、ひとつ認められると土台が固くなり、ほかに行かなくなる気がして。〝重力〞は軽めにしておいたほうがいい。いつでもどこにでも行ける自分でいたい。それはちょうど〝世界の回転を時々変えてみる〞ことかもしれませんね」

 

『安楽死特区』

(配給:渋谷プロダクション)

『安楽死特区』(©「安楽死特区」製作委員会)
●監督:高橋伴明 ●出演:毎熊克哉、大西礼芳、加藤雅也、筒井真理子、板谷由夏、下元史朗、友近、gb、田島令子、鈴木砂羽、平田 満、余 貴美子、奥田瑛二 ほか ●1月23日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開

©「安楽死特区」製作委員会
https://anrakushitokku.com/

 

文/浅見祥子 写真/鈴木千佳  ヘアメイク/星野加奈子 スタイリスト/カワサキ タカフミ

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  • 『安楽死特区』(©「安楽死特区」製作委員会)

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