前回に引き続いての内装工事だ。今回は主に壁の断熱だが、ここで和田が計画したのは、恐怖の「ぬいぐるみ断熱」だ!
掲載:2017年11月号
和田家のDIY現場は究極の不幸!?
先日、衝撃的なニュースを見つけた。
「アメリカやカナダなどの研究者でつくるグループは、食事の宅配や掃除の代行などのサービスにお金を支払うことで自分の時間を増やした人のほうが、そうでない人に比べてより高い満足度が得られ、幸せに感じる人が多いという調査結果を発表しました」(2017年7月26日6時03分配信 NHKニュース)
中山「この研究によれば、代行サービスを利用して、自分の時間を増やすことで『時間を買う』人は、そうでない人に比べて人生の満足度が高いと回答したそうですよ」
阪口「えー! じゃあDIYはどうなるんだろ?」
和田「我われがやってることは、満足度が低いってこと!?(笑)」
阪口「しかも、和田家では廃材利用で手間ばっかりかかってるし」
中山「DIY大国のアメリカでこんな結果が出るというのが不思議」
水野「自分の時間が増えたことでDIYできるって意味では幸せなのかも?」
一同「おーそういうことか!」
納得したところで今回の作業に入ろう。
スズメバチの巣が!! 駆除をするのは誰⁉
和田の家に行ってみると、上の写真のような書き出しが……。
水野「なにこの『ぬいぐるみ』って(爆笑)」
和田「あとで説明するから! とりあえずスズメバチの巣!」
和田に言われるままに見に行くと、なんと天井にトックリ型の褐色の物体が。じつはこれ、スズメバチの巣(の原形)なのだ。この段階なら、まだ働きバチはいないので、簡単に叩き落とすことができるらしい。
和田「というわけで! はい!」
和田が中山に3mの垂木(たるき)を手渡した。
和田「刺された経験がある人がやらないと!」
中山「逆だろ、フツー!」
和田「大丈夫、大丈夫!」
中山「大丈夫なら自分でやれ!」
渋る中山であったが、覚悟を決めて巣の直下へ。異変を察知したらしい女王バチがトックリの穴から顔を出す。
中山「いくぞー!」
垂木にイキオイを付けて巣に叩きつける。手応えアリ。猛ダッシュで逃げる。
阪口「速いな、おい!」
水野「しかも誰よりも遠くに逃げてるし(笑)」
巣を撤去した2週間後、中山はまた不運に見舞われる。
中山「いやー、じつはまたスズメバチに刺されちゃってさ」
一同「えー! なんで生きてんの?」
中山「いわゆる『アナフィラキシーショック』が怖いから調べたんだけど、2回刺されるとヤバイ体質の人って全体の2%くらいらしいんだよね。しかも刺されて1時間以内に死んじゃうらしい」
和田「50人に1人って、けっこうな確率!」
中山「でも適切に処置すれば大丈夫らしいよ。1年間に死亡する人は30~70人で、確率は2%よりもさらに低い」
阪口「そういえば『ポイズンリムーバ』買ってなかったっけ?」
中山「あれは奥多摩に置いたまま。刺されたのは千葉の母親の家だったから、手元になかった(泣)」
水野「スズメバチの活動期間は、おおむね10月いっぱいらしいので、気をつけましょう」
テキトーにつくった階段が意外に上出来!?
巣が撤去され、晴れて内装工事に専念できるというものだ……と思ったら、まずはウッドデッキの続きらしい。地面から高さが約60㎝あるウッドデッキは、上り下りがしにくい。そのため、階段を取り付けるというのだ。
和田「私は階段付けるから! 中山さん、デッキ下に幕板(まくいた)を取り付けて! 水野さんは防腐剤をお願い!」
水野「また防腐剤……(泣)」
ここで階段の部材について説明しよう。
階段は意匠によってさまざまなタイプがあるが、主な構成部材は「桁」と「段板(踏み板)」だ。段板を支えるのが桁である。和田がつくったのは、いわゆる「ささら桁階段」といわれるもの。桁に切り欠きを入れ、段板を載せるシンプルな構造だ(イラスト参照)。
階段で重要なのは「踏面(ふみづら)」と「蹴上げ(けあげ)」である。踏面とは段板の奥行きのこと。蹴上げは階段1段の高さのこと。高すぎても低すぎても通行に支障が出る。踏面も蹴上げも、だいたい20㎝程度であれば問題ない。
……というようなセオリーを和田が知っているはずもなく……。
和田「大丈夫大丈夫! 使いづらかったらつくり直せばいいんだから!」
彼の完全なる「動物的カン」で仕上がった階段は、しかし意外にもちょうどいい具合である。
和田「完璧! あとは沓石(くついし)で高さを調整すればOK!」
水野「どれどれ……。あ! 普通の階段だ……、って当たり前だけど(笑)」
阪口「こんなテキトーにつくっておいて、出来栄えが悪くないってのは納得いかん(遺憾)!」
ぬいぐるみの使い道はなんと断熱材!!
和田が階段をつくる間、中山と担当・水野は内壁の施工である。前回と同じく、グラスウールを切り張りしていくんだが、ここで和田が運び込んできたのが……、なんと、ぬいぐるみ。冒頭の書き出しはこれだったのだ。
阪口「何これ? 飾るの?」
和田「人呼んで『ぬいぐるみ断熱』! 『古着断熱』っていうのもあるけど、うちはぬいぐるみ!」
水野「このぬいぐるみは、いったいどこから?(爆笑)」
和田「もちろんUFOキャッチャー®!」
一同「うそ!?」
中山「だって逆に高くつくだろ」
和田「それは冗談! 潰れたゲームセンターからもらってきたの!」
水野「和田さんて、何でももらってくるよね……」
阪口「これ新品だよね? 特にこの『世界一有名なネズミ』とか『国産のネコ型ロボット』とか」
中山「断熱材にするより、ネットオークションで売っ払って建築費を捻出したほうが現実的な気もするが」
和田「それじゃあ面白くもなんともないじゃん!」
水野「はいはい。某社からクレームが来る前に作業始めましょうねー」
というわけで断熱材代わりに外壁と内壁のすき間に詰め込むことにした。下から野地板を張っていき、中山が「ムギューッ」とねじ込んでいく。
阪口「なんか夢に出てきそうだな。壁の中に何十体も埋もれているなんてさ」
中山「ぬいぐるみの怨念?」
水野「ぬいぐるみも、お寺で供養してもらうよね」
阪口「しかもホラ、節穴からぬいぐるみの目玉が!」
水野「怖い!(笑)」
中山「見えないから怖いんだよ。せっかくだから一部を透明な壁にして中が見えるようにするってのはどうだ?」
和田「いいねえ! 確かアクリル板が余っていたはず」
さっそく、そのアクリル板を使って、内部が見えるように加工してみた。
中山「おお。どこかの科学館の展示みたいだな」
阪口「なんか満員電車みたいで気の毒だねえ。しかも『オトナの理由』で、みんな背中向けてるし」
和田「色や形で、そこはかとなく想像がつくのもイイネ!」
水野「はいはい。本気でクレームが来そうなので、今回はこの辺でお開きということで!」
文/中山茂大 写真/阪口 克 イラスト/和田義弥
過去記事はこちら!
第1回 基礎工事
第2回 墨付け、刻み
第3回 柱、梁、桁の刻み
第4回 棟上げ目前
第5回 棟上げ
第6回 棟上げ
第7回 棟上げ
第8回 足場組み、家起こし
第9回 屋根
第10回 屋根材張り&プロによる中間チェック
第11回 壁の施工、窓の取り付け
第12回 差し鴨居
第13回 外壁
第14回 はめ殺し窓、下見板
第15回 床の施工
第16回 荒床張りと電気の引き込み
第17回 ウッドデッキ
第18回 天井張り
人力社
ライター中山とカメラマン阪口、 ライター和田の旅とDIYを得意とする3人組トリオ。「人力山荘」シリーズでは中山の母屋リフォーム、中山のアネックス新築DIY、和田の自宅新築DIYを連載。阪口も自宅をDIYで新築している。
人力社HP➡www.jinriki.net
阪口HP➡https://www.sakaguti.org
和田HP➡http://www.wadayoshi.com
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