沖縄の離島を観光するなら絶対に訪れてほしいのが、西表島(いりおもてじま)を有する竹富町(たけとみちょう)。豊かな自然が広がる竹富町は、琉球列島(りゅうきゅうれっとう)の最南端にある八重山諸島(やえやましょとう)に属する9つの有人島と7つ無人島からなる島嶼(とうしょ)のまちだ。今回は、沖縄県竹富町役場 自然観光課 観光振興係の上地朝奈(うえち あさな)さんに、竹富町の有人島の魅力を語ってもらった。
竹富町は、東京から約2,000㎞、沖縄本島からは約450㎞、日本の南西に位置しており、同じ県内の那覇市より、台湾の方が近い場所にある。また、北海道の北端よりも、赤道のほうが近く、南国のリゾート地として人気を誇る日本最南端の自治体だ。
よく竹富町=竹富島のみと思っている人も多いが、竹富町は一町多島であり、管轄する島は有人島が9つ、無人島が7つ、計16にわたる島しょ自治体。その中には観光で人気の竹富島や西表島(いりおもてじま)も含まれている。
【竹富町の有人島】
西表島(いりおもてじま)、波照間島(はてるまじま)、黒島(くろしま)、竹富島(たけとみじま)、小浜島(こはまじま)、新城島(あらぐすくじま)、鳩間島(はとまじま)、由布島(ゆぶじま)、加屋真[嘉弥真]島(かやまじま)
四方が海洋であるため、年間を通して気温の日較差は小さく、湿度は75%と高いことから、亜熱帯海洋性気候と呼ばれている。その特殊な地理と気候により、イリオモテヤマネコに代表される希少な動植物も生息し、豊かな自然環境と歴史ある伝統文化などが認められて、西表島は世界自然遺産に登録された。
イリオモテヤマネコのはく製。
「西表島は、2021年7月に世界自然遺産に登録されました。世界自然遺産登録の目的は『顕著で普遍的な価値を有する遺跡や自然地域などを、人類のための世界の遺産として保護、保存し、国際的な協力及び援助の体制を確立すること』とされています。簡単にいうと、残されている貴重な自然を世界の宝として、地域住民だけでなく、みんなで守っていきましょうということです」
また、竹富町は日本初の星空保護区として認定されており、晴天時の星空が最高! 全天88ある星座のうち84の星座を見ることができ、21個の1等星もすべて見ることができるといわれている。
↓西表島の自然環境についてはこちらをチェック↓
絶対訪れたい世界自然遺産/「東洋のガラパゴス」西表島の自然を守るために知っておきたいこと3選【沖縄県竹富町】
竹富町の人口は2022年10月末現在で4,302人。また、役場を竹富町内ではなく、隣の石垣市に置く国内でもめずらしい特異な行政形態だ。
石垣市に役場がある理由としては、「竹富町内の各島への移動手段は、現在、船舶のみとなりますが、各島は石垣市を拠点とした航路が主であるため、石垣市に役場があった方が町民にとって便利という点が挙げられます。また、石垣市には総合病院や大型スーパー、銀行、空港などがあり、八重山経済の中心となっていることから、竹富町民は生活圏としてなにかと石垣市を訪れる場面が多くありますので、町民にとっては石垣市に役場がある方が都合がよいのです」とのこと。船舶の発着は、すべて石垣島からとなっている。
もちろん、観光客も石垣島を経由して、竹富町に渡ることとなる。竹富町の各島には、スーパーなどが少なく、必要なものは石垣島で揃えてから出発することをおすすめする。また、竹富町には、ゴミ処理施設がないため、ゴミは竹富町には残さず、しっかり持ち帰るようにしてほしい。
竹富町への移動は、新石垣空港、石垣港を利用する。
それでは、竹富町の美しい島々の紹介をしていこう!
竹富町にある9つの有人島の魅力とは?
■ 竹富島(たけとみじま)
石垣市から高速船で10~15分の距離。人口は329人。
「島民の手によって守られてきた赤瓦の家々と白砂の道のコントラスト、一年中咲いているブーゲンビリアやハイビスカスなどの花々が美しい島です。白砂の道は毎朝、島民が掃き清めており、景観が保たれています。国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている『赤瓦の集落』を水牛車でゆったりと巡る観光コースが人気。旧暦の9月から10月頃には600年の歴史があるといわれる島最大の伝統行事『種子取祭(たなどぅい)』が、島民総出により執り行われている島です」
【竹富島集落】1987年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。
【ハイビスカスやブーゲンビリア】一年を通していつも元気に明るく咲いているハイビスカスやブーゲンビリアの花。
【西桟橋】1938年に建造され、終戦により日本に復帰した後もしばらくは使われていた桟橋。先端から海に沈むきれいな夕日、夕焼けが絶景の撮影スポット。2005年に国の有形文化財に登録されている。
【コンドイ浜】遠浅で白い砂浜が続く美しい海岸は、子どもでも安心して遊べると人気。干潮時には沖合の砂地が水面に現れ歩いて渡ることができる。
【カイジ浜】コンドイ浜のとなりにある星の砂で有名な美しいビーチ・皆治浜(カイジ浜)。別名「星砂の浜」とも呼ばれている。潮の流れが速いため、遊泳は禁止。星の砂を探しながら、ゆっくり散歩を楽しみたい。
■ 黒島(くろしま)
石垣市より高速船で25~30分の距離。人口は226人。
「人口に対して10倍以上の牛がいる牧畜の島です。黒島から出荷された仔牛は石垣牛や本土のブランド牛として育てられています。島が平坦なので、自転車で回ることができ、レンタサイクルも人気です。また、島の北側にある長さ300m以上の『伊古桟橋(いこさんばし)』から夕日を見るのがおすすめ。上空から見ると島の形がハートに見えることから『ハートアイランド』とも呼ばれています」
【牛】人口約226人に対して、牛の数は3000頭を超える牛の島。たくさんの牛が放牧されている景観は八重山のなかでも独特。
【伊古桟橋】2005年に国の有形文化財に登録された桟橋。満潮時(上写真)と干潮時(下写真)では、景色が違い、満潮のときは、海の上を歩いているような感覚になれる。
■ 小浜島(こはまじま)
石垣市より高速船で25~30分の距離。人口は748人。
「島のほぼ中央に大岳(うふだき)という山があり、天気のいい日には頂上にある展望台から360度のパノラマの絶景を見ることができます。島の東側に大型リゾートホテル、大岳の麓には集落があり、リゾートの贅沢さとサトウキビ畑の素朴さが残る場所です。NHKドラマ『ちゅらさん』の舞台にもなった島です。小浜では旧暦の8月から9月頃に、伝統行事である『結願祭(きつがんさい)』が執り行われ、朝から夕方まで休みなしで多彩な演目・芸能が奉納されます」
【シュガーロード】左右にサトウキビ畑が広がる一本の道。 ドラマ「ちゅらさん」では、通学路として使われていた。
■ 加屋真[嘉弥真]島(かやまじま)
人口は1人。
「定期船はなく、ツアーでしか渡れない島となっています。加屋真島ではツアーに申し込めば、島でのキャンプやシュノーケルを楽しむことができます。元々食用として持ち込まれたというウサギが繁殖しており、いたるところで見ることができます」
■ 西表島(いりおもてじま)
大原港(おおはらこう)と上原港(うえはらこう)の2つの港があり、大原港は石垣市より高速船で40~45分、上原港は45~50分の距離。人口は2,444人。
「2021年7月に世界自然遺産に登録された島です。沖縄県では沖縄本島に次いで2番目に面積の大きな島です。島の9割に手つかずの自然が残されており、世界でもここにしか生息しないイリオモテヤマネコに代表される希少な動植物が数多く暮らしています。西表島には川や橋が多くありますのでそれを利用したトレッキングやカヌー、SUPなどが人気です」
【仲間川(なかまがわ)のマングローブ】全長約17.5㎞の仲間川周辺には日本最大規模のマングローブ林が広がり、その面積は約158ha。流域一帯は「仲間川天然保護区域」に指定されている。
【サキシマスオウの木】仲間川の上流域あるサキシマスオウの木は樹齢400年以上の巨木で、国指定天然記念物。遊覧船・仲間川マングローブクルーズで訪れることができる。
【ピナイサーラの滝】ヒナイ川上流にある沖縄県最大の落差(約55m)の滝。ピナイは「ヒゲ」、サーラは「下がったもの」の意味。滝までは、竹富町で認定されたガイド同伴のカヌーやトレッキングツアーに参加して訪れることができる。
【カンビレーの滝】「神の座」を意味する階段状の滝。西表島の15ヶ所の神々が集い、シマづくりの談合をしたといわれる聖地。
■ 由布島(ゆぶじま)
人口は10人。
「西表島から400mの位置にあり、島の外周は約2㎞。浅瀬を水牛車に乗って三線を聴きながら渡ります。島全体が亜熱帯植物楽園になっており、南国の木々やアデニウム、サンダンカ、プルメリアなどの花々、オオゴマダラやアサギマダラなどの蝶々を見ることができます」
■ 鳩間島(はとまじま)
石垣市より高速船で45~50分の距離。人口は66人。
「外周が約4kmと、小さな島で、徒歩で回ることもできます。『“何もない”がある島』といわれておりますが、鳩間島独特の雰囲気や時間の流れにコアなファンが多い島です。民謡『鳩間節』では西表島まで出稼ぎに出た島民が、豊作の稲や粟(あわ)を船一杯に積み上げ、意気揚々と鳩間島に持ち帰る様子が唄われております。テレビドラマ『瑠璃の島』の舞台にもなりました。鳩間島は島の中にヤギやヤシガニが多くいるので、道端で出会えることもあります」
【鳩間島灯台】1948年に周辺海域の海難事故を解消するために設置された、鳩間島の中央に位置する島のシンボル的存在。
【屋良浜】海の向こうに雄大な西表島を一望できる人気の海岸。港から景色を楽しみながら徒歩20分程度で行くことができる。
■ 波照間島(はてるまじま)
石垣市より高速船で60~90分の距離。人口は468人。
「日本最南端の有人島です。最南端という島の位置や光害の影響も少ないことから、本土では観測することができない南十字星を肉眼で見ることが可能で、条件が揃えば、隙間がないほどの満天の星空になります。また、島の北側にあるニシ浜の海の色は『ハテルマブルー』と呼ばれており、その美しさは観光の目的の一つにもなっています」
【ニシ浜】ハテルマブルーと称される絶景ビーチ。ニシは方角の「北」を意味している。
【高那崎(たかなざき)】日本最南端の碑がある、琉球石灰岩が侵食してできた岬。1㎞ほど続く断崖絶壁に、打ち寄せる波が迫力満点だ。
【日本最南端の碑】波照間島は有人島としての日本最南端。日本最南端の碑があり、くねくねとした「蛇の道」を進んで行くと到着する。
■ 新城島(あらぐすくじま)
人口は10人。
「上地島(かみじじま)と下地島(しもじじま)の2つを合わせて新城島(あらぐすくじま)と呼んでいます。定期船がなく、ツアーでしか渡れない島となっています。訪れる観光客も多くはないため、周辺は特に自然度の高い海域が残されています。カラフルな魚たちを見ることができるシュノーケルや、島の散策を楽しむことができます。ウミガメが産卵にやってくる場所もあり、貝殻やサンゴのかけらがたくさんあるきれいな海岸も特徴です」
【クイヌパナ】上地島の桟橋の西にある物見台を上った先には、新城島を象徴する景色が広がる。
田舎暮らしの本編集部
写真提供:竹富町観光協会
この記事の画像一覧
田舎暮らしの記事をシェアする