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田舎暮らしの本 12月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 12月号

11月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

【地方創生SDGs】「こんぴら参り」の丸亀うちわ。今は年間2000人のポーランド人が【香川県丸亀市】

「うどん王国」香川県第二の都市、丸亀市。丸亀城や瀬戸内海の島々など豊かな歴史文化や自然があるこの地は、持続可能な観光地として世界TOP100に選出。その理由となった丸亀うちわが、まちにエコでサステナブルな風を起こしていく。

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掲載:2024年2月号

香川県丸亀市。まちのシンボル・丸亀城から望む丸亀市街。
香川県丸亀市(まるがめし)
起伏なだらかで農業が盛んな田園、城下町、海辺の工業地帯、沖の瀬戸内海には5つの有人島からなる塩飽(しわく)諸島と、多様な表情を持つ。古くから海上交通の要衝であり、金刀比羅宮参拝の海の玄関だった。写真はまちのシンボル・丸亀城から望む丸亀市街。遠くには瀬戸内海の塩飽諸島と瀬戸大橋も。人口10万8116人(2023年11月1日現在)。JR新大阪駅から電車で約90分。

 

江戸時代からのエコなお土産を守ってきた

第26回丸亀うちわ技術技法講座の受講生と講師(香川県丸亀市)。
第26回丸亀うちわ技術技法講座の受講生と講師。生徒7名に講師4名という充実の教育体制。週4日、9時~17時、全16回の講座でうちわづくりの基礎を学ぶ。

 

 世界がSDGsに取り組むなか、観光にも持続可能が求められている。地域の自然や文化、伝統などを損なわず、そこの住民の未来を考慮し、現地の経済にも貢献する観光である。その推進と国際基準の策定を行う「世界持続可能な観光協議会(※1)」が認定する国際認証機関「グリーン・デスティネーションズ(※2)」によって、2023年10月、丸亀市は「持続可能な観光地の世界TOP100」に選出された。

 立役者は丸亀うちわ。江戸時代から丸亀城下でつくられ、こんぴら(金刀比羅宮)参りの土産で普及した。最盛期は年間1億2000万本を生産、現在も国内生産シェアの90%を占める。

 生活道具のうちわだが、昔ながらの竹の骨に紙を貼ったものは、竹の細工や形状に美しさが宿る。職人技の結晶である。

 「竹のうちわづくりには47も工程がある」とは、丸亀うちわミュージアムで製作実演を行う伝統工芸士の長谷川秋義さん。

 「同じものは二つとない竹でうちわをつくるのは何年たっても難しいし、楽しいです」

 97年、丸亀うちわが国の伝統的工芸品に指定されたのを機に、技術の伝承と後継者育成のための「丸亀うちわ技術技法講座」が始まった。竹の伐採からうちわ完成までの全工程を学べる講座で、期間は現在16日間。終了後も1年間、同じ受講室で材料を自由に使い自己研鑽できる。授業料や材料代は無料。これまでに261人が受講した。

 また、受講後もうちわづくりに携わり、丸亀うちわとして恥ずかしくない品をつくれる人を「丸亀うちわニュー・マイスター」に認定。現在31名で、うちわ作家や講師になっている。

※1/通称GSTC(Global Sustenable Tourism Council) ※2/通称GD(Green Destinations)

丸亀うちわ技術技法講座が行われる丸亀
うちわミュージアム(香川県丸亀市)
丸亀うちわ技術技法講座が行われる丸亀うちわミュージアム。うちわの展示や販売、うちわづくりの実演、うちわ製作体験(1本1000円)などがある。入場無料。
丸亀うちわづくりには、大きく分けて「骨」と「貼り」の工程がある(香川県丸亀市)
丸亀うちわづくりには、大きく分けて「骨」と「貼り」の工程がある。この日は「貼り」で、竹の骨に紙を貼る作業を学んでいた。
講師は伝統工芸士や丸亀うちわニュー・マイスター(香川県丸亀市)
講師は伝統工芸士や丸亀うちわニュー・マイスター。丸亀うちわ界のスターによる直接指導だ。
捨てる漁網を挟んで強度を高めるなど、昔から丸亀うちわには廃棄物削減の取り組みが。オリーブの廃材やうどんのゆで網、廃棄うどんを使ったうちわも登場している(香川県丸亀市)
捨てる漁網を挟んで強度を高めるなど、昔から丸亀うちわには廃棄物削減の取り組みが。オリーブの廃材やうどんのゆで網、廃棄うどんを使ったうちわも登場している。

 

 そして、この伝統文化の継承講座は、丸亀市外からの受講や移住という人の交流、うちわの魅力が高まることで観光客の増加やうちわ産業の活性化にもつながっていった。また、竹と和紙のうちわが持つ、自然素材で、電力なしに涼をもたらすエコロジーな面も見逃せない。そんな観光や地域振興、環境保全などに貢献する丸亀うちわへの取り組みにより、丸亀市は世界TOP100の観光地という評価を得たのだ。

 じつは、以前から丸亀うちわは海外で人気だったらしい。

「約10年前から毎年2000人前後のポーランド人がうちわの製作体験に来ます」

 とは、香川県うちわ協同組合連合会の竹田みきさん。

「讃岐うどんには目もくれず、弾丸ツアーで来るんですよ」

 海外からの観光、特にクルーズ船ツアーでは、持続可能な観光地に寄港する傾向があると、丸亀市役所で今回の認証にかかわった宮竹祐輝さんは言う。

 「観光で地域にどんな貢献ができるかを考慮する人が多い、というアンケート結果もあります。認証によって視察や教育旅行も増えるでしょうし、丸亀市には追い風です」

 「いい旅だった」と土産話とともに手渡されることで、江戸時代に「こんぴら参り」の評判を広めた丸亀うちわ。現代の丸亀市の魅力発信にも役立つなんて、歴史とは面白いものだ。

地元の高校生がデザインした「丸亀市SDGsまごころ自動販売機」(香川県丸亀市)
地元の高校生がデザインした「丸亀市SDGsまごころ自動販売機」を、ダイドードリンコ(株)の協力のもと設置。売り上げの一部が丸亀市SDGs推進事業に寄付される。
香川県丸亀市街沖の塩飽諸島
丸亀市街沖の塩飽諸島。明治維新まで自治権を持ち、当時の建造物や町並みなどが今も残る。幕末に米国に渡った咸臨丸を操船したのはこの島々の船乗り。例年5月のゴールデンウイークに開催される「丸亀お城まつり」(香川県丸亀市)
例年5月のゴールデンウイークに開催される「丸亀お城まつり」。丸亀市最大の祭りで、丸亀城天守の修復と国の重要文化財指定を祝って1950年に始まった。

 

丸亀市のSDGsここがスゴイ!

伝統産業の丸亀うちわが世界的に認められたことも活かし、地方創生を目指す。

  • 商工業地も自然も史跡もあり、広範囲でSDGsに取り組める
  • 丸亀城の歴史的建物で「城泊」を提供。文化継承と観光を結ぶ
  • 市内の島では、文化財の古民家を宿泊施設にして交流促進
  • 包括連携協定など民間活力の積極利用でSDGsを推進


「気候が穏やかで住みやすい、魅力あふれるまちです」(秘書政策課 横井俊介さん)

【丸亀市のここがオススメ!】

讃岐うどんに次ぐ香川県の名物・骨付鳥(香川県丸亀市)
讃岐うどんに次ぐ香川県の名物が骨付鳥。鶏の骨付きもも肉を、高温の脂を回しかけながら焼き上げたもので、ジューシーでスパイシー。 丸亀市はその本場。
「レオマリゾート」のアトラクション「オリエンタルトリップ」(香川県丸亀市)
市内には一般的な公園はもちろんテーマパークもあり、休日の家族の遊び場には困らない。写真は「レオマリゾート」のアトラクション「オリエンタルトリップ」。

 

丸亀市移住支援情報
東京圏からの移住世帯や子育て世帯にも支援充実

学校や病院、商業施設などが揃い利便性が高い一方で、のどかな田園風景が広がる丸亀市。東京圏から移住し就業などの要件を満たす世帯へ、移住支援金(2人以上の世帯であれば最大100万円)がある。また、公立小中学校の給食費や18歳までの医療費を無償化するなど子育て支援も充実。移住相談は随時受け付け中。

問い合わせ/秘書政策課 ☎0877-24-8839
https://www.city.marugame.lg.jp/site/iju/

築城400年以上を誇る丸亀のシンボル「丸亀城」
築城400年以上を誇る丸亀のシンボル「丸亀城」。石垣の名城とも呼ばれ、木造天守は国指定重要文化財となっている。

「お気軽にご相談ください!」(秘書政策課 安藤悠子さん)

 

文・写真/大村嘉正 写真提供/丸亀市

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  • 香川県丸亀市。まちのシンボル・丸亀城から望む丸亀市街。
  • 第26回丸亀うちわ技術技法講座の受講生と講師(香川県丸亀市)。
  • 丸亀うちわづくりには、大きく分けて「骨」と「貼り」の工程がある(香川県丸亀市)
  • 丸亀うちわ技術技法講座が行われる丸亀 うちわミュージアム(香川県丸亀市)
  • 講師は伝統工芸士や丸亀うちわニュー・マイスター(香川県丸亀市)
  • 地元の高校生がデザインした「丸亀市SDGsまごころ自動販売機」(香川県丸亀市)
  • 捨てる漁網を挟んで強度を高めるなど、昔から丸亀うちわには廃棄物削減の取り組みが。オリーブの廃材やうどんのゆで網、廃棄うどんを使ったうちわも登場している(香川県丸亀市)
  • 香川県丸亀市街沖の塩飽諸島
  • 讃岐うどんに次ぐ香川県の名物・骨付鳥(香川県丸亀市)
  • 「レオマリゾート」のアトラクション「オリエンタルトリップ」(香川県丸亀市)
  • 築城400年以上を誇る丸亀のシンボル「丸亀城」

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