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田舎暮らしの本 1月号

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田舎暮らしの本 1月号

12月3日(火)
890円(税込)

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【約4万2000円で始めるオフグリッド生活】太陽光発電をDIYして電気を自給!

ちょっと電気の知識があれば、DIYで簡単に設置できる太陽光発電システム。ソーラーパネルをはじめとした必要な機器と、それらのつなぎ方、施工方法を詳しく解説。本誌ライターがエアコンやパソコンのある仕事部屋をオフグリッド化する。

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掲載:2024年11月号

自宅の屋根の太陽光発電を取り付ける

和田義弥
茨城県筑波山麓で自給自足的暮らしを実践するアウトドアライフライター。約5反の田畑で米や野菜を自給し、ヤギやニワトリも飼っている。冬の暖房は100%薪ストーブ。

野菜や米をつくるように電気を自給する

 私が暮らしている茨城県筑波山麓の農村に、近年、ソーラーパネルがどかどか設置されている。太陽光発電は素晴らしいエネルギーだと思うが、森が削られ、田畑が潰されて、里山の景観が壊されていくのは悲しい。つい数日前まで緑だった山肌が、ある日気づいたら一面ソーラーパネルだったりする。これほど醜悪な景色はない。

 大きな果樹園で伐採があったので薪をもらいに行ったら、そこに太陽光発電施設をつくるという話を聞いて嫌になり、手ぶらで帰ってきたこともある。山林や農地の所有者に片っ端から電話をかけて、土地を買い上げる業者のやり方も好きになれない。かといって原発は嫌だ。人間が自分たちの手でどうにかできないものを使うべきではないと思うからだ。化石燃料をじゃんじゃん燃やして、これ以上地球が暑くなるのも耐えられない。

「じゃあ、どうするの? 電気なしで暮らせるの?」と言われると、ぐぅの音も出ないのだが、できることなら何の不安や心配もなく、気持ちよく電気を使いたい。そのためにはどうすればいいか。答えは簡単。野菜や米を自給するように、自分が使う電気を自分でつくればいい。

 田舎に移住して十数年、ようやくそのことに手をつける。本当は、もっとずっとずっと前から電気の自給はやりたかった。ただ、何となく後回しにしてしまっていた。でも、今年こそはやる。そう決めたのだ。

家全部の電気を賄うのに必要なソーラーパネルは?

 太陽光発電のDIYは、ざっくりといえば、必要なパーツを揃えて、それらをつなぐだけである。肝になるのは、どれくらいの容量でシステムを組むかだ。これは家庭の電気使用量や太陽光発電で使いたい電化製品の電力量から考える。

 昨年のわが家の電気使用量を参考にすると、年間で2263kWh。1日当たりでは6.2kWh(一般的な4人世帯の電気使用量の半分以下)。単純に考えれば、これだけの発電量があるソーラーパネルを設置すれば、家全体の電気を太陽光発電で賄えるわけだ。

 ただし、太陽光発電は、常にスペック通りの発電量を得られるわけではない。太陽が出ない夜間はもちろん、季節や天候によっても発電量は大きく変わる。そうした状況を踏まえたうえで、1日の発電量を平均すると最大出力×3時間が目安とされる。とすれば、わが家の電気をすべて太陽光発電で賄おうとした場合、約2kWのソーラーパネルが必要となる。ただ、これではぎりぎりなので、余裕を持って3kWは確保したい。

 そして、忘れてはいけないのがバッテリーだ。ソーラーパネルによる発電だけでは、太陽の出ている日中しか電気を使えない。夜間や悪天候の日でも電気を使えるようにするためには、発電した電気を溜めておけるバッテリーが必要だ。

 では、どれくらいの容量のバッテリーがあればいいか。一般的な12V×100Ahのバッテリーの蓄電容量は12V×100Ah=1200Wh(1.2kWh)となる。わが家で1日に必要な6・2kWhの電力量を溜めるには、このバッテリーが約5.2個必要ということだ。雨や曇天で発電できない日もあるので、3日分と考えれば、18.6kWh。12V×100Ahのバッテリー16個だ。いずれにしてもバッテリーは多ければ多いほどいい。

今回設置する太陽光発電システムの概要

ソーラーパネル2枚を並列につないだ390Wのシステム。電圧は23.6V、電流は2倍になるので16.54A。

今回設置する太陽光発電システムの概要

中古の激安ソーラーパネルを入手

 さて、必要な電力量がわかったところで、ソーラーパネルをはじめとした機器を準備するために、まずは価格調査。といっても、少ない実入りでケチな暮らしをしているので、探すのは激安品。とりあえずアマゾンのサイトで安いソーラーパネルを調べると、100Wで1万円前後が目安。このパネルだと1日の発電量は約300Whなので、わが家で必要な1日の電力量6.2kWhを発電させるには21枚必要だ。

 ソーラーパネルは中古品もたくさん出回っている。中古品は専門のネットショップなどで手に入るが、掘り出しものを探すなら、やっぱりヤフオク。そこで、見つけたのが京セラ製の195Wモデル。2枚セットで1万2000円という代物。最大電圧は23.6V。最大出力は195W×2=390Wとなり、発電量は1日当たり1170Wh。わが家で使用する電気をすべて自給することはできないが、照明とパソコン関連くらいしか電気を使わない仕事部屋ならオフグリッド(電力会社の送電網につながっていない状態)化できそうだ。

 今回、太陽光発電システムを組むのは初めてだし、今後拡張することを考えて、小さく始めてみるのは悪くない。

 バッテリーは12V105Ahのディープサイクルバッテリー。ソーラーパネルで発電した電気をコントロールして、バッテリーの過放電や過充電を防ぐチャージコントローラーは、発電効率に優れるMPPTタイプ。インバーターは定格出力1000W(瞬間最大2000W)の正弦波インバーターを入手した。

太陽光発電のシステム構築に必要な機器

 太陽光発電システムに必要な基本的な機器は、ソーラーパネル、チャージコントローラー、バッテリー、インバーターの4つ。加えてそれらをつなぐケーブルを用意する。それぞれの役割と選び方について解説しよう。

太陽光発電のシステム構築に必要な機器「ソーラーパネル」
ソーラーパネル

シリコン半導体に光が当たると電気が発生する仕組みを利用し、太陽の光を電気エネルギーに変換する装置。1日に発電できる電力量は最大出力×3時間が目安。最大出力が100Wなら300Wh。消費電力100Wのテレビを3時間見られるということだ。ソーラーパネルは複数つなぐことで発電量を増やせる。その際、直列につなぐと電圧が2倍になり、並列につなぐと電流が2倍になる。

太陽光発電のシステム構築に必要な機器「インバーター」
インバーター
ソーラーパネルで発電した直流12Vの電気を家庭で使われる交流10 0Vに変換する装置。製品によって、定格出力が500W、1000W、2000Wなど異なるので、使用したい機器の消費電力を賄えるものを選ぶ。製品によって電気の波形が異なり、家庭のコンセントと同じ正弦波のほか、安価な矩形波や修正正弦波がある。電化製品を正常に作動させるためには正弦波を選ぶこと。

太陽光発電のシステム構築に必要な機器「バッテリー」
バッテリー
ソーラーパネルで発電した電気を蓄えておく装置。鉛蓄電池の一種であるディープサイクルバッテリーが主流。少量の電気を長い時間供給するのに向いていて、充放電を繰り返して長く使い続けられる。リチウムイオン電池は、高価だが小型で蓄電量も多く、充放電の繰り返しにも強い。蓄電容量は、例えば、12V100Ahなら1200Whとなり、単純に考えると満充電で消費電力100Wのテレビが12時間見られる。

太陽光発電のシステム構築に必要な機器「チャージコントローラー」
チャージコントローラー
ソーラーパネルで発電した電気を適切にバッテリーに蓄電するための装置。電圧や電流をコントロールし、バッテリーの過充電や電気の逆流を防止する。MPPTとPWMという制御方法の異なる2つのタイプがあり、高価だが発電効率がいいのはMPPT。発電効率は低いが安価なのはPWM。日々の発電を考えるとMPPTがベストな選択。

太陽光発電のシステム構築に必要な機器「H-CVケーブル」
H-CVケーブル
ソーラーパネルとチャージコントローラーをつなぐケーブル。ケーブルの断面積がソーラーパネルの最大動作電流の値より大きなものを選ぶ。2㎟で31A、3. 5㎟で44Aが許容電流。

太陽光発電のシステム構築に必要な機器「KIVケーブル」
KIVケーブル
チャージコントローラーとバッテリーをつなぐケーブル。ケーブルの断面積がソーラーパネルの最大動作電流より大きいものを選ぶ。2㎟で27A、3.5㎟で37Aが許容電流。

太陽光発電のシステム構築に必要な機器「MC4コネクター、並列コネクター」
MC4コネクター、並列コネクター
H-CVケーブルをつなぐためのコネクター。プラスとマイナスで形状が異なる。ソーラーパネルを並列に接続する場合は並列コネクターを使う。

太陽光発電のシステム構築に必要な機器「ソーラーパネル設置架台」
ソーラーパネル設置架台
ソーラーパネルを設置するための架台。専用のものもあるが、ホームセンターで手に入る金物やレールを利用してもよい。今回は自宅にあった長さ150㎝のアルミアングルを4本使った。

ケーブルをつなぐ順番を間違うとショートの危険

 ソーラーパネルを設置する場所は、仕事部屋に隣接するストレージルーム(収納小屋)の屋根だ。手順は下記をご覧いただきたいが、設置のポイントは3つ。1つめは屋根の防水だ。屋根にビスを打ってソーラーパネルを固定するため、その穴から雨が浸入しないように、コーキングしておく必要がある。

 2つめは、複数のソーラーパネルのつなぎ方だ。直列でつなぐと電流(電気の流れる量)はそのままで電圧(電気を送る圧力)が2倍、並列だと逆に電圧はそのままで電流が2倍になる。今回は並列でつないだが、これはシステム全体の電圧が30Vを超えないようにするためだ。30Vを超えると施工に電気工事士の資格が必要なのである。

 3つめのポイントはケーブルをつなぐ順番である。ここで重要なのは、電気が流れるソーラーパネル本体およびバッテリー本体へのケーブルの接続は、最後に行うということだ。誤って接続してしまった場合にショートしないようにするためである。まず、チャージコントローラー側にすべてのケーブルをつなぐ。次にバッテリー本体にプラス→マイナスの順番でつなぐ。するとチャージコントローラーにバッテリーの電気が流れ、モニターがそれを示す。続いて、ソーラーパネル本体のコネクタをつなぎ、最後にインバーターをつなげば接続完了。晴れた日中であれば、チャージコントローラーのモニターに、ソーラーパネルの発電状態とバッテリーの蓄電量が表示される。

 早速、インバーターにパソコンと周辺機器をつないで、スイッチオン! 同時にエアコンを運転させることにも成功。すごいぞ、太陽光!

 太陽光発電は、システムを組んでしまえば、その後の燃料代がかからないので、ランニングコストが0円なのも素晴らしい。もう少しソーラーパネルとバッテリーを増設すれば、わが家の電気をすべて太陽光で賄うことも可能だ。

 そうやってみんなが屋根の上でちょっとずつ電気を自給すれば、もっと気持ちよく電気を使えるようになるかもね。

太陽光発電システムの設置

太陽光発電システムの設置-1 アルミアングルにビスを打つ穴を開ける
屋根にソーラーパネルを設置するため、アルミアングルにビスを打つ穴を開ける。穴の間隔は屋根の下地(垂木)に合うように45.5㎝とする。

太陽光発電システムの設置-2 ソーラーパネルにアルミアングルを固定
下穴を開けたアルミアングルをソーラーパネルの上下の枠に直接ビスで固定する。ソーラーパネルの屋根への設置は専用の架台を利用してもよい。

太陽光発電システムの設置-3 アスファルトシングルに防水テープを張る
ソーラーパネルを設置する小屋の屋根はアスファルトシングル。ビスを打つ場所にブチルテープ(防水テープ)を張って、雨の浸入を防ぐ。

太陽光発電システムの設置-4 ソーラーパネルを固定する
ソーラーパネルを屋根に上げ、アルミアングルの下穴を屋根の垂木の位置に合わせてビスで固定する。

太陽光発電システムの設置-5 H-CVケーブルにMC4コネクターを取り付ける
H-CVケーブルの一方にMC4コネクターを取り付ける。プラスとマイナスで形状が異なる。もう一方の端は、チャージコントローラーにつなぐため被覆をむく。

太陽光発電システムの設置-6 KIVケーブルとH-CVケーブルをチャージコントローラーにつなげる
バッテリーにつながるKI Vケーブルと、ソーラーパネルにつながるH-CVケーブルをチャージコントローラーに取り付ける。プラスとマイナスを間違えないように注意。

太陽光発電システムの設置-7 KIVケーブルとバッテリーにつなぐ

太陽光発電システムの設置-7 ケーブルの先には丸型端子をつけておく
KIVケーブルをバッテリーにつなぐ。ケーブルの先端には丸型端子をつけておく。プラス→マイナスの順番でつけること。これでチャージコントローラーにバッテリーの電気が流れる。

太陽光発電システムの設置-8 ソーラーパネルのケーブルに並列コネクターを取り付け、チャージコントローラーのケーブルと連結
2枚のソーラーパネルから伸びているケーブルに並列コネクターを取り付け、チャージコントローラーにつながるケーブルと連結する。

太陽光発電システムの設置-9 モニターに電圧が表示

太陽光発電システムの設置-9 インバーターのケーブルをバッテリーにつなぐ
チャージコントローラーにソーラーパネルの電気が流れ、モニターに電圧が表示される。最後にインバーターのケーブルをプラス→マイナスの順でバッテリーにつなぐ。小さな火花が飛ぶが問題はないので大丈夫。

太陽光発電システムが稼働!

太陽光発電システムが完成!
インバーターにパソコン周辺機器とエアコンをつなぎ、各機器のスイッチをオン! よく晴れた日中は、エアコンも電源が落ちることなく稼働し、見事、仕事部屋のオフグリッド化に成功。

 

文・写真・イラスト/和田義弥

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