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田舎暮らしの本 1月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 1月号

12月3日(火)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

【海外で人気の日本の田舎】伝統的な景観や地域行事を守り、暮らしを感じる観光を目指す【島根県】

全国の八百万の神々が集まる出雲大社や、世界遺産に登録されている石見銀山など、豊かな自然と歴史、文化に育まれ、神話が息づく島根県。国際線の定期便や新幹線はないが、日本らしさが残る場所を求め、隣県を経由して多くの外国人観光客が訪れている。

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掲載:2024年11月号

海外メディアを招き、島根の魅力を発信

数千年の歴史を持ち、神話のふるさと出雲を代表する島根県の出雲大社
数千年の歴史を持ち、神話のふるさと出雲を象徴する出雲大社は、海外でも認知度が高い。縁結びの神様としても有名。

島根県の足立美術館は、アメリカの日本庭園専門誌の日本庭園ランキングで21年連続1位
アメリカの日本庭園専門誌『ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング』の日本庭園ランキングで、2003年のランキング開始から21年連続で1位の足立美術館。横山大観などの日本画と日本庭園の調和を追求した美術館だ。

「出雲大社(いづもおおやしろ)や松江城、美しい日本庭園で知られる足立美術館などは海外からの観光客が多く、豪華寝台列車『TWILIGHT EXPRESS 瑞風(みずかぜ)』が立ち寄る雲南市は『たたら』製鉄が古くから盛んに行われてきた地域で、日本刀への興味から足を運ばれる外国の方も少しずつ増えています。欧米の方には石見(いわみ)銀山や津和野(つわの)など、日本らしさが残る観光地も人気です」

 そう話すのは、島根県観光振興課国際観光推進室の谷口奈那さん。島根県の2024年1月〜6月の外国人延べ宿泊者数は4万110人で、コロナ禍前の水準には届いていないものの、少しずつ回復してきている。島根県では、海外からメディアや旅行会社の人を招いた現地視察に力を入れている。台湾、韓国、中国をはじめ、香港、タイ、ベトナム、フランスなどの重点市場別に旅行博への出展やイベント参加などによる現地でのプロモーションを強化。観光ウェブサイトやパンフレット、案内表示の多言語化を進め、津和野の鷺舞(さぎまい)や隠岐(おき)の古典相撲といった伝統行事はSNSを活用して情報発信している。

島根県の菅谷たたら山内は、全国で唯一現存するたたら場
「菅谷たたら山内」を見学する外国人観光客。山内とはたたら製鉄の従事者たちが働き、暮らしていた地区の総称で、全国で唯一現存する「たたら場」だ。

島根県の奥出雲は、日本古来の製鉄法「たたら」の中心地
奥出雲は、砂鉄を原料に鉄をつくる日本古来の製鉄法「たたら」の中心地。雲南市吉田町では、年数回、たたら吹きの見学と体験ができる。(たなべたたらの里)

山陰の小京都といわれる島根県津和野町に伝わる古典芸能神事「鷺舞」
「山陰の小京都」津和野町に伝わる古典芸能神事「鷺舞」。約480年もの歴史を持ち、現在でも奉納されている。

ユネスコ世界ジオパークに認定されている島根県の隠岐諸島
ユネスコ世界ジオパークに認定されている隠岐諸島。国賀海岸(写真)など雄大な美しい自然と希少植物、独特の文化がある。

 県内に3つある空港に国際線の定期便はないが、今年度は出雲縁結び空港からベトナム・ハノイへのチャーター便が運航。また、国際線のある広島市内から松江、出雲、浜田、益田(ますだ)、大田まで1000円の高速バスを運行して誘客を図っている(短期滞在の外国人観光客のみ)。25年の大阪・関西万博に向けて、関西から島根まで2000円のバスも運行、万博での出展も予定している。

「現在、外国の観光客が訪れるのは松江、出雲などの県東部が多いですが、来年は大阪・関西万博でもっと島根県を知ってもらい、県西部や隠岐諸島などにも来ていただけるようPRしていきたいです」

島根県の石見銀山を案内してもらっている外国からの観光客
石見銀山や大森地区をレンタサイクルでめぐる外国からの観光客。

まちにある魅力を活かした「暮らしを感じる観光」

 石見銀山がある大田市大森町で、アパレルブランドを展開する群言堂(ぐんげんどう)グループは、早くから外国人のニーズに柔軟に対応してきた。松場忠(まつばただし)社長はこれまでの取り組みについて、こう話す。

「宿泊業として『暮らす宿 他郷阿部家(たきょうあべけ)』を始めたのは2008年。古い建物を再生させ、そこに息づいていた生活文化を継承するために始めました。日本らしい景観や暮らしに共感いただき、近年は外国のお客さまからの問い合わせが増えています。群言堂本店でも、藍染のクッションカバーや器など、海外でも暮らしに取り入れやすい日本ならではの商品を取り揃え、接客や印刷物の外国語対応を進めています」

 他郷阿部家は、築230年以上の武家屋敷を13年かけて改修した古民家宿。竈(かまど)
で炊き上げたご飯のおむすびや、昔ながらの家庭料理を提供し、家主とともに食卓を囲む。暮らすように宿泊できるのが特徴だ。ほかにも町の空き家を利活用して中長期滞在施設を運営している。

 大森町には、「私たちの暮らしがあるからこそ 世界に誇れる良いまちなのです」という、町のあり方を定めた住民憲章がある。訪れる人にも自分たちの暮らしのなかに身を置いてもらい、生活を共感してもらうことを大事にしている。

「観光というと目的地をピンポイントで巡る移動の多いツアーが一般的でしたが、目的地として地域が消費されていくのではなく、暮らしを感じていただく『生活観光』を目指しています。新しい観光施設や資源を開発しなくても、今あるものにちゃんと共感してくれる方とマッチングできれば、喜んでもらえるはずです。今後も、まちの人たちと緩やかにつながり、日本の文化をリラックスしたかたちで提供していきたいと思います」

世界遺産・石見銀山がある「大森の町並み」は重要伝統的建造物保存地区に選定(島根県大田市)
世界遺産・石見銀山がある「大森の町並み」は重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。左真ん中の建物が群言堂本店。

島根県大田市にある築230年以上の武家屋敷を改装した「暮らす宿 他郷阿部家」
築230年以上の武家屋敷を改装した「暮らす宿 他郷阿部家」の外観。群言堂グループでは、ほかにも空き家の利活用に取り組んでいる。

まだある! 島根県の魅力

歴史、文化、自然のほかにも食や温泉と魅力の多い島根県。外国人観光客にも喜ばれる観光スポットが豊富だ。

・足立美術館のほか、由志園(ゆうしえん)や老舗旅館の名庭など美しい日本庭園が多い
・石見神楽をはじめ、一年を通して伝統行事が各地で催される
・美肌の湯で知られる玉造(たまつくり)温泉など、歴史と風情ある温泉が点在
・宍道湖(しんじこ)のシジミ、出雲そばなど、地元の食材と郷土料理が味わえる


「歴史、自然、食、温泉と日本の文化と暮らしが体感できます」(島根県観光振興課国際観光推進室の谷口奈那さん)

数字で見る! 島根県インバウンドDATA

●外国人延べ宿泊者数
 2023年1月~12月...............53,100人
 2024年1月~6月.................40,110人
 (観光庁「宿泊旅行統計調査」)

●市町村別外国人延べ宿泊客者数(2023年1月~12月)
 松江市..................................43,586人
 出雲市.....................................7,348人
 浜田市.....................................3,294人
 益田市.....................................1,783人
 大田市........................................ 918人
 津和野町.................................... 634人
(「島根県観光動態調査結果」より。市町 村による県内宿泊施設への調査で、県が 独自に集計)

島根県移住支援情報
東京・大阪・広島に相談窓口を設置

島根県では、東京・大阪・広島に相談窓口を設けている。また、オンラインでも移住相談を受け付けている。

お問い合わせ:(公財)ふるさと島根定住財団 ☎︎0852-28-0690
【くらしまねっと】しまね移住情報ポータルサイト|UIターン

 

文/田中泰子 写真提供/島根県、群言堂グループ

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  • 数千年の歴史を持ち、神話のふるさと出雲を代表する島根県の出雲大社
  • 島根県の足立美術館は、アメリカの日本庭園専門誌の日本庭園ランキングで21年連続1位
  • 島根県の菅谷たたら山内は、全国で唯一現存するたたら場
  • 島根県の奥出雲は、日本古来の製鉄法「たたら」の中心地
  • 山陰の小京都といわれる島根県津和野町に伝わる古典芸能神事「鷺舞」
  • ユネスコ世界ジオパークに認定されている島根県の隠岐諸島
  • 島根県大田市にある築230年以上の武家屋敷を改装した「暮らす宿 他郷阿部家」
  • 世界遺産・石見銀山がある「大森の町並み」は重要伝統的建造物保存地区に選定(島根県大田市)

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