都会の喧騒を離れ、美しい自然に囲まれながら、趣味や住まい、大切な人との時間の充実にこだわった田舎暮らしをスタートする人が増えています。本連載では、都会から地方へ移住し、Instagramで移住後の田舎暮らしを発信している方々に、移住のきっかけや移住後のリアルな暮らしについてインタビュー。第7回は東京都から静岡県熱海市に移住し、海の見える一軒家で6匹の猫と暮らす様子を「ネコがくる Life in Atami」のYouTubeやInstagramで発信している、ナナさんとボブさんの夫妻にお話を伺いました。
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【 ネコがくる Life in Amami 】
2020年9月に、夫婦で東京都文京区から静岡県熱海市に移住。南熱海の築58年の一軒家をリノベーションしながら、夫婦と6匹の猫で暮らしている。夫のボブさんは一級建築士、妻のナナさんはヨガ講師。YouTubeやInstagramでは、熱海市の美しい景色の中での可愛らしい猫たちとの暮らしぶりや、自宅のリノベーションの様子を発信している。
ネコがくる Life in Atami |海の見える家 Instagram @lifeinatami
YouTube チャンネル ネコがくる Life in Atami
都会を離れ、自然と調和した暮らしへシフト! 南熱海の海の見える家での暮らしを発信
――最初に、東京から田舎へ移住することになったきっかけを教えていただけますか?
「僕たちは2019年に結婚したんですが、その直後にコロナ禍になったんです。家で過ごす時間が増える中で、自分たちの理想の暮らしや幸せについて考えるようになっていたときに、たまたま『人生フルーツ』というドキュメンタリー映画を二人で観ました。映画の中で、高齢の建築家夫婦が自然の中で丁寧に生きる姿に胸を打たれ、『都会の狭い家に暮らしている場合じゃない!』という共通の目標が固まったんです。そして、東京を離れる決断に至りました」(ボブさん)
――自然と調和した暮らしを求めて移住を決めたのですね。では、なぜ移住先として熱海市を選んだのでしょうか?
「私たちはどちらも海が好きで、海の近くに住もうと決めました。最初は私の実家のある江ノ島エリアや、ボブがロードバイクでよく訪れていた伊豆エリアを検討していたんです。ただ、江ノ島は物件価格が高騰していて、伊豆は東京からちょっと遠すぎるというデメリットがありまして……。そんな中、東京と伊豆の中間地点にあって、自然も感じられる熱海に、次第に魅力を感じるようになったんです」(ナナさん)
――東京から新幹線で約40分の距離は魅力ですよね。熱海市といえば観光地のイメージが強いですが、物件探しはスムーズにいったのでしょうか?
「正直、苦戦しましたね。当初は、熱海駅の近くか、中心街に住みたいと思っていたのですが、物件が少なく、しかも私たちは猫を飼っているので、猫OKの物件となると選択肢がさらに限られてしまって……。仕方なくエリアを広げて探した結果、南熱海の物件に出会えたんです」(ボブさん)
――熱海駅から2駅の場所とのことですが、観光地の熱海とは雰囲気が全く異なるんですよね?
「そうなんです。南熱海は穏やかで、自然が豊か。紹介された築58年の中古物件は、なんと海まで徒歩4分。坂の上にあり、2階の窓からは、青い海のパノラマビューが広がっていて、一目で『ここに住みたい!』と決めました」(ボブさん)
――YouTubeやInstagramでも、窓から見える美しい景色を背景にナナさんが暮らしを楽しんでいる様子がとても素敵で見入ってしまいます。当初は賃貸で住んでいらっしゃったそうですが……?
「そうなんです。まずは試してみようという気持ちで、賃貸で暮らし始めました。
ですが、すぐにこの家とこのまちがすっかり気に入り、ずっと住み続けたいと感じるようになりました。物件の購入を真剣に考えるようになって、賃貸物件のオーナーさんに打診してみたところ、交渉の末、そのままの状態で購入できることになったんです」(ボブさん)
――南熱海のどんなところに惹かれたのでしょうか?
「青い海、緑の山、温泉。南熱海には至る所に足を止めたくなるような景色があって、自然と暮らしが調和しています。地元の方々も温かく迎え入れてくださって、素敵な出会いにも恵まれました。熱海には、私達のように都会から移り住んできたという人が多いので、閉鎖的なところがないんです」(ナナさん)
熱海では、熱海桜が1~2月頃から咲き始める。桜を眺めながらランニングできる遊歩道。
熱海多賀火山の名残が残る景勝地、錦ヶ浦。熱海にはたくさんの絶景スポットがある。
南熱海の海岸沿いにある小山臨海公園は、熱海の美しい自然を感じられる二人のオススメのスポット。
一級建築士のボブさんのリノベーションで、6匹のネコも快適な唯一無二の自宅に
―― ボブさんは東京の不動産デベロッパーに勤務されているんですよね。
「はい。リモートワークも取り入れて、週に2~3日は都内に通っています。熱海駅から東京駅までは約40分なので、思っていた以上に通勤のストレスはありませんでした」(ボブさん)
―― そして、ご自宅はボブさんの一級建築士としての経験と技術があってこそのリノベーションが施されているんですよね。猫たちが快適に暮らせるよう工夫が凝らされていて、お二人の猫への愛情も伝わってきます。
「もともとは90㎡の賃貸住宅でしたが、購入した結果、同じ敷地内の木造アパートも加わり、延べ230㎡の範囲を自宅とヨガスタジオが一体となった空間にリノベーションしています」(ボブさん)
かつて洗面台があったスペースは、外の風を感じながらお酒が楽しめるカウンターにDIYで改装。
南熱海の自然を感じられるヨガ教室は、市内外から人が集まる憩いの場に
―― ナナさんは、ボブさんがリノベーションしたヨガスタジオで、ヨガ講師をされていらっしゃいますが、移住前はどのようなお仕事をされていたのでしょうか?
「IT関係の会社で働いていました。平日は仕事に追われて、休日にはすっかり疲れ果ててしまっているような生活をしていました。熱海に来てからはリモートで勤務しましたが、元々プロのバレエダンサーだったキャリアを買われて、熱海や湯河原でフィットネスインストラクターとしても働き始めました。今は東京の会社は退職して、普段は熱海市街のフィットネススタジオで働きながら、不定期でこの家で少人数のヨガ教室を開いています」(ナナさん)
―― どのような思いでヨガ教室を始められたのでしょうか?
「最初は、美しい自然に癒やされるリトリートヨガの体験を提供することで、市外の方に南熱海の魅力を知ってもらうきっかけになればという想いからスタートしたんです。元々は本業だったバレエを教えたいと思っていましたが、場所の雰囲気や求められていることに合わせて軌道修正していきました。ですが始めてみたら、意外にも地元の方にもご参加いただけるようになりました。40、50代で新しいことを始めるのって、ハードルが高かったりしますよね。わざわざ遠くに出かけてとなるとなおさらです。地元の方にとって新しい挑戦を楽しんでいただける場所になっていることも嬉しく感じています」(ナナさん)
「ここに来て良かった」夫婦と6匹の猫の忙しくも充実した田舎暮らし
―― 移住してみて、困ったことや想定外だったことはありましたか?
「日々の生活を振り返ると、どれも『ここに来て良かった』と感じる瞬間ばかりです。強いて言えば、田舎暮らしは、多くの方が想像するような『暇な』感じはなく、むしろ忙しいということ!」(ボブさん)
「都会のように電車やバスの本数が多くないので、まるでビジネスのように計画を立てて行動します(笑)。そうそう、熱海は坂が多いので、自転車に乗る人がほとんどいないんです。なので、日々の買い物は徒歩か車になることが多くて、買い物も計画的になりましたね。
家のDIYや、ネコたちのお世話、育てた作物を収穫する、それらを使って料理する、お酒を作る、釣りをする、親戚が遊びに来てそれらを振舞う。やること、やりたいこと、新しい楽しみがどんどん増えて、日々忙しくも充実した時間を送っていると感じます」(ナナさん)
―― 移住して良かったと最も感じるのはどんなときでしょう?
「夫婦で6匹の猫たちとゆっくりお酒を飲んでいるときですね。昔から、猫は良い気を放つ居心地のよいところに来ると言われています。私たちのアカウント名『ネコがくる Life in Atami』もそんな家にしていきたいという思いからでした。実際、東京では2匹だったネコが、熱海に来て6匹に増えました。東京に住んでいたら出会うことができなかった猫たちとの暮らしは他に代え難い幸せです」(ボブさん)
―― ご夫婦の関係にも変化がありましたか?
「熱海に移住して始めたYouTubeは、リノベーションの過程を記録していきたいという意図があったんですが、次第に、熱海の魅力を多くの人に発信したいという二人の共通の目標が生まれました。同じ目標を持って一緒に動画を撮影・編集する中で、以前にはなかった新しい絆が生まれたような気がしています」(ボブさん)
―― 最後に、地方移住や田舎暮らしを考えている人へ、メッセージをお願いします!
「移住に興味があっても、家族の事情や仕事の状況によって、なかなか実現が難しい場合もあると思います。実際、途中であきらめてしまう方がとても多いそうです。
もちろん人それぞれ『移住どころではない』人生の重大な局面はあると思います。ですが、それ以外のタイミングであれば、誰もが、シンプルに『住みたいと思った場所に身を置く』という選択の自由があると思います。また同時に、『どこに暮らすか』は人生の岐路ではありますが、案外、やり直しや修正が効くと思うんです。
ぜひ実現してください!」(ボブさん)
写真提供:ネコがくる Life in Amami (@lifeinatami)
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田舎暮らしの本編集部
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