宮城県登米市(とめし)で、約50坪の大きな古民家を取得したOさん。屋根裏部屋を取り外し、天井の高い広々とした平屋の家に再生する工事に挑戦している。たった1人でほとんどの作業を行い、約1年間でほぼ半分の部屋を再生させたDIYの達人だ。
大昔の平屋に戻す感覚で、セルフリフォームに着手
仙台市で主にシステムエンジニアとして活躍してきたOさん(58歳)は、お孫さんと暮らすことになり、早期退職。安くても自分で直せる物件を探し続け、登米市の空き家バンクに登録されたばかりの平屋の古民家を見つけた。すぐに物件を見学し、購入を即決。
「築120年くらいと聞いたんですが、思いのほか天井が低い。そこで屋根裏をのぞいてみたら、太くて黒い立派な部材が現れたんですよ。よく見ると組んでいないほぞ穴が多い。これは解体してここに移築した家で、200年以上前の部材かもしれない。屋根裏をなくして平屋の家に再生すれば、大昔の空間に戻せると思ったんです」と話す。
仙台でも日曜大工で小屋など多くのものを手づくりしてきたOさんだが、そのスキルの高さは半端ではない。ホームセンターで安い材料を見つけては大量に仕入れ、床、壁、天井の木工事、断熱施工、塗装などほぼ全工程の作業をたった1人でやっているのだ。古民家のセルフリフォームを目にする機会は増えているが、2つの天窓まであるのにはびっくり。まさにDIYの達人である。
工事をスタートしてまだ1年余りだが、和室2間をワンフロアにしたリビング、玄関と和室を改造した広いエントランスホール、土間を床あげしてつくった脱衣所、台所と洋間を全面改装したダイニングキッチンなどが完成。高い天井を利用して創作したロフト部屋は、お孫さんの遊び場になっている。
「キッチンは当初、業務用の厨房を入れるという話だったんですけど、毎日使うのは私ですからね。ここだけは譲れないとシステムキッチンに変更してもらいました」と奥さんは笑う。
3人で暮らすには充分過ぎるくらいの広さだが、未完成の部屋が半分ほど残っており、Oさんはその再生工事も続けていくつもりだ。平屋なので作業はやりやすいが、古民家で将来を見据えた段差のないバリアフリー化までは難しそう。その点を聞いたところ「何回か違う大工が改装した建物なので、床の高さを揃えるのはさすがに難しい。いざとなればスロープをつくって、簡単に移動できるようにしますよ。でも、そうならないよう、今から畑でしっかり足腰を鍛えておきます」と頼もしい答えが返ってきた。
約2反の畑もあるので、休んでいる暇はない。自然のなかでお孫さんを育てながら、平屋暮らしを楽しむOさん。ゆとりにあふれたすてきな田舎暮らしだ。
【Oさん物件DATA】
購入価格 250万円
敷地 約1000坪・約3300㎡
延床 約50坪・163㎡
間取り 9DK
築年数 不詳(推定120年以上)
手づくりのブランコで遊ぶお孫さん。何でもつくってくれるおじいちゃんがいて楽しそうだ。
Oさんに聞く!物件探しQ&A
Q. 物件はどのようにして探しましたか?
A. あらゆる情報を頼りに、中古別荘や中古物件など10件ほどを見ました。この家は登米市のHPの空き家バンクで見つけ、すぐに見学しました。
Q. 平屋物件のメリットは何ですか?
A. 屋根裏部屋をなくすと、天井に太い部材が見える広々とした空間になりました。水平移動しやすいので、末永く住める家になりそうです。
登米市空き家バンク 物件探しのアドバイス
空き家探しは「登米市 空き家バンク」で検索。平屋の売家は100万円台から2000万円台までまちまちだが、利便性優先なら郊外、安い物件は山間に多い。
登米市移住支援情報
住まいサポートの補助金あり
申請者及びその配偶者が40歳未満の世帯が300万円以上の中古住宅を取得した場合は最大で25万円、申請者またはその配偶者が40歳未満の世帯が中古住宅を取得した場合は最大で17万5000円、上記に該当しない世帯でも中古住宅の取得で最大で12万5000円を支給。500万円以上の住宅を新築した場合は、一定の条件下で最大50万円の補助金を支給する。
問い合わせ先:観光シティプロモーション課 ☎0220-23-7331 https://www.city.tome.miyagi.jp/
文/山本一典 写真/船橋陽馬
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