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田舎暮らしの本 5月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 5月号

3月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

山里の古民家で水石ギャラリーを営む二拠点生活【群馬県下仁田町】

掲載:2021年5月号

若いころから川や山で石を集めるのが好きで、いつしか水石の世界に魅了された神奈川県出身の柚木泰夫さん。下仁田町の中山間地域に立つ築100年超の元養蚕農家を賃借し、2020年4月に水石ギャラリーをオープン。二拠点生活をしながら、石や古民家の魅力を発信している。

二拠点生活をしながら「そのままギャラリー」を営む柚木泰夫さん。横須賀の自宅からは高速道路利用で車で約4時間
だが、最近は秩父経由の下道で約4時間30分〜5時間かけて来ることが多い。

群馬県南西部に位置し、総面積の約85%を山林と原野が占める緑豊かな下仁田町。中山道の脇往還「上州姫街道」により、交通の要衝としても栄えた。東京から関越自動車道、上信越自動車道経由で約1時間30分。

 

半世紀かけて集めた水石を古民家ギャラリーで展示

 妙義山(みょうぎさん)や荒船山(あらふねやま)といった山々に囲まれ、まちの中央を一級河川の鏑川(かぶらがわ)や南牧川(なんもくがわ)が流れる下仁田町。取材時の3月上旬、中小坂地域にある「あぶだ福寿草の里」では、紅梅と福寿草が見ごろを迎えていた。

 その福寿草の里から徒歩3分ほどのところに、「そのままギャラリー」と書かれた看板が目をひく古民家がある。運営するのは、神奈川県横須賀市と下仁田町での二拠点生活を楽しむ柚木泰夫(ゆき・やすお)さん(77歳)だ。

 展示のメインは、柚木さんが50年以上かけて集めたという「水石(すいせき)」。水石とは、自然石を台座や専用の砂を敷いた水盆に据えて鑑賞する日本の文化だ。そのほか、海岸に流れ着いた「シーグラス」と呼ばれるガラス片で絵やオブジェをつくるシーグラスアートの展示もある。

「月の半分はこちらに来て、ギャラリーを開けています。福寿草の里にも案内を置かせてもらっているから、今の季節はそのお客さんが1日5、6人くらい来てくれますね」

茅葺きの古民家の形をした「茅舎(くずや)」と呼ばれる石。

梅の花のような模様の入った「文様石」。

福寿草を見に来たお客さんが、帰りに立ち寄ることが多い。水石の見方などを教えてもらえる。

「シーグラスランプは美しくユニークです」と、柚木さん。神奈川では教室も開催。

シーグラスを貼り合わせた見返り美人。

 

家賃月1万円の古民家を友人たちと大幅修繕

  昔から山や川で遊ぶのが好きだったという柚木さん。石に興味を持ち始めたのも、自然のなりゆきだったそう。いつの間にか水石のコレクションが増えてしまったため、田舎の古民家で展示したいと、石仲間の川島芳廣(かわしま・よしひろ)さんと2人で定年前から物件を探し始めた。

 本誌の2014年12月号で下仁田町の賃貸の古民家を見つけ、すぐに問い合わせた。大幅修繕が必要で、家賃は月1万円。

「大正時代に建てられた養蚕農家だったけど、最初はひどい状態でした(笑)。7年間空き家でずっと閉め切っていたから、畳は湿気でフカフカ。ギャラリーにしようと思っていた2階は足の踏み場がないくらいモノでいっぱいでした」

 改装は主に川島さんと2人で行った。当時は会社に勤めていたので、土日を利用して月2回のペースで作業。大家さんの許可を得て荷物を処分しながら、畳をはがし、購入した中古の畳に入れ替えた。板の間の中央をくりぬいて、憧れの囲炉裏も自作。客人用の布団をしまう押し入れは新しくしたかったので、工務店を営む奥さんの兄に頼んでつくってもらった。奥さんも趣味の山登りがてら下仁田町に来て、片付けを手伝ったり、古民家にあった古布や未使用の手拭いを使い、のれんや座布団をつくってくれた。

 材料でいちばん高かったのは、展示用の台にするベニヤ板。20台ほど必要なうえ、石を載せるのである程度厚みがないと割れてしまうからだ。

「川島さんをはじめ、友人や家族の協力があったからこそ最後までやりとげられました」

「あぶだ福寿草の里」の紅梅の間から、集落と、その向こうにそびえる妙義山を眺める。

地域のボランティア活動により守られている福寿草。見ごろは毎年2月中旬から3月中旬。

山が見える場所に、古民家から出てきた椅子を設置。今あるものをうまく使えば、お金をかけなくても豊かな田舎暮らしができる。

そのままギャラリー
群馬県甘楽郡下仁田町中小坂2230
☎︎090-8030-9421

床をくりぬいて自作した囲炉裏。「冬にここで下仁田ネギを焼いて食べるとうまいんだ」。

夜、レコードで音楽を流しながらお酒を飲むのは、柚木さんにとって至福の時間だ。

奥さんがつくってくれた惣菜などを持参し、滞在期間中はそこに地元の野菜を足して食事をつくる。

コロナ禍以前には、仲間が遊びに来ると囲炉裏を囲んで宴会を楽しんだりもした。

 

お金は改修にではなく楽しみのために使う

  片付けと修繕に数年かかり、ギャラリーがオープンしたのは昨年の4月。コロナ禍でのスタートのため大勢のお客さんを迎えられる状態ではないが、石好きな人にも水石をまったく知らずに訪れる人に対しても、柚木さんは一つひとつの石についてていねいに説明をする。

「ギャラリーは入場無料で、販売もしていません。自分の小遣いの範囲内でやっています。お金は楽しみのために使うのがいちばん。だから家を直すのにはあまりお金をかけず、古民家にあるものを装飾に使ったりして、みんなに喜んでもらえるようにしているんです」と、柚木さん。

「この周辺には古民家が点在していて、ご近所にはオリジナルの手回しオルゴールのスタジオをやっている方もいたりします。そういうふうにここを拠点に自分の好きなことをやる人が増えて、それぞれがつながってくれば、おのずと観光資源みたいになると思いますよ。そして、人がもっと集まるおもしろい場所になっていくんじゃないかな」

福寿草の里のボランティアの方と。「来場者にギャラリーの宣伝をしてくれるんです」と、柚木さん。

近所でオリジナルの手回しオルゴールのスタジオを営む山田幸男さんと。

昔からDI Yが好きだったので、工具は一式揃っている。

家の前には畑があり、下仁田ネギを栽培中。「月の半分はいないから、ほったらかしでも育つネギを植えています(笑)」。

「遊びに来る石仲間を、下仁田ネギでもてなします」と、柚木さん。

 

柚木さんの二拠点居住の1カ月の支出

家賃  1万円
電気代  約2000円
ガス代 約2000円
水道代 約2000円
移動の高速代(往復) 約6000円
移動のガソリン代(往復) 約5000円

※時間帯によっては、高速道路を使わない場合もある
※食事は神奈川県の自宅から奥さんの料理を持参


 

下仁田町移住支援情報

道の駅「しもにた」で気軽に移住相談を

空き家バンクには売買のほか賃貸物件もあり、二拠点としての利用も可能。補助金は改修に最大100万円、家財処分に最大10万円。子育て支援にも力を入れており、出産祝金や入学祝金などがある。起業したい人向けにはチャレンジショップやテレワークオフィスも。移住相談窓口は道の駅「しもにた」の観光協会内に併設。

(問)下仁田町暮らしの相談窓口
☎0274-67-7500
https://www.town.shimonita.lg.jp/shimonita-life/
(問)企画課 ☎︎0274-82-2111(代)

下仁田町観光協会の皆さん。移住相談もここで受け付け中。

空き家バンクの古民家物件内覧の様子。


 

群馬県移住支援情報

都市部から里山暮らしまで自分に合った暮らしを支援

ポータルサイト「ぐんまな日々」では、移住した人のインタビューを通して「ぐんま暮らし」の魅力を発信。県内での就職、起業、就農などの仕事の相談窓口の紹介や、各市町村の具体的な支援制度へのリンクもあるので、移住先を検討するのに役立つ。電話やメールのほか、オンラインでの移住相談も可能(予約制)。

(問)ぐんま暮らし・外国人活躍推進課
☎027-226-2371
https://gunmagurashi.pref.gunma.jp/

東京・有楽町「ぐんま暮らし支援センター」相談員の皆さん。

群馬県では、子育て環境を整えるなど、ファミリーの移住にも力を入れている。

文/はっさく堂 写真/村松弘敏

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