田舎暮らしの本 Web

  • 田舎暮らしの本 公式Facebookはこちら
  • 田舎暮らしの本 メールマガジン 登録はこちらから
  • 田舎暮らしの本 公式Instagramはこちら
  • 田舎暮らしの本 公式X(Twitter)はこちら

田舎暮らしの本 11月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 11月号

10月3日(木)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

歴史ロマンの里でカフェを開業。ジャズが流れる古民家で多国籍料理を提供【奈良県明日香村】

古代史好きという共通の趣味を通じて出会った夫妻は、数多くの歴史遺産が彩る古都、明日香村に魅了されて移住。「観光客に依存することなく自分たちにできることを」と古民家カフェを営み、食やモノを通じて村の魅力向上に努めている。

掲載:2021年12月号

田舎カフェ

加藤さん夫妻は明日香村へ移住して4年後の2006年にカフェを開業し、15年に築約200年の古民家へ移転。専門工事以外の改装は自分たちで手がけた。

明日香を訪れる側から、明日香へ呼び込む側に

 明日香村のなかでも、石舞台(いしぶたい)古墳からほど近い岡地区内。風情ある町家が並ぶ通り沿いに元造り酒屋の古民家がたたずむ。ここで「カフェことだま」を営んでいるのが、加藤準一(かとうじゅんいち)さん(62歳)・典子(のりこ)さん(50歳)夫妻だ。準一さんは東京の化粧品会社や飲食店で働き、典子さんは岡山で考古学関係の仕事などをする傍ら、ともに歴史ロマンあふれる明日香村にひかれて通うなかで出会い、結婚。奈良市内での仮住まい後、2002年に明日香村へ移住し、一緒に店を立ち上げようと思い至った。

「最初に借りた物件は人通りが少ない場所にあり、飲食ならわざわざ足を運んでもらえるかなと考えたのが、カフェに決めたそもそもの理由です」

 そう話すのは典子さん。06年に開業すると経営は順調だったが、賃貸契約終了に伴って今の場所へ移転することに。

「ここは、以前にお蕎麦屋さんが入っていたときから憧れの物件でした。そのお店の撤退後は空き家になっていて、縁あって運よく借りられたんです」

田舎カフェ

歴史的な景観を残す通り沿いに立つ建物は、築約200年の風格が漂う元造り酒屋。

田舎カフェ

ジャズが流れる和モダンな店内。地域の人に譲ってもらった家具など、レトロな調度品が趣を添える。

石舞台古墳

サクラの名所でもある石舞台古墳へは店から徒歩約5分。日本最大級の石室を持ち、蘇我馬子(そがのうまこ)の墓と伝えられる。

 床の板張りや壁の珪藻土塗りなど、専門工事以外の内装は基本的に自分たちで改修。3カ月ほどで準備を整え、15 年3月にオープンさせた。現在は準一さんが厨房を担当し、典子さんは経営全般や接客にあたる。1日200人近い来店客があるため、10人ほどのスタッフで切り盛りしているが、好調の要因を準一さんはこう分析する。

「明日香村は観光地という印象がある半面、実際の観光客はコロナ禍以前で年間60万人ほどとさほど多くはなく、春・秋に集中。その半分近くが修学旅行生などで、観光客相手だけでは経営が成り立たないと考えました。そこで、料理は地元の旬の野菜や古代米、豆腐などを使いながら、イタリアン風や韓国風といったアレンジを加え、地元の方に非日常を楽しんでいただけるよう工夫しています」

 14時以降のティータイムには、村特産のイチゴ「あすかルビー」など季節の果物を使ったパフェや韓国風かき氷「パッピンス」が好評。入り口付近の広いスペースを生かしてギャラリーや地元産品コーナーを併設し、飲食やまち歩きがてらに立ち寄れるようにもした。

「想定よりも事業が広がり、ゆっくり明日香を楽しむ余裕がありません。でも、この店を成功させることが私たちの役割」と、準一さん。

 自分たちの姿を見て、この村で何か始めたいと思う人が増え、にぎわいの創出につながることが2人の願いだ。

田舎カフェ

食事はランチタイム(11:00~14:00 LO)の「ことだまランチ(1650円)」のみ。2週間ごとに内容が替わり、デザートや飲み物付き。数量限定のため予約が望ましい。

田舎カフェ

ギャラリーコーナー「TE・HI・TO(てひと)」には、アクセサリーや木工・陶芸作品ほか、奈良県内を中心とする若手作家の作品が揃う。

田舎カフェ

ショップも併設し、自家製の「あすかルビーのドレッシング」をはじめ、明日香村や奈良県の産品を販売。

オーナー加藤さん夫妻から田舎カフェ開業へのアドバイス!

「ニーズの実情を知ることが大切です」
自分がやりたいこととマーケットが望むことが同じとは限りません。観光客が来るだろうと安易に思い込み、自分の好みを打ち出すだけでは失敗も。私たちの場合、観光客に頼らずにお客さまをどう呼ぶか工夫。店舗改装の様子をブログにアップしたり、今ならインスタを活用したり、そのとき一番効果的な情報発信も意識しています。

caféことだま
☎0744-54-4010
住所/奈良県高市郡明日香村岡1223
営業時間/10:00~17:00(土・日曜・祝日~18:00)
定休日/火曜、第3水曜(祝日の場合は要問い合わせ)
https://www.cafe-kotodama.com
Instagram/@cafe.kotodama

 

明日香村

奈良県明日香村(あすかむら)
6世紀末から約100年間、都が置かれた明日香村は、奈良盆地南東部にある人口5427人(2021年8月現在)の農村。キトラ古墳や高松塚古墳など数々の歴史遺産と棚田や里山の風景が共存する。大阪市内から有料道路を利用して車で約1時間。

明日香村移住支援情報
古都での移住・開業を幅広くサポート

歴史的風土を保存するため村全体が「明日香法」という法律によって守られ、一歩踏み込めばいにしえの飛鳥が匂い立つ明日香村。空き家バンク制度で移住や開業を支援しており、最大200万円の空き家リフォーム補助金や、100万円の子育て世帯の新築補助金などを用意。近年は古民家を活用した飲食店や宿泊施設も増えている。

総合政策課 ☎︎0744-54-2001
https://asukamura.jp

明日香村

棚田と農村集落による明日香の原風景(細川地区)。

官民連携の取り組みにより、古民家を活用した宿泊施設。

「来村時は私たちがご案内をします! ぜひ一度、明日香村へお越しください」(総合政策課移住定住担当 榊本健太さん〈左〉、集落支援員 安田千鶴代さん)

 

文・写真/笹木博幸

この記事のタグ

田舎暮らしの記事をシェアする

田舎暮らしの関連記事

「東京に固執しなくていい」とUターン。古民家カフェをコミュニティの場に【滋賀県長浜市】

大阪の村の古民家で始まる最先端。カフェレストラン&ヘアサロン+α【大阪府千早赤阪村】

脱サラして新規就農し、農地でカフェを開業! 朝穫れ野菜たっぷりランチが人気【兵庫県三木市】

震災を機に移住して農家に転身。地元密着の農家カフェで丹後の魅力を発信中!【京都府京丹後市】

【東海エリアの憧れ移住スタイル~岐阜県大垣市~】地域に溶け込み、工房とカフェを営む

この夏、指圧院&カフェを開業! 東京では難しい夢をかなえる【山梨県韮崎市】

移住者数が3年で3倍に! ずっと住み続けたいまち【愛媛県今治市】本誌ランキング2年連続 全4部門1位!

【築100年古民家】絵本のような絶景に包まれた秘境の美しい伝統住宅!200万円の9LDKはほぼ改修不要!? 宿泊施設や飲食店にも活用可能!【福島県金山町】

海・山一望の大規模ニュータウン「伊豆下田オーシャンビュー蓮台寺高原」には素敵な物件がたくさん【静岡県下田市】