農地に小さな小屋を建ててしまった方からの相談に、ベテラン田舎暮らしライターが答えます。
親戚の農家に、「あの畑は自由に使っていい」と言われました。約200坪の荒れた土地ですが、トラクターで畑に戻しました。野菜を育てているうちに面白くなり、小さな家をセルフビルド。ところが、親戚が飛んできて「栽培は自由にやっていいけど、家を建てるのは農地法違反。農業委員会が目をつけているから、原状回復命令が出る前に解体・整地しろ」と言われてしまいました。
東京都在住 村田さん●28歳
荒れ放題の田畑でも復帰できるものは農地
村田さんは荒れた畑を無断で造成して小さな家を建てたら、農業委員会に目をつけらると言われた。使わずに荒れ放題の畑でも、農地とみなされるのだろうか? 答えはイエス。農地法には、現況主義というものがあるからだ。ややこしい話になるが、山林を開墾して畑となった土地、手を加えれば耕作が復帰できる土地は、厳密には農地と判断されるのである。
農地に家を建てれば、日陰ができる。そこに人が住めば、排水も流出する。使い方次第では周りの農地に重大な影響が出るので、宅地に変える農地転用は慎重に判断しなければならない。都会の人が宅地化を前提に農地を買う場合は、「農地法第5条」の申請が必要。これを一般に「5条申請」と言う。許可申請の窓口は3条と同様、農業委員会になる(都市計画区域内の市街化区域は届け出だけでOK)。
農地の無断転用には罰金などの厳しい罰則が
5条申請とは、所有権移転と農地の地目変更を同時に行うもの,窓口は農業委員会だが、知事(4ヘクタールを超える場合は大臣)の許可が必要だ。その事務手鏡きは図で示したように、たいてい6週間程度かかる。
転用が認められる面積は通常、一般住宅の敷地で150坪、農家住宅なら300坪まで(のり面と進入路を除く)。
農業委員会は無断転用の防止を呼びかけており、違反した者には工事中止や原状回復の命令が下される。それでも従わない個人には3年以下の懲役または300方円以下の罰金という厳しい罰則が設けられている。農地の所有者である村田さんの親類が、慌てて飛んできたのはそのため。荒れた農地だから小さな家くらい、と安易に考えてはいけないのだ。
文・写真/山本一典 イラスト/関上絵美
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この記事を書いた人
山本一典
田舎暮らしライター/1959年、北海道北見市生まれ。神奈川大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、85年からフリーライター。『毎日グラフ』『月刊ミリオン』で連載を執筆。87年の『田舎暮らしの本』創刊から取材スタッフとして活動。2001年に一家で福島県田村市都路町に移住。著書に『田舎不動産の見方・買い方』(宝島社)、『失敗しない田舎暮らし入門』『夫婦いっしょに田舎暮らしを実現する本』『お金がなくても田舎暮らしを成功させる100カ条』『福島で生きる!』(いずれも洋泉社)など。
Website:https://miyakozi81.blog.fc2.com/
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