掲載:2022年3月号
広島市・呉市といった都市部と船や橋で結ばれ、都市機能もほどよく整っている江田島市。瀬戸内海と緑豊かな山々が彩るこのまちへ移住したのは、災害ボランティアに携わってきた夫妻。穏やかな気候と人に恵まれ、DIY生活をしながら里山保全にも取り組んでいる。
海を見下ろす高台の家で、理想の空間づくりに励む
周りを島が囲む内湾(ないわん)の穏やかな環境を生かし、牡蠣の養殖が盛んな江田島湾。牡蠣筏(かきいかだ)が浮かぶのどかな風景と、歴史的建造物の旧海軍兵学校(海上自衛隊)を望む斜面に、鉄骨造の広い地下ガレージを併設した木造の平屋がたたずむ。
「室内がとてもきれいに保たれていたことと、トイレが水洗だったこと、そしてこの美しい海の眺めにひかれました」
そう話すのは、大阪府出身の岡本良太(おかもとりょうた)さん(54歳)。早期退職して呉市へ移住し、1年ほど里山再生のNPO法人で活動したのち、呉市出身の宏美(ひろみ)さん(39歳)と結婚。将来、カフェやゲストハウスを開くことも見据え、空き家バンクでこの家を見つけて購入し、2021年8月に移住した。
改修は基本的にDIY。家の下に広がる約100坪の空地も自分で開墾し、自給自足的に暮らすための菜園と、駐車場を兼ねた趣味のラジコンのサーキットとして整備する計画だ。
「耕うん機、チェーンソー、草刈り機、旋盤などは、不用品を頂いて修理して活用していますし、発電機も廃品を修理して使う予定。今は本格的なDIYを始めるための道具を準備している段階です。とにかく、お金がないもんですから(笑)」
もともと災害ボランティアとして活躍してきた岡本さんは、その経験や知識を今後の活動に還元していくという。併せて、災害や獣害防止につながる里山再生の取り組みを続けていくため、放置林の竹材を使った竹炭工房で働いている。
一方、宏美さんは、お菓子づくりやピザづくりの趣味を生かし、広島市内のカフェに勤務。すぐ近くの港から高速艇が出ているため不自由はない。
このまちの住み心地について、岡本さんはこう話す。
「まず印象的なのが暖かいこと。冬に広島市内で雪が降っていてもこちらは降らず、天気がよければ作業をしていると汗をかくぐらい。何より、近所の皆さんが優しい。使いきれないほど野菜や魚を分けてくださったり、ピザを焼いてお裾分けしたら、それ以上に豪華な料理をつくって持ってきてくれたり、本当にお世話になっています」
今はまだ日々の仕事や活動に追われ、島内巡りを楽しむ余裕はないという2人だが、心温まる日常の喜びは大きい。
文・写真/笹木博幸
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