掲載:2022年2月号
川端さん夫妻は、地域おこし協力隊として移り住んだ里で、自分の山から切り出した材で家を建てている。いろんな人の知恵と力、SNSのしくみも融合させて、新しい山里暮らしを紡いでいる。
林業夫婦がプロデュース。共に学び作業する家づくり
標高400m前後に広がる大石の棚田。川端さん夫妻は、その展望台に近い10反の土地を購入した。そのうち、母屋や作業小屋などを予定する敷地は3反。それを囲む7反の山林から川端さん夫妻が自伐した木や、古民家の建具、瓦、柱などを利用して28坪の平屋をセルフビルドする計画だ。
俊雄さんは、本山町の地域おこし協力隊として林業の世界に入り、今年で9年。
「林業にはいろんな喜びがありますが、一番は次の世代に山を渡せること。その山にはたぶん、僕の山づくりの意思が残る。僕が死んだあとも、わかる人にはそれが伝わるのがいい」
聖佳さんは、20代前半まで農業とともにある暮らしを探求して国内外を旅していた。安田町で開かれたセルフビルドのワークショップで俊雄さんと出会い、2015年に本山町の地域おこし協力隊員になった。
2人は現在、「ヤドリギ」という屋号で林業やお茶の栽培・販売、情報発信をしている。お米は1反3畝の棚田で自給。お茶や梅干し、味噌、ジャムなどもつくり、コーヒーは自家焙煎だ。でも、一番時間をかけているのはDIYだという。
「新居のセルフビルドでは、木の伐採だけでなく、製材も乾燥も自分たちで。地元の木工所で製材機を1日貸してくれます。木材の天然乾燥には1年以上必要で、建設に着手してもう2年。完成までさらに2年です」
森を拓き、そこで家を建てるなんて、まさに昔ながらの山里の暮らし。
「今どきこんな家づくりは珍しい。だから、僕ら夫婦だけで楽しむのはもったいないなと」
川端さん夫妻が考えているのが、土壁塗りや暖炉づくりなどの工程別ワークショップ。
「基本的に、工程ごとに左官などプロの職人を雇い、彼らに教わりながら一緒に作業していく学びの場です」
伐採も製材も自分でやるけど、セルフビルド原理主義じゃないんですよと俊雄さん。
「いい家を建てないと意味がないですから。アクの強い家を残すと、子どもに迷惑がかかります(笑)」
職人の雇い賃や建築費用の一部はクラウドファンディングで資金を募る。その対価が、プロに学ぶ建築工程別のワークショップというわけだ。
川端さん夫妻の家づくりは、日本の中山間地では戦前まで珍しくなかった、地域に手伝ってもらいながらの家づくりに似ている。どのように建築が進むのか気になる人は、夫妻のweb「ヤドリギ」やYouTube「セイカの暮らし便り」を要チェック
だ。
川端さん夫妻に聞く「移住して、ここが変わった!」
俊雄さん「消費する生活から、生産する生活にガラッと変わった。田舎は買えるものが限られているからこそ、つくることが楽しめる」
聖佳さん「移住前は、趣味を楽しむために、例えばステンドグラス工房にわざわざ通う、なんてことがあったけど、こっちだと始終趣味的なことをしている感覚がある。仕事も趣味も暮らしになじんでいます」
本山町移住支援情報
高知県移住支援情報移住者の家探しと入居への準備を支援
移住・定住希望者に空き家情報を提供する「空き家バンク」や、移住定住促進住宅を用意。空き家に残されていた荷物の整理や運搬、処分をする場合、居住希望の移住者は1事業当たり10万円が上限の「空き家の荷物整理等補助事業」も利用できる。
まちづくり推進課 ☎0887-76-3916
https://www.town.motoyama.kochi.jp/kurashi_tetsuzuki/iju_teiju/612.html
文・写真/大村嘉正
この記事のタグ
田舎暮らしの記事をシェアする