「ある人と出会って移住を決めました」と話す移住者は多い。靴職人として独立を模索していた栗原さんもそのひとり。趣味のスケートボードがきっかけで運命的な出会いを果たし、念願の起業と田舎暮らしをスタートさせた。
掲載:2022年3月号
「自分の店を持ちたい」――靴職人の願いが結実
1つの出会いが、地方に根を下ろし、新たな生活を始める大きなきっかけとなることがある。
靴職人の栗原一平さん(37歳)が、友人のすすめでみやま市のオーダースーツ店「クロキ ビスポーク ルーム」代表の黒木雄平さんに出会ったのは、2018年春のこと。
当時、栗原さんは広島県で勤めていた靴修理店が閉店した直後。福岡県八女市(やめし)の実姉宅に居候しながら、工房を置く拠点を近隣で探していた。「今後、何らかのつながりができれば」と、軽い気持ちで黒木さんの店舗に足を運んだ。
栗原さんはスケートボード、黒木さんは靴底に車輪が縦1列に並ぶインラインスケートがそれぞれ趣味。共通の友人も多く、意気投合した。
話の流れで拠点を探していることを打ち明けると、黒木さんから「うちの店は2階が空いているから、使ってもいいよ」と申し出があり、間借りすることが決まった。
「思いがけずトントン拍子で話がまとまって……。まさに運命的な出会いだったと思います」と栗原さん。これを機にみやま市への移住を決断した栗原さんは、店舗近くにアパートを借り、新しい生活をスタートさせた。
念願がかない自分の店を構えることができたが、その後も黒木さんから顧客を紹介してもらうなど、起業直後の経営的に不安定な時期を下支えしてもらうかたちにもなった。
黒木さんとの「縁結び」のきっかけになったのは趣味のスケボーだが、実際、移住者が地域に溶け込む突破口として趣味は非常に有効だ。自らの性格を「人見知り」と語る栗原さんは「じつは黒木さんを紹介してくれた友人もスケボー仲間。スケボーをしていなかったら開業できたかわからないし、みやま市で友達も増えていないと思う」と振り返る。
みやま市の印象について栗原さんに聞くと、人に関しては「のんびりと気ぜわしくない風土」と分析。生活面では、鉄道や高速道路など交通の便がよく住みやすいとのこと。また、街中にはこだわりの強い飲食店や、レトロな雰囲気あふれるプラモデル店などがあり、「個性あふれる店舗が多く面白い」と話す。一方で、外出する際、車の利用が不可欠であることがちょっとした悩み。外にお酒を飲みに行くときなどに不便を感じることもあるそう。
移住後は、仕事とスケボーをを週2〜3日楽しむ日々を送っていたが、21年秋、待望の長女・侑汰(うた)ちゃん(3カ月)が誕生。新米パパとして育児に奮闘中だ。
「みやま市は、待機児童もゼロのようなので安心。見学した保育所から逆にアプローチがあるくらいで驚いています」と妻の有季(ゆき)さん(36歳)は笑顔を見せる。
地元の観光協会などが主催する体験型講座で、黒木さんと一緒に靴の磨き方講座を定期的に開いている栗原さん。「今後も同様の講座を継続するなどして、地域とのかかわりを大切にしていきたい」と力を込める。
栗原さん夫妻に聞く「移住して大きく変わったこと」
一平さん 「地域の方から、野菜などをおすそ分けしていただく機会が格段に増えました。都会で暮らしていたときには考えられないことで、とても感謝しています」
有季さん 「面識のない子どもたちでも『こんにちは!』と、元気にあいさつしてもらうことが多く最初はびっくり。私も、大きな声であいさつするようになりました!」
みやま市移住支援情報
都市部からの移住者に支援金。移住前訪問の交通費も補助
東京など、都市部からの移住者を対象とした移住支援金(最大100万円)や、移住検討者の旅費を支援する補助金(最大2万5000円/人)などのメニューを用意。みやま市は生ごみなどから電気や液肥をつくるバイオマスセンターの稼働など、循環型社会を推進中。福岡県内最大級のスケートボード場も。
みやま市企画振興課 ☎︎0944-64-1550
https://www.city.miyama.lg.jp/li/kurashi/090
文・写真/竹内 章
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