独立や結婚を機に、祖母の家がある多久市へ孫ターン。さらに運命は巡り、祖先のルーツがある農村地帯の古民家を購入し、自分でデザイン・設計してリノベーションした藤井さん。その経緯を語ってもらった。
掲載:2022年3月号
便利な住宅地から農村地帯へステップ移住
東西南北を山に囲まれ、中央を牛津川がのどかに流れる多久市。住宅地と北部に山が広がる北多久町、農村風景が残る西多久町など、5地域に分かれる。
「最初に北多久町、今は西多久町に暮らしてみて、地域によって異なり、多様性がある市だったんだなと実感しています」
そう話すのは、2013年に北多久町の祖母の家へ孫ターンし、その後西多久町の古民家で暮らす藤井啓輔(ふじいけいすけ)さん(39歳)だ。
埼玉県で生まれ育った啓輔さんは、東京で建築パースの製図会社に勤めていたが、満員電車での通勤や高い家賃など都市部での暮らしに違和感を持っていた。仕事の独立や、付き合っていた美登理(みどり)さん(39歳)との結婚もあり、移住を考えるように。
「多久市の祖母の家が長く空き家状態で。幼いころ夏休みに遊んだ思い出がよみがえり、移住を決めました」
山口県出身の美登理さんも、自然豊かなところでの子育てを考えていたため、もちろん賛成。
移住とともに独立した仕事は、当初は東京の会社から紹介を受けていたが、ペーパーデザインや映像など幅を広げたことで、翌年には九州のクライアントが主になった。
21年、藤井さん家族の運命は再び一変。西多久町の築120年の古民家を購入したのだ。
きっかけは仕事で内装デザインも手がけたこと。自分の好きに家をデザインしたいという思いが強くなり、空き家を探していた。
「古民家にこだわりはなかったのですが、この物件を知人から紹介され購入しました。西多久町は、僕の祖先の出身地らしく、なんかルーツをさかのぼっているようですね(笑)」
啓輔さんがデザインし、設計図を引き、それを元に大工さんと相談しながら改修を進めた。一部は啓輔さんが自分で作業し、21年8月に新居へ引っ越した。
「住宅地だった前のところと違い、ここは農村文化が色濃いエリア。地域の皆さんが親切で、野菜をいただくことも多いです。最初から西多久町に移住していたら慣れなくて苦労したかも」
まず便利な北多久町で暮らし、その後、西多久町へと、意図したわけではないがステップ移住したことがよかったようだ。
現在、長男の嗣晴くんは市内の小中一貫校へバス通学、長女の朝日ちゃんは、美登理さんの送迎で北多久町の保育園へ通っている。休みには、山へ行ったり、啓輔さんが好きなキャンプをしたり、有明海の干潟も近く、家族で自然を満喫している。
「多久市は、待機児童ゼロですし、全域が小中一貫校と、教育環境は充実しています。公園が多いのもうれしいですね」と美登理さん。
今後は、西多久町の地域活動にも参加していきたいと話す啓輔さん。「地域それぞれにポテンシャルがあります。この地域の魅力を探し、楽しくしていきたいですね」と笑う。啓輔さんのスキルで農村地帯がどのように変化するのか、今後が楽しみだ。
藤井啓輔さんに聞く「移住して大きく変わったこと」
まず心とからだが健康になりました。食べ物はもちろん、水道の水も東京とはまったく違います。東京での消費生活から、何かを生み出す暮らしになりました。
多久市移住支援情報
家の取得や増改築に補助。子育て支援施設も充実!
家の取得や増改築で上限50万円の補助のほか、新婚世帯や移住世帯に最大月1万円(最長48カ月)の家賃補助がある。0~18歳までの医療費助成、義務教育校はすべて小中一貫教育、市内にある13の保育園・認定こども園は待機児童ゼロ、無料で利用できる児童センターに子育て支援施設を集約するなど、子育て環境も整っている。
多久市総合政策課 ☎0952-75-2116
https://www.city.taku.lg.jp/soshiki/14/2769.html
文/水野昌美 写真/樋渡新一
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