掲載:2022年8月号
ユネスコ世界ジオパーク認定のダイナミックな自然を守り、空海が悟りを開いた聖地である室戸市。イルカやウミガメが生息する海は、良質な魚介類の宝庫としても名高い。趣味のサーフィンを楽しみ、ゲストハウス開業を計画していた男性にとって、まさに理想的な環境だった。
海のある生活にあこがれ、空海ゆかりの聖地へ
日本八景の室戸岬や、空海が悟りを開いた地とされる御厨人窟(みくろど)に近い東海岸で、2020年1月にゲストハウスを立ち上げたのが、サーフィン好きの河合英治(かわいえいじ)さん(49歳)。インテリアメーカーの技術者だったが、海のある暮らしを求めて19年9月に東京から移住した。
「私は徳島県出身、妻は高知県出身なので、四国のサーフィンができる場所で探すなか、大自然と歴史・文化と食が身近に揃う室戸市に強くひかれました」
と、河合さん。物件を見つけると、東京時代の仲間のデザイナーに依頼し、海、空、森、岬をテーマに客室を整備。食事は東京から高知県に移住した料理研究家に、室戸の食材を使った健康によいレシピを考案してもらった。しかし、順調な船出の矢先、コロナ禍が直撃。呼び寄せる予定だった妻の京(きょう)さんは東京で仕事を続けることに。それでも河合さんは前向きだ。
「当面の対策としてカフェを始めたところ、地元の多くの方にご利用いただきました。ところがGoToトラベル事業で宿が忙しくなり、カフェは終了。するとまたコロナ蔓延で客足が激減。継続的にできる事業がないと厳しいと痛感し、思いついたのが加工食品です」
好評を得たパウンドケーキに続き、第2弾は地元特産のキンメダイのオイル煮(コンフィ)を発売。さらに地元向け事業としてテイクアウト専門のランチを開始した。精力的に取り組む一方、肝心のサーフィンは?
「仕事と海のコンディションとの兼ね合いで、タイミングが合ったときだけ行くという感じ。納得できる仕事をやりながらなのでストレスはありません」
まずは加工食品の開発や販路拡大に努め、事業経営の荒波を乗り切ることに全力を注ぐ。
河合さんの海の楽しみ
サーフィンや散策に理想的
仕事の合間に波の様子を見ながらサーフィンへ出かける河合さんだが、それ以外にも海の恩恵を感じることは多いそう。
「海岸へ気軽に出られるので気分転換に行くことも。美しい海を眺めているとよいアイデアが浮かびますから。特に室戸岬の突端まで行くと太古からの壮大な地形が見られ、小さなことで悩んでいるのがアホらしくなります(笑)」。
文・写真/笹木博幸
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