掲載:2022年9月号
現在は地域おこし協力隊として野菜の栽培技術を学び、終了後は新規就農を目指す岡田さん。これまでは集合住宅の2階にある自宅を作業場代わりにしていたが、野菜を運ぶのに苦労していた。そんなときに出合った、理想的ともいえる空き家バンク物件とは?
野菜の袋詰め作業も玄関先でできるように
南信州のほぼ南端に位置する阿南町。まちの南北を貫く国道151号は「祭り街道」と呼ばれ、国重要無形民俗文化財の「和合(わごう)の念仏踊り」をはじめとした11の民俗芸能が息づいている。農林業が盛んで、高低差のある地形を利用した田んぼで育つ米や高原野菜、伝統野菜の産地としても知られている。
飯田市と豊橋市を結ぶ国道から逸(そ)れ、いくつもの段々畑と森を過ぎたところに小さな集落があった。そこから少し外れたところ、木立に隠れるように立つ平屋が、地域おこし協力隊の岡田さん夫妻が暮らす家だ。
岡田さんは名古屋市出身。就職活動をしていたときに日本の農業技術の高さや野菜の品質のよさを知り、同時に高齢化で農業が衰退していく現状に心を痛めていた。一般企業に就職したが、「農業を次の世代につなぐために行動したい」という気持ちが強くなり退職を決意。阿南町の地域おこし協力隊となった。
「僕は今25歳。もし失敗しても、取り返しがつく年齢です。だったら思い切って挑戦してみようと思い、農業分野の協力隊になりました」(岡田さん)
結婚した奥さんと最初は町営住宅に入居。近所の農家さんから圃場(ほじょう)を借り、キュウリ栽培の指導を受けた。
当初、岡田さんはキュウリの袋詰めを自宅アパートで行っていた。しかし、1日2回の収穫のたびに大量のキュウリをエレベーターなしで2階まで運ぶのはきつかった。できるなら一軒家に引っ越したいと、空き家バンク物件をチェックするように。そんなときに出合ったのが、現在の家だった。
「外からだと狭く見えますが、中に入ると広々としていて、内装も木のぬくもりにあふれていました。決めるまでに4回内覧し、そのうち1回は売主のご家族が来て説明してくれました」
売主自ら、物件のいいところと悪いところを詳しく説明してくれたおかげで、安心して決めることができたという岡田さん。奥さんは、これから暮らす家が平屋であるということがうれしかったという。
「実家は2階建てだったのですが、2階にいると1階が遠く感じられるので、ずっと平屋に憧れていました。この家は、キッチンを中心に回廊のように一周できる動線で、どこにいても家族の気配を感じられるところがとても好きです。キュウリの袋詰め作業も、広い玄関でできます(笑)」
これから少しずつ手を入れて、庭などを使いやすくしたいと話す岡田さん夫妻。
「いい家に巡り合えたので、これからも安心して、ここ阿南町で農業を頑張っていけると思います」
岡田さんに聞く!物件探しQ&A
Q. 毎日、家事をするという視点から、平屋のメリットはありましたでしょうか?
A. この家は、室内に段差がないバリアフリーになっているので、掃除をするのが楽です。バリアフリーでなくても、コンパクトな平屋なら階段掃除などがない分、掃除は楽かもしれません。引っ越しも楽でした。
Q. 平屋は「小さな家」という印象ですが、荷物が多い人には向きませんか?
A. この家は広い敷地に建てられており、延床面積は広め。そのうえ、収納も充実してあり過ぎるくらい。部屋数が多い平屋なら、1室を収納部屋にするのもアリですね。
文/はっさく堂 写真/村松弘敏
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