遠野市で見学したのは、母屋の中に旧畜舎が連続した100坪超の大きな古民家だった。文化財的な価値を有したこの建物が残っているのは、近年まで人が住んでいたから。民話のふるさとにふさわしい貴重な物件だ。
掲載:2022年10月号
2022年8月上旬の情報です。
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民宿やレストランの開業も、水の確保が課題
「この家は、3年前に叔母が亡くなるまで、1人で住んでいた家です。昔は叔父やいとこもいて、にぎやかに暮らしていたんですけどね。この地方では南部曲がり屋が有名ですけど、ほとんど現存していない。この家が奇跡的に残ったのは、近年まで人が住んでいたからなんですよ」と建物を管理している菊池耕次さん。
曲がり屋ではないが、この古民家も西側に約26畳の畜舎がある。トラクターのない時代はウマを飼い、戦後はウシの畜産振興に努めたという。2階建て132坪の母屋は圧倒されるほどの巨大さで、茅葺きの上にガルバリウム鋼板が施工されている。100年を超える建物にしては内部の状態も良好で、黒光りした大黒柱、板戸、欄間(らんま)などの造りも立派。古い建物が好きな人には、たまらない建造物だろう。
「冬が寒いので一部天井を張ったり、戸が多くなっていますが、すべてを取り外すと吹き抜けの大ホールになりますよ。なるべく昔の住まいに近づける改造が望ましいと思います」とふるさと情報館みちのく岩手事務所所長の佐々木泰文さんは話す。
裏手に国道が通る民家だが、隣の家とは600mも離れている。独立性は高いので、柵を設けてウマなどの動物を飼っても面白い。土地は約6反あるので、自給自足に近い生活も可能だ。
これだけ大きく立派な建物なので、農家民宿や農家レストランという利用法もありそう。その場合のネックは水の確保だ。昔は沢水が豊富に流れていたのだが、裏に新しい国道ができて水量が減ってしまったのだとか。遠い隣家まで公営水道は来ているが、ここまで延長工事をするのは費用負担が大変だろう。水の問題さえ解決すれば、使用用途は大きく広がる。
文化的価値の高い建物だけに、しっかりと利用計画を立てられる人に活用してもらいたい。
【物件データ】
岩手県遠野市
1000万円
土地:1791坪・5921㎡
延床:132坪・437㎡
明治期の建築。国道沿いで、土地も家も広い
●9DK●宅地、ため池、畑、原野、雑種地●緩傾斜地●都市計画区域外●約110年●簡易水洗●釜石線鱒沢駅より約5km■記録上は大正元年建築だが、それ以前に建てられたと推定される古民家。茅葺き屋根の上にガルバリウム鋼板が施工されており、母屋の状態は良好。大黒柱は尺柱。2棟の小屋は傷んでいる。総合病院や温泉へは車で約20分。不便な田舎ではない。
●問い合わせ先:ふるさと情報館 ☎︎03-3351-5601・媒介
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【補修が必要なところ】
母屋の状態は全体的に良好だが、天井に新建材を張った部屋が2間あり、昔の姿に戻す施工をしたほうが風情が出る。壁や襖、障子、畳の一部も傷んでいるところはある。やり方次第だが、100万円以上の補修費はかかるだろう。大量の水を確保する場合は大規模な工事が必要になる可能性もあるので、専門家に相談したい。
【周辺環境】
文/山本一典 写真/鈴木加寿彦
遠野市移住支援情報
リフォームや家財道具整理など、さまざまな移住支援制度あり!
「遠野市移住支援金」により、東京圏から移住し、要件を満たした場合は単身60万円、世帯100万円を支給(県の移住支援と同じ事業)。空き家バンクに掲載されている物件には、リフォーム助成(上限40万円)や家財道具整理(上限10万円)の補助を行っている。また、39歳以下の人が空き家バンク物件を購入した場合、30万円の奨励金を交付している。
問い合わせ:遠野市産業部観光交流課 ☎︎0198-62-2111
https://dekurasu-tono.jp
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