掲載:2022年11月号
海の近くで暮らしたいと考えていた舘恭志(たちやすし)さん・池倫子(いけともこ)さん夫妻。2年かけて居住地を探し、巡り合ったのが佐渡島の限界集落の古民家だった。時間をかけて地域の人たちと知り合いになり、佐渡の食材を取り入れたレストラン「メレパレカイコ」をオープン。良質な時間とヘルシーな食事が人気を集めている。
オーシャンビューの物件と集落の人にほれ込んで移住
新潟県沖に浮かぶ日本海側最大の離島・佐渡島。海岸線に点在する34もの良港からは魚、貝、海藻など豊富な海の幸が水揚げされ、佐渡沖を流れる対馬海流が陸域の農業に適した気候をもたらす。まさに天然の食の宝庫といえる島である。
今年4月に島の限界集落である虫崎(むしざき)地区に移住し、6月に「メレパレカイコ」を開業した舘恭志さん(59歳)と池倫子さん(47歳)も、最初からこの地域の食の豊かさに感激していた。
「まずはこのオーシャンビューに心を鷲摑(わしづか)みにされて、地域の人が振る舞ってくれた行者ニンニクやカワハギの生肝、ホッケの刺身などに胃袋も鷲摑みにされました(笑)」(恭志さん)
それまで新潟市在住だった恭志さんと倫子さんは、「海のそばで暮らしたい」と移住先を探し始めた。適度に広く、海がきれいで、総合病院などのインフラが整った佐渡市に魅せられ、2年かけて現在の物件と出合った。
「人口21人で移住者がとてもほしいのに、虫崎の人は『もっと地域を知って、じっくり考えてから決めて』と言ってくれました。その一言で、虫崎がさらに好きになっちゃって。その後1年かけて通い、たくさんの人と接して、『もうここしかない』と決めました」(恭志さん)
倫子さんはフリーのウエディングプランナー。移住後も、島ならではのウエディングをプロデュースしたいと考えていた。
「でも、ウエディングは常にあるわけじゃないから、ほかのこともしようと思っていました。それで、野草や薬膳が好きだったので、飲食店を」(倫子さん)
地元の食材をよく知る人を料理人として迎え、2人はオペレーションとホールを担当。漁師兼米農家の川上良人(かわかみよしと)さんが持ってくる魚介類や棚田米、近くで民宿を営む兵庫八重子(ひょうごやえこ)さんがつくる無農薬野菜、春になると集落の皆で採りに行く山菜など、佐渡の食材を盛り込んだ薬膳プレートが評判となり、遠くから訪れる人も増えてきた。
「現在考えているのは、地域一帯をホテルと見立てる『アルベルゴ・ディフーゾ(分散型ホテル)』という取り組みを虫崎で実現したいということ。みんなでお客さんを受け入れて、地域が水平的に発展する仕組みをつくりたいんです」(恭志さん)
店のオープニングイベントも、集落の一大イベントという規模で行われたという。
「そういう虫崎だからこそ、地元資源を活用して、みんなで発展していけたらいいなと思っています」(倫子さん)
舘さんオススメ!ご当地グルメスポット
佐渡の味覚が揃う直売所
地元の農家が育てた米や野菜、キノコ、果物、花卉などが豊富に揃う「新鮮空間よらんか舎(や)」。時期によっては、八幡いもなど佐渡島特産の農作物が店頭に並ぶこともある。また、お土産にぴったりな瓶詰めやお茶、お菓子なども購入できる。併設するAコープで佐渡牛や近海の魚介類も買えるので、バーベキューの買い出しにもぴったり。
文/はっさく堂 写真/伊平裕哉
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