祖父や母が暮らす武雄市に、孫ターンした馬場さん。祖父の山にキャンプ場をつくりたいと思っていたが、地域の御用聞き「まごのてサービス」という職と思える仕事に出合う。自転車で脱東京した馬場潤希さんの夢を聞いた。
掲載:2023年3月号
シニアのお手伝いがしたい! 御用聞きという仕事を継業
周囲を山に囲まれ、中心地には武雄温泉を有する武雄市。武雄北方ICのすぐ近くにある祖父の家へ2018年に孫ターンし、地域の御用聞き「まごのてサービス」を運営しているのが、馬場潤希(ばばじゅんき)さん(28歳)だ。子どものころからお盆やお正月には祖父の家に遊びに来ていた馬場さんにとって武雄市は第二のふるさとのようなもの。
「祖父と母がいる武雄市で暮らしたいと思ったのが、脱東京の一番の理由。あとアウトドアが好きだったので、祖父が持っている山にキャンプ場がつくれればいいなという憧れもありました。“じゃあ武雄市へ”と、自転車で向かいました(笑)」
馬場さんは、なんと東京から武雄市まで、自転車で20日間かけて移動。途中の寝泊まりはキャンプ場や野宿。この旅の間、さまざまな出来事をフェイスブックにアップしていたところ、母や、その周りの人たちがシェア。馬場さんの武雄市到着を祝って「お疲れ様会」を開いてくれた。その場で出合ったのが「まごのてサービス」の前身となる事業を営んでいた人だった。
「新聞販売店の方で、サービスの一環としてお年寄りの方がたの便利屋的な仕事を受けていたんです。地域の人たちと触れ合えるし、お年寄りの皆さんのお手伝いができると思い、仕事を始めました」
もともと東京では海上自衛隊の航空電子整備員として働いていた馬場さんは、工具や電子機器には強い。知識のなかった掃除などは、研修を受けて学んだ。2年前に新聞販売店が閉鎖することになり、馬場さんは、担当していた御用聞き業務を受け継ぎ、21年1月に「まごのてサービス」を創業した。
「まごのてサービス」の業務は主に3つ。重いものを運んだり電球の取り換えなどの「ちょっとしたお手伝い」、庭木の剪定や草刈りなどの「庭の作業」、エアコンクリーニングやレンジ掃除といった技術が必要な「お掃除業」だ。
「作業前や後にお茶を飲んでおしゃべりしたり、帰るときには野菜をいただいたり。ときには、お昼ご飯や夕食をごちそうになることも。皆さん、とても親切にしてくださいます」
馬場さんは、主な顧客であるシニアが「まごのてサービス」に仕事を頼んだ際に安心できるようにと、介護福祉士実務者研修を受講。こうした努力と馬場さんの素直な人柄から、お客さんは増え、現在の登録顧客は400人ほどだという。
一方、憧れたキャンプ場づくりは、山が祖父だけの所有でないことや急な斜面だったことなどで実現は難しいそうだ。
「でもキャンプ場より、今の仕事が楽しくて仕方ありません。天職じゃないかと思っています。今後は、年配の方と若い人など、さまざまな世代が交流できる場をつくっていきたい。年配の方は知識や技術を、若い人は労力を、それぞれ提供し合えれば面白いことがいろいろとできる気がするんです」
残念ながら祖父は亡くなってしまったが、「一緒に暮らせた数年がとても貴重でした」と話す。東京から自転車で脱出し、武雄市で天職に出合った馬場さん。夢はさらに膨らむ。
馬場さんにお聞きしました!
Q脱東京してよかったこと
なにより、天職とも思える仕事に出合えたことですね。東京でも便利屋といった仕事はできるでしょうが、どうしてもビジネスライクになりがちだと思います。ここでは、人と人とのつながりが強く、僕もお客さんたちに寄り添うことができます。
Q東京時代と比べて大きく変わったこと
武雄市での暮らしのほうが、時間の流れがゆっくりと感じられることでしょうか。仕事が忙しいのは同じですが、自然が多くて心にゆとりが生まれます。あとは、野菜も肉も魚介も安くておいしいのが大きな違いですね。
武雄市移住支援情報
福岡、長崎へのアクセスも、公共施設も充実して暮らしやすい
歴史ある温泉と陶芸、豊かな自然、文化、歴史があり、武雄市図書館、こども図書館、ICT教育、子育て環境も充実している武雄市。2022年9月23日には西九州新幹線の開業で利便性が格段に向上し、ますます住みやすくなった。「西九州のハブ都市」として、移住者には、定住特区補助金、さが暮らしスタート支援金などの補助金制度を用意。
問い合わせ:武雄市ハブ都市・新幹線課 ☎0954-23-9160
佐賀県武雄市移住支援サイト「たけおグッドライフ」 (takeo.lg.jp)
文/水野昌美 写真/樋渡新一 写真提供/馬場潤希さん
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