田舎暮らしの本 Web

  • 田舎暮らしの本 公式Facebookはこちら
  • 田舎暮らしの本 メールマガジン 登録はこちらから
  • 田舎暮らしの本 公式Instagramはこちら
  • 田舎暮らしの本 公式X(Twitter)はこちら

田舎暮らしの本 1月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 1月号

12月3日(火)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

里山+ママ=さとやママ。ママの得意分野を活かして移住支援【静岡県藤枝市】

「さとやママ」とは「里山に暮らすママ」から生まれたグループ名。メンバーの多くは藤枝市の中山間地域にIターン、Uターンした母親で自治体と連携し、中山間地域への移住希望者の相談や地域案内なども行う。母親目線で語る彼女たちの生きた情報は、移住希望者の一助になっている。

掲載:2023年4月号

静岡県藤枝市 ふじえだし
静岡県のほぼ中央に位置する、温暖な気候と豊かな自然に恵まれたまち。山間部には茶畑が広がり、お茶の生産は市の地場産業である。JR東海道本線、東名高速道路、新東名高速道路が東西に走り、藤枝岡部ICから東京ICへ約2時間、藤枝駅から新幹線静岡駅経由で東京駅へ約1時間30分。

 

継続的な移住支援のためママたちが無理せず活動

 都市化が進む藤枝駅前と、田園風景が広がる中山間地域。2つの要素を併せ持つ藤枝市は、いわゆる〝トカイナカ〞。都心にもアクセスしやすいことから、子育て世代に人気の移住地であるが、市には1つ懸念事項があった。移住支援を行うのがおもに市役所職員であることから、相談中に異動してしまうなど、継続的な支援がしづらい状況だったのだ。

 そんななか、子育てママたちが市の委託を受け、移住支援活動をすることになった。「里山のママ」たちで結成したから団体名は「さとやママ」。発足して4年目を迎えた現在のメンバー数は12人。活動は移住相談や地域の案内などが中心だ。今年度は移住体験ツアーも実施し、参加者から好評を博した。モットーは、「自分のできる範囲で活動すること」。年に1回のミーティングと、不定期に開催するイベントでは、全員が集まるようにしているが、そのほかの活動への参加は自由。それぞれ仕事や子育て、介護などで忙しいからこそ、自分たちの暮らしは大切に。無理をせず、自分の得意分野を活かして活動しているという。

さとやママ
設立して4年目を迎える中山間地域移住支援団体。メンバーは中山間地域へ移住した母親が中心で、名称は、数年前に制作された子育て世代向けの移住パンフレットのタイトルが由来。SNSで里山暮らしの様子や移住定住情報を発信しているほか、移住相談、移住体験ツアー、空き家の片付けなどの支援活動を行っている。
Facebook(https://www.facebook.com/satoyamama/

さとやママのメンバー(左2人)と、藤枝市広域連携課、中山間地域活性化推進課(右3人)とは藤の瀬会館での月1回の定例会議で移住支援活動の情報を共有している。

 

増加する就農希望者に「おむすび農園」が対応

 そんな活動に賛同し、2022年度から新たにメンバーに加わったのが宮崎美穂さん(41歳)。農薬や化学肥料を使わない有機栽培にこだわっている「おむすび農園」を営んでいることから、農業に携わりたい移住希望者の相談に対応している。メンバーになる以前から、市が開催する移住体験ツアーなどに協力していたが、就農希望者の相談が増えていることから、本格的に活動に参加することになった。

 「私でよかったら……と参加し、移住希望者とお話ししたり、イベントに出店をしたり、自分の得意分野で活動しています。誰も知り合いがいない状態で藤枝に移住したため、最初は本当に大変だったのですが、活動を通して地域とつながることができて、ありがたいと思っています」

 最近はレンコンの栽培に力を入れており、ゆくゆくはレンコン掘り体験を開催し、活動にも役立てていく考えだ。

さとやママメンバー➀  宮崎美穂さん
夫とは栃木県の農家育成塾で出会い結婚。5歳と4歳の男の子を育てながら有機農業を営み、社長も務める。屋号は人や野菜、自然とむすばれることを願い、「おむすび農園」と名づけた。販売情報などはInstagram(@omusubi_nouen)で発信。

自宅付近の畑でニンジンの収穫をする夫妻。

元水田だった畑の特性を生かし、最近はレンコン栽培に力を入れている。今後はレンコン収穫体験なども開催していく。

宮崎さん夫妻が栽培した野菜はマルシェのほか、藤枝市のオーガニック野菜を販売する「Lalala PLaNET plus」で購入できる。取材時はレンコンが販売されていた。店舗情報はFacebook(https://www.facebook.com/lalalaplanetplus/)で発信中。

 

 「さとやママ」はメンバー全員が県外出身というわけではない。新村杏奈さん(31歳)は藤枝市生まれ。夫と結婚してしばらくは、藤枝駅に近い地域でアパート暮らしをしていた。長男が生まれたタイミングで「田舎の一軒家に暮らしたい」と、中山間地域で空き家を見つけ、引っ越し。現在は杏奈さんの実家に近い場所に家を新築し、希望を実現させている。次男がまだ8カ月のため、活動にはできる範囲で参加しているが、空き家の片付けなどに協力している。

さとやママメンバー② 新村杏奈さん(右)
夫は焼津市出身。杏奈さんの地元に近い里山にUターンし、5歳と8カ月の男の子、3歳の女の子を育てている。
さとやママメンバー③ 小林麻佐子さん(左)
元藤枝市役所職員、中山間地域活性化の仕事に9年かかわる。生まれも育ちも旧岡部町。子どもは3人で、それぞれ大学や大学院を卒業し、社会に出ている。

 

移住者、ママだけでなく地域と連携した活動を

 小林麻佐子さん(51歳)も生まれ育った藤枝市で暮らす。かつては藤枝市役所職員で、夫と3人の子どもを育てながら、仕事をこなしてきた。そのうち9年間は中山間地域の移住支援を担当。多くの移住者に出会った。

 「移住希望者が大きな決断をする瞬間に立ち合ううち、いつの間にか移住支援が私のライフワークになっていました」

 部署を異動になった後、そのことに改めて気づかされ、小林さんは2年前に早期退職を決断。子育てが一段落したタイミングだったことも後押しし、「さとやママ」の活動に参加することになった。

 「私には移住の経験はありませんが、これまでの経験や人とのつながりを生かし、人×人、人×地域、人×行政などをつなげるマッチングコーディネーター的な役割を担えたらと思っています」

 その言葉通り、小林さんは移住希望者と地域住民との橋渡しに一役買っている。

「白ふじの里」では手づくりパンや地元の新鮮野菜などを販売。店の外には、地元企業が手がけた動物の鉄筋アートや遊具が、施設内にはキッズスペースもある。藤枝市内には子育て世帯に優しい施設が多いのも、子育て世代に人気の理由だ。

 

 自然豊かな藤枝市は、作家の移住希望者も多い。そんな人たちの相談には、木工作家の加藤育子さん(51歳)が対応している。加藤さんは「さとやママ」発足以前から移住希望者を自宅に宿泊させ、自身の移住経験やまち案内を担う「民泊」活動などに協力してきた。実際、加藤さんの人柄にほれ込み、藤枝市に移住してきた人も多い。ただ、最近は四国の実家から藤枝市に両親を呼び寄せ、近距離介護をすることになったため、できる範囲で活動しているという。

さとやママメンバー④ 加藤育子さん
徳島県阿南市出身。木こりの夫と10歳の息子と暮らす。夫が特殊伐採した木を生かし、木の器やカトラリーを制作している。

役目を終えた木に命を吹き込み、日常使いできる器を制作する。手前の器はカシノキ、奥の器はキンモクセイ、カトラリーはサクラを活用。作品は、藤枝市内であれば蓮華寺池公園の「とんがりぼう」で購入できるほか、東京で展覧会を開くことも。

 

 来期から「さとやママ」の会長を務めることになったのは、谷口ジョイさん(47歳)。夫の転職を機に、東京から藤枝市にIターンしてきたのは2008年。当初は市内に知り合いなどはおらず、藤枝駅近くで暮らしていた。5年ほど経過して生活に慣れてきたころ、自然豊かな中山間地域に暮らしたいと、藤枝市役所に移住相談に出かけた。そこで出会ったのが、当時職員だった小林麻佐子さんだ。移住相談や空き家案内などを経て、念願の中山間地域への移住を果たしたのは2014年。小林さんは、リフォームをした空き家のオープンハウスを提案。ジョイさん一家の写真をパネルにして飾り、家と家族をお披露目した。

 「地元の方が100人ほど来てごあいさつができたおかげで、土地になじむことができました。麻佐子さんや地元の方は、私の知らないところでもサポートしてくださっているという思いがあり、今度は自分が恩返しする番だと、活動に参加しています」

 外国人の移住希望者や、子育て世代の相談などに対応しているジョイさんは、今後の展望をこう語ってくれた。

 「近年、移住希望者のニーズは多様化しています。それに対応していくためにはママだけでなく、地元の方たちの力も必要だと感じています。来年度はそこに注力していく考えです。また、さとやママは移住支援だけでなく、移住後のフォローもさらに大切に活動していきたいですね」

さとやママメンバー⑤ 谷口ジョイさん
都会での子育てに疑問を抱き、家族で藤枝市へ移住。その後、市街地から里山へ移住。夫婦とも大学で教鞭をとりながら、23歳と14歳の息子、13歳の娘を育てる。

小林さんがジョイさん宅を訪れ、打ち合わせをすることもある。

移住体験ツアーでは、地元農家が協力して収穫体験を行うことも。マルシェなども開催してきた。

空き家の案内や片付けなども担い、その際に出てきた家財道具はシングルマザーなどを対象に、希望者に譲っている。

 

【藤枝市】移住支援情報
新婚世帯、子育て世帯の住宅補助が多彩

 中山間地域の空き家・空き地バンク制度をはじめ、空き家活用・流通促進事業では、取得にかかる補助金額は上限30万円だが、市外の一般世帯は50万円、市外の子育てファミリーは70万円を上限とするなど、子育て世帯に優しい助成制度を用意。新築住宅、新築マンションの取得費や引っ越し料を助成する新婚生活サポート補助金(最大80万円)といった住宅支援もある。

問い合わせ/藤枝市広域連携課 ☎054-643-3229

藤枝市の子育て支援
□子育てファミリー移住定住促進事業( 新築住宅取得事業・移転事業)
□れんげじスマイルホール“キッズパーク”
□藤枝おやこ館

まちの雰囲気、リノベーション物件、テレワーク施設などを見学できる「藤枝市移住体験バスツアー」の様子。

子どものからだづくり応援施設「れんげじスマイルホール“キッズパーク”」には、子どもの好奇心をかき立てる多彩な遊具を配置し、親子で遊びながら発達段階に応じた身体能力を育める。プレイゾーンは入場無料。

WEB「藤枝スタイル」でも移住情報を発信!
連携・定住推進係 齋藤哲平(さいとうてっぺい)さん

文/横澤寛子 写真/鈴木千佳 写真提供/藤枝市、さとやママ 

 

この記事のタグ

田舎暮らしの記事をシェアする

田舎暮らしの関連記事

★最新【東海】2023年版12エリア別「住みたい田舎ベストランキング」【愛知・岐阜・三重・静岡】

「わさび栽培発祥の地」にある500万円の2階建ては畑付き!ユネスコ無形文化遺産もある!【静岡県静岡市】

「夏を楽しむ物件」をピックアップ【静岡県~沖縄県】

【大チャンス!】移住者ファミリー向けの「すごい賃貸住宅」が入居者募集!【島根県美郷町】で実現する、豊かで最先端な暮らし

家族6人でバリ島から移住! インドネシア風特産品を夫婦で開発【島根県美郷町】

【リンゴの名産地】農地付き68万円の古民家は、二拠点居住にも最適!【長野県飯綱町】

温暖な気候、豊かな自然の恵み、アクセス良好! 瀬戸内エリアの人気のまち「AKB(赤穂市・上郡町・備前市)」で暮らそう

移住者数が3年で3倍に! ずっと住み続けたいまち【愛媛県今治市】本誌ランキング2年連続 全4部門1位!

【築100年古民家】絵本のような絶景に包まれた秘境の美しい伝統住宅!200万円の9LDKはほぼ改修不要!? 宿泊施設や飲食店にも活用可能!【福島県金山町】