田舎での困りごとを、田舎暮らしのベテランライターが回答。今回は、傾斜地を平坦地にする話。
勾配が少しきつい気はしましたが、物件データに「緩傾斜地」とあったので、約600坪の雑木林を購入。約100坪の平坦地が欲しいと地元の土木業者に工事を頼んだら50万円かかりました。工事後に現地を見たら、意外に狭く感じます。畑や庭もやりたいので、「少しくらいお金がかかってもいいから平地を倍にしてほしい」と口頭で伝えたら、工事費は200万円。請求が4倍になる理由を教えてください。
埼玉県在住 田村さん●45歳
平坦地の確保は、切土・盛土が必要
「緩傾斜地」にどのくらいの勾配という明確な定義はないが、常識的には切土(きりど)・盛土(もりど)で平坦地を確保できるくらいの勾配と考えていい(中・急傾斜地では盛土は難しい)。切土・盛土とは、傾斜地を平坦地に変える土木の基本的な工法だ。
工事はバックホー(油圧ショベル)で建築場所の山を削り、発生した土を谷側に盛る。さらに、重機で踏み固めていく。転圧が不充分だと崩れやすいので、ブルドーザーかローラーで固めたほうがいい。ただ、コストをかけ過ぎると安い傾斜地を買った意味がなくなるので、判断が難しいところだ。
平坦地を増やすと工事費が高くなる理由
田村さんは当初、約I00坪の平坦地をつくる工事で50万円を請求され、追加工事で面積を倍にしてほしいと頼んだら4倍の請求書が回ってきた。土木工事のコストは、重機の操作代などで計算する方法、動かした土の量で計算する方法の2通りある。一般的には土量が増えるほど価格が高くなる、と考えておけばいい。
平地面積を倍にすれば工事費も倍、と単純に考える都会の人が多い。しかし、その考えは誤りだ。上の図を見てほしい。平坦地の面積を広げるには、地盤を削って低くするか、奥へ掘り進むしかない。
仮に傾斜地の勾配が一律だとして、平地を2倍にすると土量は①から②に増えて、4倍くらいになってしまう。実際のところ自然の山は、奥へ進むほど勾配がきつくなりやすい。その場合は、削る土量が飛躍的に増える。つまり、田村さんはだまされたのではなく、「少しくらいお金がかかってもいいから平坦地を倍にして」という言葉を安易に使ってしまったことが、失敗の原因なのだ。
文・写真/山本一典 イラスト/関上絵美
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この記事を書いた人
山本一典
田舎暮らしライター/1959年、北海道北見市生まれ。神奈川大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、85年からフリーライター。『毎日グラフ』『月刊ミリオン』で連載を執筆。87年の『田舎暮らしの本』創刊から取材スタッフとして活動。2001年に一家で福島県田村市都路町に移住。著書に『田舎不動産の見方・買い方』(宝島社)、『失敗しない田舎暮らし入門』『夫婦いっしょに田舎暮らしを実現する本』『お金がなくても田舎暮らしを成功させる100カ条』『福島で生きる!』(いずれも洋泉社)など。
Website:https://miyakozi81.blog.fc2.com/
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