掲載:2023年5月号
だんだんと寒さが和らいで、花々の蕾がほころび、木々の芽吹きが始まる春。耳を澄ませば、鳥たちのさえずりが聞こえてくる。レジャーとして山や森はもちろん、散歩の途中や仕事の合間に野鳥の姿を観察して楽しめるバードウオッチングの魅力を紹介する。
今回お話を伺ったのは…
榊原美奈子(さかきばらみなこ)さん
「トリ案内人」、日本野鳥の会長野支部会員。長野市出身で、野鳥観察歴6年目。「晴鳥雨苔」と称し、鳥とコケに親しむ。長野市で野鳥の案内人をしながら、小冊子『野鳥のススメ』を執筆・配布している。
Instagram:@tawara.ru
普段から意識して
身近な鳥に目を向けよう
春は野鳥にとって恋の季節。立ち止まって耳を澄ませると、高らかにさえずり、ときにはけたたましく縄張りを主張する鳥たちの声が聞こえてくる。「日常生活を送るなかで、『耳を澄ます』ってあまりしないですよね。普段は意識していなくても、一度鳥の声や存在に気がつくと、毎日の感覚がガラリと変わります。私がそうでした」
そう話すのは、長野市で鳥見会(とりみかい)の案内人をしている榊原美奈子さん。
榊原さんの鳥との出会いは6年前。自宅のソファに寝転んで外を眺めていたところ、庭木に少し大きめな野鳥が止まったのだ。それまではスズメ、カラス、ハトくらいしか知らなかったが、何の鳥だろうと思って調べてみたところ、どうやらヒヨドリのようだった。
「それがきっかけで、散歩中に鳥が気になるようになったんです。ある日、子どものころに、何の鳥か知らないまま工作のモチーフにしていたジョウビタキを目にし、『こんなに身近にいるの!?』とびっくり。それで鳥の世界に引きずり込まれました」
現在は、日本野鳥の会長野支部に所属しながら、自分でも鳥見会を企画したり、手づくり冊子『野鳥のススメ』を制作するなどして、たくさんの人に野鳥の魅力を知ってもらうよう努めている。
3月初旬の早朝、榊原さんの案内で、長野市の城山公園(じょうやまこうえん)周辺を歩いた。木立の間から野鳥のさえずりが聞こえ、その方向に目を凝らす。双眼鏡をのぞくと、歩道沿いの梢(こずえ)をせわしなく行き来しているヤマガラやシジュウカラの姿が見えた。
「最初は肉眼で観察して、興味が湧いてきたら双眼鏡を使うのがオススメです。スズメだと思っていたのがアトリだったりして、『身近にこんなにたくさんの鳥がいるんだ!』と、めちゃくちゃ世界が広がるんです」
と、榊原さん。
鳥を探すときに感覚を研ぎ澄ますことで、自然と同化するような気持ちになれるのも野鳥観察の魅力だ。
「空気が揺らぐのを感じながら自然の音を聞くのは、とても心地よい時間。森であっても市街地であっても、それは変わらないと思います」
散歩の途中や仕事の合間に、しばし立ち止まって耳を澄ませてみよう。鳥の声や風の感覚に意識を向ければ、日常がさらに愛おしいものになるはずだ。
私も体験しました!
丸山 愛(まるやま あい)さん
キャンプはよく行きますが、野鳥観察は初めて。普段は意識しなかった野鳥を、さえずりを頼りに探すのはとても楽しかったです。イカルの鳴き声が「コーヒー1杯プリーズ」に聞こえるなど、鳥のことを教えてくれる人と一緒に行けたので、100倍楽しめたと思います。今まで、キャンプで野鳥観察しなかったのがもったいなかったです!
野鳥を探しに出かけよう
まずは声を聞き肉眼で姿を探そう
双眼鏡や図鑑がなくても、まずは鳥の鳴き声を聞いたり、姿を探したりすることから始めてみよう。野鳥のことをもっと知りたくなったら、双眼鏡と野鳥図鑑を持ってフィールドへ。市民講座や公園などで野鳥観察会を開催しているところも多いので、ぜひ参加してみよう。榊原さんが所属する日本野鳥の会長野支部でも、月に数回探鳥会が行われている。
https://sites.google.com/view/naganotori/
文・写真/はっさく堂 写真提供/藤田伸二さん
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