田舎でのお悩みを、田舎暮らしのベテランライターが回答。今回は、沢水を利用している人の困りごとにお答えします。
約2000坪の広い山林を手に入れました。決め手は敷地内に流れるきれいな沢。上流に民家がないので、これを飲用水として使うことにしました。とりあえず寝泊まりできる小屋を建て、150mほど上流の沢にパイプを差し込んで水を利用していました。ところが、雨が降るとすぐ水が濁ります。また、冬になるとパイプの内部が凍結します。
北海道在住 久米さん●30歳
流れている沢水を取水してもダメ
移住者の敷地でたまに見かける沢水利用。上流に民家や農地がなければ沢が水源になり得るし、取水装置のコストもさほどかからない。
しかし、実際は久米さんのように水のトラブルで悩まされる人が多い。台風や大雨のあとに沢水が濁ったり、木の葉や砂が混ざったりしやすいのだ。最大の原因は、取水場所の間違い。沢の上流を奥までたどっていくと、水がじわじわと染み出るV字形の小さな谷間に行き着く。飲むための水は、流れている沢ではなく、そこから採取すべきなのだ。
水圧をかけると凍結は防げる!
取水装置はコンクリート製の井戸枠が丈夫だが、山奥まで運ぶのが大変。簡単なのは、下の図のように逆さにして切れ込みを入れたバケツと小砂利、パイプを使う方法だ。沢水を小砂利で濾過し、バケツ下のパイプから流出させるといい。
沢水の取水装置は、メンテナンスが欠かせない。水の出が悪くなったり、濁りが発生したときは、図のように点検と清掃が必要だ(中問タンクの設置も効果的)。近隣で森林が伐採されると、急に沢水が細くなることがある。水が足りないときは別の支流に取水装置を迫加し、それを合流させてもかまわない。
久米さんの敷地では、冬にパイプの水も凍結した。都会の人は使わないときは、水を止める習慣が身についている。これが失敗の原因だ。
農家の庭先では、水を出しっ放しにしている光景をよく見かける。冬でも凍らないのは、常に水が流れているからで、これを見習うといい。パイプの口径も、水源地では30㎜、次が25㎜、その次が20㎜と徐々に細いものにすれば、圧がかかって凍結防止に効果的だ。
文・写真/山本一典 イラスト/関上絵美
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この記事を書いた人
山本一典
田舎暮らしライター/1959年、北海道北見市生まれ。神奈川大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、85年からフリーライター。『毎日グラフ』『月刊ミリオン』で連載を執筆。87年の『田舎暮らしの本』創刊から取材スタッフとして活動。2001年に一家で福島県田村市都路町に移住。著書に『田舎不動産の見方・買い方』(宝島社)、『失敗しない田舎暮らし入門』『夫婦いっしょに田舎暮らしを実現する本』『お金がなくても田舎暮らしを成功させる100カ条』『福島で生きる!』(いずれも洋泉社)など。
Website:https://miyakozi81.blog.fc2.com/
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