田舎でのお悩みを、田舎暮らしのベテランライターが回答。今回は、大きな古民家に合併浄化槽を設置したときのトラブルです。
私たち夫婦はモノづくりが趣味で、週末利用できる大きな売家を探していました。約60坪の農家物件は、補修費込みで1200万円。予算はぎりぎりでした。水洗トイレにするには浄化槽を設置するしかないそうですが、設備屋さんを訪ねたら「この農家は大きいから7人槽の合併浄f槽が必要。価格は120万円」なのだとか。どうしてでしようか?
京都府在住 宇田さん●63歳
農村の下水処理施設は、まだ普及率が低い!
下水道や浄化槽などによる水洗化率は全国で92%だが、人口5万人未満の自治体では83%に過ぎない(令和4年度・環境省と農水省と国交省の合同調査)。どこでも簡単に下水処理ができると思っている都会の人は、この現実を知っておく必要がある。
農村は下水道の普及率が極めて低いが、一部にそれに似た施設がある。農業集落排水だ。農村集落におけるし尿と生活排水を処理する施設で、発生した汚泥を肥料にリサイクルする試みなども行われている。目標に対する整備率は平成30年度に94%まで達したが、過疎地ではまだ一部に留まっている。ほかの手を考えなければならない。
延床面積で変わる浄化槽の大きさ
田舎でいちばん現実的な下水処理は、戸別の小型合併処理浄化槽を導入する方法だ(下の図参照)。これはトイレのし尿、台所・浴室・洗面所などから出る生活排水を同時に処理する設備で、車1台分のスペースがあれば設置できる。その大きさは小さい順に、5人槽、7人槽、10人槽で、家庭用なら5人槽がほとんど。定価は5人槽で70万~100方円、7人槽で90万~130万円前後だが、価格競争が進み、施工費込みでこの数字で収まるケースも増えている。
約60坪の古民家を購入した宇田さんは、設備業者から7人槽が必要と指摘された。建築基準法に基づき、130㎡(約39坪)以上の建物は7人槽と多くの自治体が定めているからだ。2人でも、100方円以上の出費になったのはそのため。延床面積を緩和したり、人数に応じて変更できる地域もある。大きな農家を買う人は盲点になりやすいので、自治体に確認しょう。
完全2階の養蚕農家など、大きな農家の合併浄化槽は、小さな5人槽ではすまないケースもある。
文・写真/山本一典 イラスト/関上絵美
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この記事を書いた人
山本一典
田舎暮らしライター/1959年、北海道北見市生まれ。神奈川大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、85年からフリーライター。『毎日グラフ』『月刊ミリオン』で連載を執筆。87年の『田舎暮らしの本』創刊から取材スタッフとして活動。2001年に一家で福島県田村市都路町に移住。著書に『田舎不動産の見方・買い方』(宝島社)、『失敗しない田舎暮らし入門』『夫婦いっしょに田舎暮らしを実現する本』『お金がなくても田舎暮らしを成功させる100カ条』『福島で生きる!』(いずれも洋泉社)など。
Website:https://miyakozi81.blog.fc2.com/
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